日本が抱える30万人の半導体人材をIoTで守れるか
多品種少量、「まだ日本からも新しいことを生み出せる」
あらゆる製品にセンサーなどの半導体が搭載されるIoT(モノのインターネット)が、半導体産業のビジネスモデルを変えるかもしれない。半導体製造は歴史的に回路の微細化と、ウエハーの大口径化で大量生産を突き詰めてきた。しかしIoTでは多品種少量生産のニーズが高まる。
日本の企業や研究機関は、持ち前の技術力でこの課題に挑む。誰もが半導体メーカーになれる技術で覇権を握れば、日本の半導体関連産業は再び輝きを取り戻せるはずだ。
「日本が抱える30万人の半導体(に携わる)人材を活用し、多品種変量生産で利益の出るビジネスモデルをつくる」。こう意気込むのは、コネクテックジャパン(新潟県妙高市)の平田勝則社長だ。
同社は半導体チップを低温・低圧力で基板に接合する技術「モンスター・パック」を開発した。接合時の温度は従来より90度C低い170度C、圧力は20分の1。従来は難しかったフレキシブル基板や、微小電気機械システム(MEMS)とメモリーの一体成形などに応用できる。
同技術を活用したのが、卓上に設置できる小型装置「デスクトップファクトリー(DTF)」だ。既存設備と比べ投資額を40分の1に、設置面積を30分の1に削減。チップベースで加工するため、1個単位で生産ラインに流せる。工程数も従来の34から3へと減らした。型となるマスクの切り替えも容易で「1日20―30種類を加工できる」(平田社長)。
17年後半には80度C実装のサンプルを出荷し、18年頃に装置の外販も始める見通し。株式上場し、世界中に小規模工場を展開する構想も持つ。
直径12・5ミリメートル(0・5インチ)の小さなウエハーを1個ずつ加工することで多品種少量生産を実現するのが、産業技術総合研究所などが進める半導体製造ライン「ミニマルファブ」だ。各工程に必要な装置を、大人よりも若干小さい程度に小型化。1ラインで月数万枚のウエハーを生産でき、既存の大規模工場に比べて投資額は1000分の1程度になる。
ウエハーへの回路形成から、ウエハーの切断やパッケージ加工までの一貫システムを目指す。装置事業を取りまとめる横河ソリューションサービス(東京都武蔵野市)は「早く(事業を)立ち上げノウハウを蓄積することが重要だ」(西村一知半導体サービスセンター長)と力を込める。
ミニマルファブを使って、16年1月に事業を始めたネイタス(東京都港区)は、沖縄県の工場で17年中に月間5000枚の生産ラインを構築する計画。1個からの受託生産のほか、大量品の納期を数カ月から5日間程度に短縮する。吉田政孝社長は「IoT時代のモノづくりを実現したい」と意気込む。
「まだ日本からも新しいことを生み出せる」と平田社長は力強く語る。半導体産業で、日本発の潮流が大きくなりつつある。(文=政年佐貴恵)
日本の企業や研究機関は、持ち前の技術力でこの課題に挑む。誰もが半導体メーカーになれる技術で覇権を握れば、日本の半導体関連産業は再び輝きを取り戻せるはずだ。
「日本が抱える30万人の半導体(に携わる)人材を活用し、多品種変量生産で利益の出るビジネスモデルをつくる」。こう意気込むのは、コネクテックジャパン(新潟県妙高市)の平田勝則社長だ。
同社は半導体チップを低温・低圧力で基板に接合する技術「モンスター・パック」を開発した。接合時の温度は従来より90度C低い170度C、圧力は20分の1。従来は難しかったフレキシブル基板や、微小電気機械システム(MEMS)とメモリーの一体成形などに応用できる。
同技術を活用したのが、卓上に設置できる小型装置「デスクトップファクトリー(DTF)」だ。既存設備と比べ投資額を40分の1に、設置面積を30分の1に削減。チップベースで加工するため、1個単位で生産ラインに流せる。工程数も従来の34から3へと減らした。型となるマスクの切り替えも容易で「1日20―30種類を加工できる」(平田社長)。
17年後半には80度C実装のサンプルを出荷し、18年頃に装置の外販も始める見通し。株式上場し、世界中に小規模工場を展開する構想も持つ。
直径12・5ミリメートル(0・5インチ)の小さなウエハーを1個ずつ加工することで多品種少量生産を実現するのが、産業技術総合研究所などが進める半導体製造ライン「ミニマルファブ」だ。各工程に必要な装置を、大人よりも若干小さい程度に小型化。1ラインで月数万枚のウエハーを生産でき、既存の大規模工場に比べて投資額は1000分の1程度になる。
ウエハーへの回路形成から、ウエハーの切断やパッケージ加工までの一貫システムを目指す。装置事業を取りまとめる横河ソリューションサービス(東京都武蔵野市)は「早く(事業を)立ち上げノウハウを蓄積することが重要だ」(西村一知半導体サービスセンター長)と力を込める。
ミニマルファブを使って、16年1月に事業を始めたネイタス(東京都港区)は、沖縄県の工場で17年中に月間5000枚の生産ラインを構築する計画。1個からの受託生産のほか、大量品の納期を数カ月から5日間程度に短縮する。吉田政孝社長は「IoT時代のモノづくりを実現したい」と意気込む。
「まだ日本からも新しいことを生み出せる」と平田社長は力強く語る。半導体産業で、日本発の潮流が大きくなりつつある。(文=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2017年1月10日