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寒い冬の入浴で死なないポイント。41℃未満、10分以内で

ヒートショック、欧米より日本が多い理由
 寒さが厳しくなり、日本人の生活に欠かせないのが入浴です。最近、自宅のお風呂が進化し、より快適になってきましたが、その入浴に危険が潜んでいることをご存じでしょうか。日本は、他国に比べ入浴に伴う事故の多いことが指摘されており、入浴関連事故に関する厚労省科研費研究が報告されました。今回はそれに基づき、入浴の危険、予防対策、好ましい入浴法についてお話しいたします。

 報告によると、驚くことに日本の入浴関連の死亡事故は、年間1万9000件と推定されます。高齢者に入浴事故が多く、発生は冬季に集中していますが、欧米に比べ日本の発生数が多い原因として、欧米ではお湯につかる習慣が少ない上に、日本人の湯温の平均が冬季で43度C、夏季41度Cであるのに比べ、欧米では40度C以下が普通であることから、「高温入浴」にあると考えられます。

 これまでヒートショックと言われる体温の急激な変化が原因とされてきましたが、実は入浴による体温上昇に伴う「のぼせ」や「湯あたり」といった意識障害が死因につながっていることが分かってきたのです。

 意識がもうろうとした時に浴槽からの救助が遅れた場合には体温がさらに上昇し、意識状態が悪化し、血圧低下そして溺水を起こすと考えられています。一方で同じ入浴でも公衆浴場での死亡事故は少なく、周囲の人に早期に発見されることで重症化しないことが分かっています。

高齢者は一人をなるべく避ける


 日本人の入浴の常識では、湯冷めをしないようにしっかり温まることが良いとされていますが、入浴時の注意点は、41度C未満の湯温設定で浴槽に入る時間は10分以内がポイントです。

 その他には、寒い状態にあるほど熱いお湯にすぐ入りたくなるため、浴室や脱衣所を暖房などで、あらかじめ暖かくすることも有効です。飲酒後や睡眠導入薬服用後の入浴は、非常に危険です。浴槽で急に立ち上がることで立ちくらみ、失神を起こし、浴槽内に倒れて溺れる危険性もあるので、立ち上がりはゆっくり、を心掛けましょう。

 高齢者は一人での入浴をなるべく避け、家人によるこまめな見守りが必要です。万が一、浴槽内で意識がない状態を発見したら、直ちに浴槽内から出すか、栓を抜き、お湯を流して溺水の危険を回避してから119番に連絡してください。

 入浴中の事故は、脳卒中や心筋梗塞を発症することよりも、体温の上昇による意識障害で起こることが多く、早期に発見されれば軽症で済み、後遺症を残すこともほとんどありません。
(文=岩原信一郎・社会医療法人社団正志会、南町田病院院長)
日刊工業新聞2015年12月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
先日、80代の老夫婦が入浴中にそろって亡くなるというニュースがありました。個人的には最近は43度でお湯を出していたが、長湯には注意しましょう。

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