ドイツ「第4次産業革命」のキーマンが語るサイバネティック・クラスター

独アーヘン工科大教授・サビーナ・イェシュケ氏

 インダストリー4・0とは私たちが今経験している第4産業革命を指す。これは2011年にドイツ政府が提言したコンセプトだ。第4次産業革命のようなディスラプティブ(破壊的)なイノベーションをもたらすフェーズでは、さまざまな能力、視点および研究手法を束ねることが特に重要だ。

 人間、技術、組織、環境などを、もはや切り離して考えることができない。我々の重点研究分野は分散型人工知能、ロボット、輸送&モビリティーなどイノベーション・未来志向研究のすべてが束ねられている。

 NRW州のアーヘン工科大学機械工学科のサイバネティック・クラスターは「人工知能の革命」を手助けする研究を行っている。生産現場のみならず、他領域においても、単に機械に命令するのではなく、機械による「自立した意思決定」を促すという研究だ。

 さらに、自動運転など自動化技術を取り入れたスマートシティーの開発、輸送の変革、またロジスティクス4・0も研究対象とする。加えて最近では、「ヘルスケア」と「法律」も重点分野として研究している。

 クラスターの下の三つの研究所は共同ロボットチーム「Cobots」を組み、相互に協力しながら複雑な課題の解決に取り組んでいる。

 例えば、生産現場のロボットは事前に与えられた指示ではなく、相互観察やスキル評価に基づいて、行動を調整する。将来的には、人とロボットの共同作業が実現されるわけだが、その際、ロボットに目標設定をするだけで、ロボット自身がその状況に応じて行動するようになる。

 また、プロジェクト「iモーション」では、人間と機械がコミュニケーションを交わす際の「感情」について研究する。実際にロボットシリーズ「オスカー」を使い、見本市会場で人と機械のコミュニケーションメカニズムを実験している。

 マネジメント・サイバネティック研究所(IfU)ではダイムラーと共に、デジタル自動車産業における雇用シナリオを研究している。この研究では2035年に想定される労働条件、ならびにインダストリー4・0が労働要因に与える影響を分析する。この種の調査では、ビッグデータを活用した研究手法がますます導入される。

 サイバネティック・クラスターは200人以上を擁し、日々、科学的な手法が実際の応用段階で機能するか否かを評価・検証している。このため、自動車業界、ロジスティクス業界などを代表する多くの企業との協力は欠かせない。
(取材協力・NRWジャパン、木曜日に掲載)

<プロフィル>
イェシュケ教授は2009年6月に独アーヘン工科大学機械工学科のサイバネティック・クラスター(IMA/ZLW&IfU)代表に就任した。このクラスターの下で「機械工学情報マネジメント研究所」(IMA)「ラーニング/知識マネジメントセンター」(ZLW)「マネジメント・サイバネティック研究所」(IfU)の三つの研究所が共同研究を行っている。25もの専門分野から合わせて約60人の研究者が集り、200人を超すスタッフを有する。


<日刊工業新聞でドイツ発のインダストリー4・0最新情報を紹介する有識者の寄稿連載がスタート>



日刊工業新聞2017年1月19日

八子 知礼

八子 知礼
01月19日
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 一言で言うと「多様性」、これに尽きる。当初製造業から始まった取組みも他産業に展開、実ビジネスへの応用を掲げて企業との密な連携を欠かさない。ビジネスモデルのアーキテクチャや検討・実現のためのフレームワークがしっかり設計・運用されており、デザインから実運用を通じた検証、フィードバックが確立されている点が強みであろう。
 個社が頑張る"点"のソリューションや検討・実施ではなく、広範な領域での産官学連携がビジネス化に向けて協業する"面"での推進となっていることが特徴だ。日本でも産官学連携は行われつつあるが、個々の大学や地域での取り組みにとどまるか、地方版IoT推進ラボの展開によってようやく始まりつつあるところだ。今後はこれらの活動が相互連携しながら大きなフレームワークのもとに相互連携して大きな産業の変革を連鎖的に誘発することに期待したい。

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