情報系の若手研究者にカネとポストができた!AIで追い風が吹く今こそ

「霞が関を満足させる研究はおっさん世代がやる」

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ポスター会場は活発な議論が行われた(NII提供)
 最近の産業界での人工知能(AI)やビッグデータ(大量データ)の活用などを背景に、情報系の若手研究者に追い風が吹いている。文部科学省の肝いりの若手向け研究支援事業が始まったほか、4日には日本最大級のAI研究拠点の理化学研究所・革新知能統合研究センター(AIPセンター)が東京・日本橋に開設された。指導教員の研究の下請けではなく、若手が直接勝ち取れる予算とポストができたのだ。若くして新しい研究領域を創るチャンスが巡ってきた。

 「霞が関を満足させる研究はおっさん世代がやる。AIで追い風が吹く今こそ、若手は好きな研究に打ち込め」―。科学技術振興機構(JST)のプログラム、河原林ERATOが2016年12月に開いた情報系ウィンターフェスタで、筑波大学の佐久間淳教授(CREST研究代表者)は若手を鼓舞した。

 同フェスタには約250人の若手が集まった。大会場で研究者が3分間隔で研究概要を発表し、すぐにポスターの前に移動して議論する。扱うテーマは88件。発表と議論を一日に4ラウンド繰り返すハードスケジュールだ。多様なテーマに触れ、研究者同士が直接議論することを重視したためだ。

 佐久間教授は41歳。それでも自身をおっさんと表現するのは、情報系の研究者は若くして花開くためだ。米フェイスブックの研究者の年齢の中央値は28歳、グーグルは30歳、アップルとアマゾンは31歳とされる。

 大学で博士号をとったらすぐに現場で主力となる実力が求められる。そのため大学院で指導教員の下請けに甘んじていては遅すぎる。自分の道は自分で切り開こうとする気概が必要だ。

 そうした研究者を応援しようと、JSTは若手向けの研究支援事業「ACT―I(情報と未来)」を新設。大学院修士課程での予算獲得の門戸を開いた。ACT―Iの採択数は30人。

 機械学習理論や自動運転、ヒューマンコンピューティングなど多彩なメンバーが集まる。研究総括の産業技術総合研究所の後藤真孝首席研究員は、「自由に未来の姿を描き、その未来に挑戦しよう」と呼びかける。

 理研のAIPセンターには約10年間、基礎研究に打ち込める環境が整った。AIの基礎研究はほぼ数学だが、若手はすぐに成果を出す必要があるため、応用側に研究の重心を置かざるを得なかった。AIPセンターは基礎研究に集中でき、基礎と応用の両方を手がけることも可能だ。

 AIPセンターは17年度に運営予算が倍増する。杉山将センター長は、「給与をいまの2倍払ってでも優秀な若手を集めたい」と切望する。

 課題は人材の発掘と育成だ。ERATO研究総括である国立情報学研究所(NII)の河原林健一教授は、「情報系は30―35歳で中堅。これから投資を受ける若手が中堅になっても、10代、20代の若手をひき付けて切磋琢磨しながら伸びる好循環を作りたい」と展望する。若手の描く未来が次の未来を育もうとしている。
(文=小寺貴之)

日刊工業新聞2017年1月13日

COMMENT

若手研究者向けのカネとポストができました。ビッグデータブームとそれに続くAIブームで情報系では若手にチャンスが広がっています。情報系で企業と大学で優秀な人材を取り合うことになるわけですが、ヘルスケアや物質材料、気象など、情報系外の研究分野でもデータが整い、AIやデータ科学を使える環境ができます。異分野のおっさん世代は情報系の若手に目を付けたら早めに口説いた方が良いと思います。また、この若手へのチャンス拡大は今後の政策を占う賭けでもあります。情報系は異分野融合がやりやすく波及効果が広いです。今回の若手世代が情報学だけでなく融合領域でも成果を出せば、他の成熟分野に活を入れる施策として認められます。こんな機会は滅多にありません。本当に頑張ってほしいです。 (日刊工業新聞科学技術部・小寺貴之)

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