ANAの最新「エンタメ機」記者試乗レポート!スポーツのライブ視聴の見やすさは?
5月から国際線に投入されたボーイング「787-9」 設定自在の3D航路図に雑誌やマンガも
全日本空輸(ANA)が5月から国際線に投入したボーイング787-9型機。初号機は、5日から羽田-ミュンヘン線に就航している。8月以降には2路線目の羽田-ジャカルタ線へ投入を計画している787-9は、今後同社の中長距離国際線を担う中核機材となる。
787-9は、ANAがローンチカスタマーとなった787の長胴型だ。座席数はビジネスクラス48席とプレミアムエコノミークラス21席、エコノミークラス146席の計215席。標準型である787-8の国際線長距離仕様の169席(ビジネス46席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー102席)よりも46席増え、貨物も約1.2倍搭載できる。
ビジネスクラスはフルフラットシートで、スタッガード配列を採用。787-8では1列ごとに1席-1席-1席配列と1席-2席-1席配列が交互に配されていたが、787-9は1-2-1配列に統一された。
また、全クラス共通のサービスとして、各席の個人用モニターで利用できる機内エンターテインメント(IFE)のシステムを強化。サッカーの国際試合をリアルタイムで視聴したり、進化した航路図で長時間のフライトを楽しめるようになった。機内インターネット接続サービスも用意するなど、娯楽機能が充実しているのも特徴だ。
機内で見るライブ中継のスポーツ番組や新しい航路図は、どのようなものだろうか。機材繰りの関係で投入された台北(松山)から羽田まで、実機に乗って試してみた。実際に乗ってみると、三次元(3D)表示になった航路図は、記者のように航空機に格段の興味がない人間でも、楽しめるものになっていた。
<スポーツもリアルタイム視聴>
テレビ番組をリアルタイムに視聴できるサービスは「ANA SKY LIVE TV」で、同社初導入となるサービス。NHKやCNNのニュース番組、スポーツ番組などが無料で視聴できる。NHKはニュースのほかスポーツやエンターテインメント番組を配信する「NHKワールドプレミアム」、CNNは世界中のビジネスやスポーツのニュースを配信する「CNNインターナショナル」を提供。サッカーのプレミア・リーグなど、注目度の高い試合をライブ中継する「スポーツ24」も、機内で楽しめる。
視聴する際は、個人用モニターで機内エンターテインメントのプログラムを選択する際、「スカイ ライブ TV」を選ぶ。次の画面では提供中の3番組が表示され、任意の番組を選ぶとモニターに番組が映し出される。
従来、機内で見るテレビ番組と言えば、録画されたものに限られていた。今後はワールドカップのような注目度の高い試合を機内で観戦することもできそうだ。システムは、米パナソニックアビオニクス製のライブテレビ「eXTV」を採用している。
<ネット接続も完備>
近年航空各社が力を入れる、機内インターネット接続サービスも、全クラスで「ANA WiFi 2」として提供。従来ANAのシステムは、エアバスなどが出資するオンエア社のシステム「インターネットオンエア」を採用していたが、787-9では、米パナソニックアビオニクス製のシステム「eXConnect」を導入した。同システムは、1機あたり最大50Mbpsの通信速度で、衛星との間を通信できる。
パナソニック製が採用されたのは、ボーイングが787用のネット接続システムとして、唯一採用したものだからだ。しかし、オンエアのシステムは、パナソニック製よりも通信速度が遅い点や、ANAが飛ぶ航路では衛星からの電波を受けにくい地域があるなど、難点が指摘されていたこともあり、他の航空会社でも主流のシステムに切り替えることで、乗客の満足度は高まるとみられる。
記者はiPhone 5S(iOS 8.3)とMacBook Pro(OS X 10.10.3)で、当紙(Aviation Wire)の閲覧や、日経ビジネスオンラインに執筆している連載「天空万華鏡」のゲラチェックを行ってみた。体感速度は、国内で携帯電話会社が提供するWi-Fiサービスより、やや遅い印象だった。メールは添付ファイルが大きいものだと、受信完了までに時間がかかっていた。メールクライアントソフトで、添付ファイルが一定以上のサイズの場合、受信をスキップするなどの設定をしたほうがよいだろう。
