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フラット化する自動車産業「ウチの半導体は隣の会社より消費電力が低い」

連載「モビリティーの未来」(下)
フラット化する自動車産業「ウチの半導体は隣の会社より消費電力が低い」

米クアルコムはCESで米グーグル、パナソニックなどと協力した自動運転向け技術を展示

 「ウチの半導体は隣のブースの会社より消費電力が低い」。米家電見本市「CES」ではくしくも複数の半導体メーカーから同じ言葉が聞かれた。自動車メーカーの間では自動運転の高度化で爆発的に増える情報処理量への対応が開発のネックだ。半導体メーカーはこれを商機とみて攻勢を強める。

半導体メーカーの攻勢


 米エヌビディアは独アウディ、独ZF、独ボッシュなどと提携した。エヌビディアの車載人工知能(AI)用プラットフォーム「ドライブPX2」を用いて自動運転のシステムや車両を開発する。3次元地図では独ヒアや日本のゼンリンとの協業も決めた。4日、CES会場で基調講演に登壇したエヌビディアのジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は「AIはSF映画の世界から現実になった。新たなモビリティーの未来に近づける」と述べた。

 CESの別会場ではルネサスエレクトロニクスが、初めて自動運転車のデモ走行を実施していた。同社のマイコンやSoC(システム・オン・チップ)からなる自動運転用システム「R―ドライブ」を二つ搭載している。消費電力は計約25ワットと低い。システムの一つが故障した場合、もう一方で補完するなど安全性を重視しており、担当者は「完全自動運転の実現を早めるのがゴールだ」と意気込む。

 ボッシュで自動運転開発の責任者を務めるミハエル・ファウステンバイスプレジデントは「レベル4(完全自動運転)の実現にはコンピューターの電力消費が課題」との見方を示す。20年以降に高速道路での完全自動運転を実現する考えで、現在は2500人体制で運転支援システムの開発を進めていく。今後はセンサーの感度向上や高精度3次元(3D)地図の開発などを進める。

自動車産業は水平分業へ移行の兆し


 自動運転は、クルマの中での人の過ごし方も変える。16年に約5兆円を投じて自動運転用半導体に強いオランダNXPの買収を決めた米クアルコム。CESでは米グーグルやパナソニックなどと協力して開発中の次世代車載インフォテインメント(情報・娯楽)システムを公開した。グーグルの基本ソフト(OS)を欧米フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の車に搭載。車内モニターをスマートフォンのように操作し、地図やエアコン制御が可能。またパナソニックの技術を生かし、音楽や映像の配信などもできる。

 黎明(れいめい)期に部屋一つほどの大きさだったコンピューターの処理能力が向上し、パソコンやスマホに昇華したように、自動運転車も少しずつ高度化するとみられる。完成車メーカーを頂点とする自動車の産業構造は変わり、大小問わず部品や半導体、電機メーカーなどが得意分野を持ち寄る水平分業型への移行が進んでいる。

(名古屋・杉本要が担当しました)
日刊工業新聞2017年1月18日付
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
今年のCESは半導体メーカーと自動車・部品メーカーの提携が目立った年でした。どのメーカーも一社単独での自動運転開発はできず、陣営づくりを進めている印象です。

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