「金融」ロンドン脱出に備え。日系、欧州戦略の見直し視野

「ダブリンかフランクフルトかパリか」

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 英国の欧州連合(EU)単一市場から完全離脱の表明を受け、金融機関の英国からの“大脱出”が現実味を帯びてきた。金融機関が一つの加盟国で許可を取ればEU域内で自由に営業できる「単一パスポート制度」を維持できない見込みのため、既に海外の大手金融機関は人員の大幅な配置転換を表明。日本の金融機関もロンドンに代わる拠点をEU域内に設けることも視野に入れ戦略の見直しに動く。

 「ダブリンかフランクフルトかパリか」。スイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で海外金融機関の経営陣から漏れてきたのはロンドンの代替選択肢についてだ。

 HSBCホールディングスが2016年の国民投票前に最大1000人をロンドンからパリに移す計画を表明していたが、スチュアート・ガリバーCEOはこのほどロンドン投資銀行の収入の約2割に相当するトレーディング業務をパリに移す可能性を示した。
 
 シティグループはロンドンを拠点とする金融派生商品トレーダーの一部をフランクフルトに移すことを検討。JPモルガンも4000人の雇用の英国からの移動を示唆する。

 日本企業にとっても対岸の火事ではない。メガバンクでは三井住友銀行が英国で単一パスポートを取得している。三井住友銀は「さまざまな選択肢を柔軟に検討していく」としている。

 三菱UFJフィナンシャル・グループやみずほフィナンシャルグループは、ロンドンの拠点の見直しには着手していないが既にオランダの現地法人の機能を強化して英国のEU離脱の影響を抑える体制を整えている。欧州最大の金融センター「シティー」の地盤沈下はもはや不可避な様相だ。

 損害保険業界でも英の欧州連合(EU)離脱の動きを注視している。英国には再保険の世界的な市場であるロイズがあるため、東京海上ホールディングス、MS&AD、SOMPOの3グループとも現地に進出、再保険事業を展開している。

 現時点で事業への影響はいずれも限定的との見方。英アムリンを買収したMS&ADは独の現地法人があることから、仮に英がEU市場から離脱したとしても、「単一パスポートによる引き受けが引き続き可能であり、保険事業に大きな影響はない」としている。

 ただ、ポンド安など通貨の下落が続いた場合、中長期的には「ロイズの市場価値が相対的に低下する可能性もある」(大手損保幹部)と、ロイズの将来性を危惧する声もある。
(文=栗下直也)

日刊工業新聞2017年1月19日

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明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

ロンドンの金融機能は簡単に毀損しないだろう。

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