しかし、これはサービスを利用する乗客数や飛行エリア、天候で大きく異なるものなので、参考程度にしかならない。ANAではスマートフォンやタブレット端末での利用を推奨しており、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)といったSNSへの投稿やメールの確認、到着地の情報収集といった利用法を想定している。
気になった点としては、最初にiPhoneでユーザー登録した際、登録完了後に何度も同じ画面が表示されたことだった。結果的に登録は問題なくできていたが、画面遷移についてはさらなる動作検証や改修が必要と感じた。
一度アカウントを作成すると、料金の有効期間内であればiPhoneからMacBookに使用する機器を切り替えても問題ない。料金は30分で6.95ドル(約830円)、3時間で16.95ドル。支払い方法はクレジットカード(VISA・MASTER・DISCOVER・AMEX・JCB・DINERS)のみ。
<雑誌やマンガも用意>
個人モニターには、電子書籍も用意。雑誌やマンガ、実用書、観光ガイドブック、機内誌などが無料で読める。雑誌は週刊東洋経済と週刊ダイヤモンド、Casa BRUTUS(カーサ・ブルータス)、Tarzan(ターザン)、ソトコト、Hanako(ハナコ)、週刊パーゴルフの7誌が読める。マンガは進撃の巨人、名探偵コナン、ONE PIECE(ワンピース)、テニスの王子様、宇宙兄弟、アオイホノオ、風の大地、海月姫、俺物語!!、女王の花、幽麗塔、風光るの12作品が収録されていた。
書籍の選択やページめくりなどは、タッチパネル式の個人モニターをタッチすれば操作できる。記者は17インチモニターを備えるビジネスクラスで試用したが、タッチから一呼吸置いて動作する間合いなので、焦らずゆっくり操作すると、誤操作を防げると感じた。
<アナログ風計器も出現! 設定自在の3D航路図>
モニターで見られる航路図「ANA スカイマップ」も、従来の2次元(2D)地図から3次元(3D)に進化。立体的な地形表示や、さまざまなアングルから航路図を楽しめる。3Dになった新しい航路図は、とにかく機能が多彩。さまざまな表示を自動で切り替える「自動再生」をはじめ、フライトプレビュー、トータルルート、ミッドフライト、オーバーヘッド、コマンドセンター、タイムゾーン、外の景色と8種類ある。従来は4種類程度だった。
さらに、画面上に表示する項目もカスタマイズできる。都市(目的地)までの距離、飛行ルート、コンパス、都市、首都・州都、山・山脈、河川・湖沼・海、地形の8項目を、自由に表示/非表示を切り替えられる。
また、時間表示も12時間/24時間を切り替えられ、距離などの単位もメートルとマイル/フィート、海里から選べる。設定画面も、初期設定は右側だが左側に変更でき、画面下に時刻や飛行距離などを表示する「ティッカー」も、表示/非表示を切り替えられる。
目玉機能の一つが、8種類ある表示のうち「コマンドセンター」だろう。画面左側には自機の位置を示す地図が表示され、その下には時刻や外気温、残りの飛行時間などが表示される。画面右側は機体のイラストが描かれ、対気速度や飛行高度、昇降速度、ピッチ角/バンク角、方位が示される。また、このイラストの下には対気速度と方位、飛行高度がアナログ計器を模した形で表示される。
従来飛行情報といえば、ほとんどが文字情報のみだった。最近の機体では、飛行する飛行機とともに数値が変化するものもあるが、コマンドセンターほど多くの情報をグラフィカルに網羅した航路図は初めての試みだろう。コマンドセンターという名前通り、なんとなく飛行機の操縦や運航に関わったような気になれる画面だ。
また、機外の様子をCGで表示する「外の景色」では、空港に近づくと空港周辺の景色が再現される。高高度を飛行中は当然ながら、雲や空しか出てこない。これまでの2Dの航路図では、現在飛行中の地域を拡大表示する高精細表示で、画面の隅に飛行機が到達しても、いつまでも所定のエリアから切り替わらないなど、見ていてフラストレーションがたまるような表示もあった。短距離国際線なのに地球全体が表示され、豆粒のような航路図が表示されるなど、なかなか各路線の実態にあった表示が実現できていなかったと言える。
今回の3D航路図では、乗客が知りたい情報を見やすく表示できるようになったと感じた。飛行機に乗ると航路図ばかり見ている記者個人の感想としては、満足度が高かった。しいて挙げるならば、コマンドセンター内で表示される自機の位置表示を、現在位置を表示する「オーバーヘッド」などに変えられるとよかったかな、ということだろうか。
