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「航空機向けの設備投資、まだまだ必要」(IHI社長)

満岡次郎社長に聞く「為替の影響を最小限に抑え、モノづくりで改善」
「航空機向けの設備投資、まだまだ必要」(IHI社長)

満岡社長

 ―2017年の事業環境をどう見ますか。
 「トランプ米政権の誕生や欧州での重要な国政選挙を控え、為替がどう振れるか分からない。1ドル=100円レベルで利益を出せる体制が最も大切。為替への耐性をどこまで作り込めるかだ。筋肉質になるべきだと社内には伝えている」

 ―度重なる業績下方修正の一因となった海洋構造物事業では、事業継続のあり方について検討しています。
 「2016年度中の結論に向け、さまざまなケーススタディーを実施している。事業の一つである(船舶向けで液化天然ガスを貯蔵する)SPBタンクは、社会的な要請も大きい。要望と需要をてんびんにかけながら、最適な方向性について丁寧かつ迅速に議論する」

 ―事業ポートフォリオの再編をどう進めていきますか。
 「子会社や関係会社を含むSBU(戦略事業単位)間の連携の枠組みをいかに構築するかだ。例えば自動車向けターボチャージャー(過給器)事業では、地産地消を掲げ地域ごとに事業展開してきた。設計・開発といった人的資源や生産設備の連携を深められれば全体最適が図れる。地域でやってきたものをグループ連携という形で走らせる」

 ―航空機エンジン事業では、新たな機種向けの部品量産も始まっています。
 「(欧エアバスの『A320neo』に搭載される)『PW1100G―JM』は大量に生産するので、当面の課題は生産コストの低減だ。為替の影響を最小限に抑え、モノづくりのところで改善していく。設備投資もまだまだ必要。PW1100は19年くらいまで増産が続く。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が中心に開発している新エンジン『GE9X』向けの投資も始まる」

 ―情報通信技術(ICT)活用がエンジン事業の切り札となりそうです。
 「IoT(モノのインターネット)が一つのカギになる。ICTの活用は、サプライチェーン全体をつなぐことが重要。自社工場だけをつないでも、最終的に利益を出しにくい。裾野の広いサプライヤーをいかに管理できるか。皆で問題解決する体制を構築する」
(聞き手=長塚崇寛)
日刊工業新聞2017年1月10日
長塚崇寛
長塚崇寛 Nagatsuka Takahiro 編集局ニュースセンター デスク
業績を圧迫してきた海洋構造物関連事業の改革を成し遂げ、V字回復につなげられるかが17年の焦点となりそう。それにはモノづくりのあり方を見直しつつ、潜在的リスクへの迅速な対応が求められる。本年度スタートの中期経営計画で掲げた「収益基盤の強化」に期待したい。

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