ニュースイッチ

ソニーの販売最前線、今そこにある危機

現場のマインドが萎縮、シェアを取りに行く姿勢に転じる
ソニーの販売最前線、今そこにある危機

コンシューマーエレクトロニクス製品で反転攻勢をかける(ソニーストア銀座)

 「我々の主戦場である高価格帯テレビ市場でシェアが取れていない」―。2012年7月、赤字が続く欧州事業の立て直しのため、ソニーヨーロッパ社長に就任した玉川勝は、データに目を落とし愕然(がくぜん)とした。

 それから約2年。「ウェイ・オブ・ワーキング(WOW)」と呼ぶ販売改革に取り組んだ。市場の実態と乖離(かいり)した事業計画に疑問を持った玉川は、セグメントごとの細かい販売実績データを収集。これを基に事業計画の立案から店舗での商品展開、在庫まで管理した。

 成果は徐々に顕在化し、14年度に欧州事業を黒字化することに成功した。玉川は「エレクトロニクス製品で成長路線に回帰する」と力を込める。

 16年4月、ソニーは消費者向け音響・映像(AV)製品の販売・マーケティング部門を再編した。本社にあった販売・マーケティング機能をソニーマーケティング(東京都品川区)に集約。会長には玉川が就いた。同部門の戦略を一元化し、WOWをグローバルに展開して収益の拡大を狙う。

 期待を寄せるのが日本の役割だ。日本は製品サポートや、デジタルマーケティングに強みを持つ。日本を統括するソニーマーケティング社長の河野弘は「日本には転用できるノウハウがたくさんある」と話す。中近東や中南米など課題の残る地域もあるが、日本の知見を生かしつつ「ブランド力を再構築する」(河野)と意気込む。

 一方、玉川は4年前とは別の危機感を抱いている。過度に販売戦略を絞り込んだため、現場のマインドが萎縮していた。「このままではジリ貧になってしまう」。そこで高付加価値路線を維持しつつ、的を絞ってシェアを取りに行く姿勢に転じる。17年度は前年度を上回る販売計画を策定する方針だ。

 玉川は毎週のように海外の販売会社を飛び回る。「『WOW』を浸透させ、業界ナンバー・ワンのオペレーションを確立する」と、玉川流の「ワオ!」で革新を起こす。
(敬称略)
日刊工業新聞2017年1月20日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
メーカーだから当然だが、ソニーも事業部門が強い。長くソニーマーケの位置付けは曖昧だったように感じる。シェアを拡大するのは悪くはないが、変なメッセージとして伝わると在庫コントロールも難しくなる。

編集部のおすすめ