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日東電工はなぜ強いのか。部品と材料のハイブリッド企業が見据える売上高1兆円

高崎社長インタビュー「車載分野はニーズが得意分野に近づく。腕の見せどころでワクワクする」
日東電工はなぜ強いのか。部品と材料のハイブリッド企業が見据える売上高1兆円

「営業利益率13―14%の確保がより重要」と高崎社長

 2015年3月期に初の営業利益1000億円を達成した日東電工。液晶パネル用偏光板やタッチパネル用酸化インジウムスズ(ITO)フィルムなどの電子部品は業界首位を堅持しつつ、カーエレクトロニクスなどの成長事業の育成に力を注ぐ。このほど改定した2017年度(18年3月期)までの3カ年中期経営計画や成長分野の現状について高崎秀雄社長に聞いた。

 ―新中計の要点は。
 「17年度に売上高1兆円の目標を掲げた。ただ、営業利益率13―14%の確保がより重要だ。従来は偏光板など情報機能材料が業績を引っ張ったが、今後は『エリア・ニッチ・トップ(ANT)』と呼ぶ地域固有のニーズを狙った製品を成長させる。事業ポートフォリオを環境、新エネルギー、ライフサイエンスに移して分野がまたがる車載向けは特に注力する」

 ―車載用の見通しは。
 「現在の車載向け売上高約1000億円を17年度は1500億円に伸ばす。日系メーカー向けが7割を占めるが欧米系へも拡販する。現行品の拡大に加えて新製品の売り上げも上乗せする。自動車の電子化が進みIT企業や電機メーカーが参入すれば、サプライチェーンそのものが変化して業界の事業展開の速度が上がる。業界ニーズが当社の得意分野に近づくことになり『腕の見せどころ』とわくわくする」

 ―ANT製品は成長段階に入りますか。
 「国内向けの窓用遮・断熱フィルムは中国への展開が有望で17年度に100億円を目指す。白色発光ダイオード(LED)チップの生産工程を効率化できるシート状封止材は台湾などで近く納入が始まり100億円、太陽電池向け光波長変換シートは農業市場への展開を見込み50億円をそれぞれ目標とする。航空機向けテープ材などは米国の販売ノウハウを欧州に展開する。各製品の年間売上高は現在、数億円かそれ以下だが地域や需要が広がり、大化けする可能性がある」

 ―3カ年の戦略投資枠として設定した1500億円の用途は。
 「M&A(合併・買収)でANT製品などの成長に必要な時間、技術、販売チャンネル、特許などを獲得する。15年度内にも実行したいがタイミングや縁が必要だ」

 ―主力の薄型偏光板の動向は。
 「年内にもテレビ向けに供給を始める。顧客工場に自社設備を置いて加工する『ロール・ツー・パネル』方式で、80型の大型パネルに対しても偏光板を収縮せずに貼り付けられる」

 ―ITOフィルムはインセル型タッチパネルの普及で需要が縮小しませんか。
 「インセル型とフィルムセンサー型は生産効率や少量多品種対応などで一長一短があり、住み分けしていくだろう。仮にITOフィルムの需要が縮小しても生産設備は成長を見込む窓用フィルムの生産に利用できる」
 
 【記者の目/成長段階に即し組織体制整備を】
 高崎社長は就任1年目を終えて「主力の情報機能材料事業を維持しつつ新事業を成長させていく手応えを感じた」と振り返った。現路線を着実に歩めば「18年3月期に(売上高)1兆円を達成して同年10月の創業100周年を迎える」という目標の実現も可能。「リスクは人材」と自ら指摘するように、成長に合わせた組織体制の整備を急ぐ必要がある。
(聞き手=錦織承平)
日刊工業新聞2015年05月21日 電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
車載部品のモジュール化の流れが電子部品メーカーの中でもこれから競争力を左右するだろう。日本電産の永守さんもそれを分かって動いている。日東電工もアプローチは違うとはいえ、強みを発揮できる企業の一つ。問題は1社で閉じた戦略に軸足を置くのか、他社との連携に重視するか。これは日東電工に限らず、業界にとって相当重要な経営判断になる。

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