スマートフォンやタブレット端末の普及により、機内での過ごし方も多様化してきた。ANAが導入した新サービスは、どのように受け入れられるのだろうか。
787-9は、ANAがローンチカスタマーとなった787の長胴型だ。座席数はビジネスクラス48席とプレミアムエコノミークラス21席、エコノミークラス146席の計215席。標準型である787-8の国際線長距離仕様の169席(ビジネス46席、プレミアムエコノミー21席、エコノミー102席)よりも46席増え、貨物も約1.2倍搭載できる。
ビジネスクラスはフルフラットシートで、スタッガード配列を採用。787-8では1列ごとに1席-1席-1席配列と1席-2席-1席配列が交互に配されていたが、787-9は1-2-1配列に統一された。
また、全クラス共通のサービスとして、各席の個人用モニターで利用できる機内エンターテインメント(IFE)のシステムを強化。サッカーの国際試合をリアルタイムで視聴したり、進化した航路図で長時間のフライトを楽しめるようになった。機内インターネット接続サービスも用意するなど、娯楽機能が充実しているのも特徴だ。
機内で見るライブ中継のスポーツ番組や新しい航路図は、どのようなものだろうか。機材繰りの関係で投入された台北(松山)から羽田まで、実機に乗って試してみた。実際に乗ってみると、三次元(3D)表示になった航路図は、記者のように航空機に格段の興味がない人間でも、楽しめるものになっていた。
<スポーツもリアルタイム視聴>
テレビ番組をリアルタイムに視聴できるサービスは「ANA SKY LIVE TV」で、同社初導入となるサービス。NHKやCNNのニュース番組、スポーツ番組などが無料で視聴できる。NHKはニュースのほかスポーツやエンターテインメント番組を配信する「NHKワールドプレミアム」、CNNは世界中のビジネスやスポーツのニュースを配信する「CNNインターナショナル」を提供。サッカーのプレミア・リーグなど、注目度の高い試合をライブ中継する「スポーツ24」も、機内で楽しめる。
視聴する際は、個人用モニターで機内エンターテインメントのプログラムを選択する際、「スカイ ライブ TV」を選ぶ。次の画面では提供中の3番組が表示され、任意の番組を選ぶとモニターに番組が映し出される。
従来、機内で見るテレビ番組と言えば、録画されたものに限られていた。今後はワールドカップのような注目度の高い試合を機内で観戦することもできそうだ。システムは、米パナソニックアビオニクス製のライブテレビ「eXTV」を採用している。
<ネット接続も完備>
近年航空各社が力を入れる、機内インターネット接続サービスも、全クラスで「ANA WiFi 2」として提供。従来ANAのシステムは、エアバスなどが出資するオンエア社のシステム「インターネットオンエア」を採用していたが、787-9では、米パナソニックアビオニクス製のシステム「eXConnect」を導入した。同システムは、1機あたり最大50Mbpsの通信速度で、衛星との間を通信できる。
パナソニック製が採用されたのは、ボーイングが787用のネット接続システムとして、唯一採用したものだからだ。しかし、オンエアのシステムは、パナソニック製よりも通信速度が遅い点や、ANAが飛ぶ航路では衛星からの電波を受けにくい地域があるなど、難点が指摘されていたこともあり、他の航空会社でも主流のシステムに切り替えることで、乗客の満足度は高まるとみられる。
記者はiPhone 5S(iOS 8.3)とMacBook Pro(OS X 10.10.3)で、当紙(Aviation Wire)の閲覧や、日経ビジネスオンラインに執筆している連載「天空万華鏡」のゲラチェックを行ってみた。体感速度は、国内で携帯電話会社が提供するWi-Fiサービスより、やや遅い印象だった。メールは添付ファイルが大きいものだと、受信完了までに時間がかかっていた。メールクライアントソフトで、添付ファイルが一定以上のサイズの場合、受信をスキップするなどの設定をしたほうがよいだろう。
しかし、これはサービスを利用する乗客数や飛行エリア、天候で大きく異なるものなので、参考程度にしかならない。ANAではスマートフォンやタブレット端末での利用を推奨しており、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)といったSNSへの投稿やメールの確認、到着地の情報収集といった利用法を想定している。
