関東平野の「揺れ」を高精度に再現-シミュレーション技術は地震防災の切り札になるか

構造計画研究所がスパコンで膨大な3次元の地下構造を解析。設計用地震動や被害予測に活用へ

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地下構造にランダム媒質を用いた関東平野における地震動の広がりの様子(構造計画研究所提供)
 地震災害を防ぐには、特定の地域の地震動(地震によって発生する揺れ)をシミュレーションによって予測し、防災計画に反映することが重要だ。しかし、広域でのシミュレーションでは、3次元の地下構造など膨大な情報量の処理が必要。このため、効率的な計算にはスーパーコンピューターが活用されている。構造計画研究所では、スパコンを用いて関東や大阪平野などでの地震動のシミュレーションを実施、設計などに役立てようとしている。
 
 【わずか1時間】
 1959年設立の構造計画研究所は、建築構造設計やエンジニアリングなどを手がける。61年には日本で初めて構造計算にコンピューターを導入するなど、設立当初からコンピューターとはなじみが深い。同社では以前、海洋研究開発機構のスパコン「地球シミュレータ」を利用し、広範囲での地震動解析を行っている。

 大阪平野における「上町断層」を震源に想定。3次元の地下構造モデルと、対象地震の震源断層モデルを組み合わせて計算する手法(3次元差分法)に基づく、同社の「地震動解析プログラム」を地球シミュレータに移植の上、最適化してシミュレーションを行った。

 上町断層を震源とする広範囲の地震動の伝わりを計算するには、通常のPCクラスタでは約4日間(約90時間)必要。同社の栗山利男執行役員は地球シミュレータを使えば「計算をわずか1時間で終えることができた」と振り返る。

 【広帯域を計算】
 近年はこの取り組みを発展させ、地面をがたがたと揺らし、人間が最も揺れを感じる周期0・5―1秒の「短周期地震動」の計算精度向上を行った。もともと3次元差分法は、超高層ビルなどの巨大構造物をゆっくり揺らしてダメージを与える「長周期地震動」の計算に適した手法。高精度の災害予測には、短周期地震動の計算精度を向上する必要がある。

 その際、使用する3次元の地下構造モデルとして、「粘土層」や「れき」などの地層に、意図的に細かい亀裂などを入れる「ランダム媒質」を導入している。従来のシミュレーションで用いる地下構造モデルは、粘土層などの各地層が均質なのが前提。しかしこれでは、実際の波形を十分に再現できない。同社経営企画室の西條裕介氏は「現実の地層は完全に均質ではなく、場所によって少しずつ硬さが違い、細かな亀裂が入っている。ランダム媒質はこれを表現するイメージ」と説明する。

 同社では、08年8月8日12時57分に東京都多摩地区を直下とする、実際に起きた中規模地震を対象に、観測記録と計算結果を比較した。地球シミュレータを用いた計算量域は、102・4キロメートル四方、深さ51・2キロメートル。格子間隔は50メートルで、計算規模は約43億格子とした。

 【設計用に応用】
 その結果、従来モデルより地震波動の伝わりが実際の観測結果に近いことを確認した。この手法を磨き上げれば、より現実的なシミュレーションが可能となる。東京工業大学のスパコン「TSUBAME」などでも同様の成果を得ている。

 東日本大震災以降、安心安全に対する要望は格段に高まっている。広範囲・広帯域のシミュレーションの計算精度が高まれば、高層ビルや高層マンションの設計用地震動や被害予測、自治体でのハザード評価、家具転倒など屋内被害予測といった分野への応用が考えられるという。

日刊工業新聞2015年03月30日 モノづくり面

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

昨日も小笠原を震源地にして関東地方で震度5の地震があった。このところの火山活動の活発化を含め、日本全体で危機感が強まっている。シミュレーション技術においても産学官のもっと広範囲な協力が必要だ。

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