過去最高、マツダの中国販売をけん引した探検する力
日系メーカー4社が過去最高を記録する中で・・
日系自動車メーカー7社の2016年の中国での新車販売台数は、上位4社が前年実績を超え明暗が分かれた。日産自動車、ホンダ、トヨタ自動車、マツダが過去最高を記録した。小型車の減税が追い風になった。17年暦年はホンダとトヨタが前年超えを目指す計画を明らかにした。
日産はセダン「シルフィシリーズ」、スポーツ多目的車(SUV)「エクストレイル」、「キャシュカイ」が好調だった。ホンダは小型SUV「ヴェゼル」、「XR―V」が牽引し最大の伸びを示した。トヨタはセダン「カローラ」、「レビン」が、マツダはSUV「CX―4」が販売増に貢献した。4社はいずれも販売計画を上回った。
17年暦年の販売目標についてホンダは前期比10万台増の134万台、トヨタは前年以上に設定した。12月単月は日産とマツダ、三菱自動車がSUVの好調などで前年実績超えとなったが、ホンダ、トヨタなど4社が減少した。
<開発者が語る。商品本部主査・岡野直樹氏た>
全く新開発の車を中国市場に投入するのは初めて。「クーペSUV」という新しいセグメントに参入した車でもあり、マツダにとっては相当な挑戦となった。
狙ったユーザー層は「ヤング・ライフスタイル・エリート」。お金も教養もあり新しい価値観を持つ人たちで、豊かになった今の中国に対して、このままでいいのかという葛藤や不安を持っている。そこにマツダから真の豊かさ、真の走る喜びを提供しようということで「エクスプローリング(探検する)・クーペ」のコンセプトで開発した。
乗用車をベースに、スリムなSUVを作るには苦労もあった。「CX―5」と比べると全高は180ミリメートル、ボンネットの高さは70ミリメートル、いずれも低い。ただ、SUVとして重要な操縦安定性を保つためにタイヤ外径や床面高さは変えていない。
このためにプラットホーム(車台)は、CX―5のものをベースとしつつもかなり手を入れている。前輪のサスペンションは新設計してボンネットの低さに対応した。車重の重さにあわせて衝突安全性を高めるためにリア部分のフロアや燃料タンクも新設計した。外板には斜めの面がかなり多く、デザイナーの手がかかっている。
結果、CX―5と比べて重心高さは50ミリメートル低く、前面投影面積は10%小さくなり、操縦安定性や燃費性能向上につながった。他社のクーペSUVで見られるようなベース車をちょっといじった作りではなく、結構手間をかけて開発したというのを知ってほしい。
長春の一汽轎車に生産委託し、一汽マツダのチャンネルで販売している。販売目標台数は言えないが出だしは好調。日本に比べると高めに設定しているCX―5よりは価格を安くして、より若い世代を狙っている。
中国国外での生産や販売をどうするかは、検討の最中。クーペSUVというジャンルへの追い風もあるし、開発者としては中国だけの販売にとどめておきたくはない。だが、中国生産の車を世界中で売るとなると、今はまだ品質面などでユーザーの抵抗がある。そこをどうするか、社内で議論している。
【記者の目・キャラクターの違い、明確に】
コンセプトカー「KOERU」の量産タイプだが、中国専売車はマツダのラインアップでは異例。ディーゼルエンジンが軽油の品質問題から投入できない中国で、市場の開拓者としての役割を担う。今後中国外での販売に乗り出してきた時、CX―5とのすみ分けがどうなるかも微妙。もっとはっきりしたキャラクターの違いを打ち出す必要があるだろう。
(文=広島・清水信彦)
日産はセダン「シルフィシリーズ」、スポーツ多目的車(SUV)「エクストレイル」、「キャシュカイ」が好調だった。ホンダは小型SUV「ヴェゼル」、「XR―V」が牽引し最大の伸びを示した。トヨタはセダン「カローラ」、「レビン」が、マツダはSUV「CX―4」が販売増に貢献した。4社はいずれも販売計画を上回った。
17年暦年の販売目標についてホンダは前期比10万台増の134万台、トヨタは前年以上に設定した。12月単月は日産とマツダ、三菱自動車がSUVの好調などで前年実績超えとなったが、ホンダ、トヨタなど4社が減少した。
日刊工業新聞2017年1月13日
初の専売車「CX-4」は相当の挑戦だった
<開発者が語る。商品本部主査・岡野直樹氏た>
全く新開発の車を中国市場に投入するのは初めて。「クーペSUV」という新しいセグメントに参入した車でもあり、マツダにとっては相当な挑戦となった。
狙ったユーザー層は「ヤング・ライフスタイル・エリート」。お金も教養もあり新しい価値観を持つ人たちで、豊かになった今の中国に対して、このままでいいのかという葛藤や不安を持っている。そこにマツダから真の豊かさ、真の走る喜びを提供しようということで「エクスプローリング(探検する)・クーペ」のコンセプトで開発した。
乗用車をベースに、スリムなSUVを作るには苦労もあった。「CX―5」と比べると全高は180ミリメートル、ボンネットの高さは70ミリメートル、いずれも低い。ただ、SUVとして重要な操縦安定性を保つためにタイヤ外径や床面高さは変えていない。
このためにプラットホーム(車台)は、CX―5のものをベースとしつつもかなり手を入れている。前輪のサスペンションは新設計してボンネットの低さに対応した。車重の重さにあわせて衝突安全性を高めるためにリア部分のフロアや燃料タンクも新設計した。外板には斜めの面がかなり多く、デザイナーの手がかかっている。
結果、CX―5と比べて重心高さは50ミリメートル低く、前面投影面積は10%小さくなり、操縦安定性や燃費性能向上につながった。他社のクーペSUVで見られるようなベース車をちょっといじった作りではなく、結構手間をかけて開発したというのを知ってほしい。
長春の一汽轎車に生産委託し、一汽マツダのチャンネルで販売している。販売目標台数は言えないが出だしは好調。日本に比べると高めに設定しているCX―5よりは価格を安くして、より若い世代を狙っている。
中国国外での生産や販売をどうするかは、検討の最中。クーペSUVというジャンルへの追い風もあるし、開発者としては中国だけの販売にとどめておきたくはない。だが、中国生産の車を世界中で売るとなると、今はまだ品質面などでユーザーの抵抗がある。そこをどうするか、社内で議論している。
【記者の目・キャラクターの違い、明確に】
コンセプトカー「KOERU」の量産タイプだが、中国専売車はマツダのラインアップでは異例。ディーゼルエンジンが軽油の品質問題から投入できない中国で、市場の開拓者としての役割を担う。今後中国外での販売に乗り出してきた時、CX―5とのすみ分けがどうなるかも微妙。もっとはっきりしたキャラクターの違いを打ち出す必要があるだろう。
(文=広島・清水信彦)
日刊工業新聞2016年8月31日