気になった点としては、最初にiPhoneでユーザー登録した際、登録完了後に何度も同じ画面が表示されたことだった。結果的に登録は問題なくできていたが、画面遷移についてはさらなる動作検証や改修が必要と感じた。
一度アカウントを作成すると、料金の有効期間内であればiPhoneからMacBookに使用する機器を切り替えても問題ない。料金は30分で6.95ドル(約830円)、3時間で16.95ドル。支払い方法はクレジットカード(VISA・MASTER・DISCOVER・AMEX・JCB・DINERS)のみ。
<雑誌やマンガも用意>
個人モニターには、電子書籍も用意。雑誌やマンガ、実用書、観光ガイドブック、機内誌などが無料で読める。雑誌は週刊東洋経済と週刊ダイヤモンド、Casa BRUTUS(カーサ・ブルータス)、Tarzan(ターザン)、ソトコト、Hanako(ハナコ)、週刊パーゴルフの7誌が読める。マンガは進撃の巨人、名探偵コナン、ONE PIECE(ワンピース)、テニスの王子様、宇宙兄弟、アオイホノオ、風の大地、海月姫、俺物語!!、女王の花、幽麗塔、風光るの12作品が収録されていた。
書籍の選択やページめくりなどは、タッチパネル式の個人モニターをタッチすれば操作できる。記者は17インチモニターを備えるビジネスクラスで試用したが、タッチから一呼吸置いて動作する間合いなので、焦らずゆっくり操作すると、誤操作を防げると感じた。
<アナログ風計器も出現! 設定自在の3D航路図>
モニターで見られる航路図「ANA スカイマップ」も、従来の2次元(2D)地図から3次元(3D)に進化。立体的な地形表示や、さまざまなアングルから航路図を楽しめる。3Dになった新しい航路図は、とにかく機能が多彩。さまざまな表示を自動で切り替える「自動再生」をはじめ、フライトプレビュー、トータルルート、ミッドフライト、オーバーヘッド、コマンドセンター、タイムゾーン、外の景色と8種類ある。従来は4種類程度だった。
さらに、画面上に表示する項目もカスタマイズできる。都市(目的地)までの距離、飛行ルート、コンパス、都市、首都・州都、山・山脈、河川・湖沼・海、地形の8項目を、自由に表示/非表示を切り替えられる。
また、時間表示も12時間/24時間を切り替えられ、距離などの単位もメートルとマイル/フィート、海里から選べる。設定画面も、初期設定は右側だが左側に変更でき、画面下に時刻や飛行距離などを表示する「ティッカー」も、表示/非表示を切り替えられる。
目玉機能の一つが、8種類ある表示のうち「コマンドセンター」だろう。画面左側には自機の位置を示す地図が表示され、その下には時刻や外気温、残りの飛行時間などが表示される。画面右側は機体のイラストが描かれ、対気速度や飛行高度、昇降速度、ピッチ角/バンク角、方位が示される。また、このイラストの下には対気速度と方位、飛行高度がアナログ計器を模した形で表示される。
従来飛行情報といえば、ほとんどが文字情報のみだった。最近の機体では、飛行する飛行機とともに数値が変化するものもあるが、コマンドセンターほど多くの情報をグラフィカルに網羅した航路図は初めての試みだろう。コマンドセンターという名前通り、なんとなく飛行機の操縦や運航に関わったような気になれる画面だ。
また、機外の様子をCGで表示する「外の景色」では、空港に近づくと空港周辺の景色が再現される。高高度を飛行中は当然ながら、雲や空しか出てこない。これまでの2Dの航路図では、現在飛行中の地域を拡大表示する高精細表示で、画面の隅に飛行機が到達しても、いつまでも所定のエリアから切り替わらないなど、見ていてフラストレーションがたまるような表示もあった。短距離国際線なのに地球全体が表示され、豆粒のような航路図が表示されるなど、なかなか各路線の実態にあった表示が実現できていなかったと言える。
今回の3D航路図では、乗客が知りたい情報を見やすく表示できるようになったと感じた。飛行機に乗ると航路図ばかり見ている記者個人の感想としては、満足度が高かった。しいて挙げるならば、コマンドセンター内で表示される自機の位置表示を、現在位置を表示する「オーバーヘッド」などに変えられるとよかったかな、ということだろうか。
スマートフォンやタブレット端末の普及により、機内での過ごし方も多様化してきた。ANAが導入した新サービスは、どのように受け入れられるのだろうか。