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なぜ富士電機は米国でM&Aを狙うのか

「アジアは成長市場だが、なかなかファイナンスがつかない」(北澤社長)
なぜ富士電機は米国でM&Aを狙うのか

買収したRTS(蒸気タービンのメンテナンス作業)

 富士電機は2017年度中にも電力機器や産業機器の分野でM&A(合併・買収)を実施する。23年度に売上高1兆円にする目標の達成を目指し、事業規模を拡大する狙い。300億―400億円の予算を用意し、活発なインフラ投資が見込まれる米国をメーンに海外で対象企業を探す。これまで富士電機のM&Aは、販路獲得といった事業の基盤固めを主眼としてきたが、その戦略を転換。規模拡大を目的としたM&Aを成長への足がかりとする考え。

 富士電機の北澤通宏社長は「売上高1兆円に貢献するよう、売上高400億―500億円の企業を買収したい」と語った。すでに複数の企業を対象に選定作業に入った。必要に応じて予算は積み増す意向だ。

 無停電電源装置(UPS)やエネルギー管理システムといった電力機器分野、モーターやインバーターなど産業機器分野とのシナジーを重視して買収先を選ぶ。電力機器や産業機器の国内市場が成熟化する一方、成長が期待できる海外企業に的を絞る。

 富士電機は13―15年度に海外で計8件のM&Aを実行した。主に現地での人材や販路の獲得を狙いとしており、1件当たりの買収額は最大100億円規模で、合計の買収額は200億円程度にとどまった。

 同社は18年度に売上高9000億円(15年度比10・6%増)、営業利益540億円(同20・0%増)を目指す中期経営計画を進めている。さらにその先の長期目標として、創立100周年を迎える23年度に売上高1兆円を掲げている。
             
日刊工業新聞2017年1月13日
後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
富士電機が進める中期経営計画(16-18年度)のテーマは「成長基盤づくり」で、それを実現する重要なカギの一つがM&A。北澤社長はインタビューで「確かにアジアは成長市場だが、なかなかファイナンスがつかない・・・」と指摘。記事でも触れたが、M&Aの本命は米国企業だ。

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