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子宮頸(けい)がんの予防を考える―他国と比べ受診率の低さが大きな課題

日本では1日に約10人の女性が子宮頸がんで死亡。ワクチンは便益とリスクを理解した上で
 日本では若年層も含め毎年約3500人の女性が子宮頸(けい)がんで亡くなる。だが検査の受診率は他国と比べて低く、専門医は警鐘を鳴らしている。予防にはワクチンが有効とされるが、まれに重篤な副反応が出る。生活者はこの病気を正確に理解し、どう向き合うべきかを能動的に決める必要がある。

 【関心低く】
 「皆、根拠のない自信で『かからない』と思っている」。NTT東日本関東病院産婦人科の近藤一成医長は、子宮頸がんへの低い関心を厳しく指摘する。このがんはヒトパピローマウイルス(HPV)が引き起こし、HPV感染自体は性交渉のある女性の80%以上が経験すると言われる。感染しても免疫により体内から排除される場合が多いが、感染が持続してしまうとがんの発症に至る。

 がんが初期段階で見つかった場合、子宮頸部の一部を切除することで子宮を温存できる。しかし進行してしまった場合は子宮自体やその周辺部を摘出することになり、排尿・排便障害といった後遺症にも悩まされる。

 【急速な進行も】
 厚生労働省は成人女性に対して2年に1度の子宮頸がん検診を推奨しているものの、日本の受診率は他国と比べ「相変わらず非常に低い」(近藤医長)。また、検診を受けていても急速にがんが大きくなる場合がある。23歳で子宮頸がんが判明した日本がん・生殖医療研究会の阿南里恵さんは、検診で異常なしとされた半年後に進行したがんが見つかったという。

 そこでワクチンが予防手段として期待されるが、重いアレルギーや脳神経の病気といった副反応が報告されたため厚労省は接種を積極的には勧めていない。女性はワクチンの便益とリスクを理解した上での決断が求められる。
 
 【専門医は語る/NTT東日本関東病院産婦人科医長 近藤一成氏】
 子宮頸がんの場合、幸せな顔で退院していく患者を見たことがない。治療をする我々も感謝されることはない。必ず検診には行ってほしい。だが企業で働く女性が非常に増え、忙しいことを理由に行かない人も多い。女性を1人でも雇う経営者は、検診状況を自ら確認するというぐらいの気持ちになって頂きたい。

 ワクチンの副反応で悩む人がいることは心苦しい。しかし副反応がゼロのワクチンは残念ながらないので、出てしまった人を救済するシステムの構築がポイントになる。これはいまひとつ進んでおらず、早急な整備を要望する。接種はしたいが迷うという人に対しては、私は信頼できる先生のもとで打つことを助言している。何か問題が起きてもきちんと診てくれる、という人がいる場合は接種してみてはどうだろうか。(談)

 ※「病と闘う/疾患治療最前線」は日刊工業新聞で随時連載中
日刊工業新聞2015年04月21日 ヘルスケア面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
女性活用を大々的にうたう企業は、婦人科疾患の対策にも真剣に取り組むべき。

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