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【突破せよ日立#02】“ビルIoT”案件、桁が一つ違う規模で動く

キーマンに聞く。「ビルや鉄道ビジネスとつなげるプロデューサー役」
【突破せよ日立#02】“ビルIoT”案件、桁が一つ違う規模で動く

小林圭三執行役常務

小林圭三執行役常務アーバンソリューションビジネスユニット(BU)CEO

 -アーバンソリューションBUは2016年4月に発足しました。役割は。
 「IoT(モノのインターネット)技術を活用し、ビルなどの価値向上を支援するサービスを展開する。不動産、駅・街、生活・社会インフラの三つを注力分野に設定した。戦略BUという位置付けであり、売上高や利益について厳しく問われない。自由な立場で鉄道やビルシステムといった他BUと連携し、グループの製品・サービスをトータル提供する事業展開が理想だ」

 -具体的なビジネスのイメージは。
 「例えばビル。エレベーターや空調、セキュリティーといった設備の運用を最適化したり、人の流れ見える化してマネジメントしたりする支援サービスがある。また近隣で複数ビルを運営している場合、災害対応設備のある〝親〟ビルの機能を、周辺の〝子〟ビルに展開するといったサービスも想定する。ビル所有者に対しエネルギーコスト削減、テナント収益の最大化といった価値を提供したい」

 -手応えは。
 「IoTを使って何かやりたいという経営者が増えており、想定を上回る反応を得ている。顧客ニーズは設備などのコスト低減にとどまらず、売上高向上や新サービスを創出まで広がっている。『長期にわたり日立と組んでビジネスしたい』といった声をいただいている。16年度の受注について春頃は数十件と見積もっていたが、桁が一つ違う規模で動き始めている。すでにいくつかのサービスが実証段階を経て契約にこぎつけた」
 
 -海外展開は。
 「すでに米国でグループ会社を通じ、米AT&Tに対しビル設備の最適化サービスを提供している。主力ビルを主な対象としてきたが、今後、契約の範囲を同社のほかのビルにも広げられそうだ」

 「またマレーシアの複合企業『サンウェイPFM』との取引を拡大する。これまで同社本社の省エネ化に取り組んできた。今後は同社が運営する大学やショッピングモールなどでも省エネ支援サービスなどを展開する」

 -電力システムや鉄道など他BUとの連携は。
 「以前より活発に会話するようになった。一つのきっかけはIoTプラットフォーム(基盤)『ルマーダ』。ルマーダを各BUが供用する仕組みで、横から他BUの使い方をみて声を掛ける。この半年、1年で日立の組織間の風通しはだいぶ良くなった」
 
 -ビル向けや、鉄道向けなどの個別ソリューションをつなげ、都市インフラ全体の価値向上を図るサービスが理想です。
 「アーバンソリューションBUが目指すビジネス像は、まさに日立全体が目指す方向だ。当BUは、ビルや鉄道のビジネスをつなげるプロデューサー役でもある。日立グループ内でもっと存在感を高めたい」
(聞き手=後藤信之)

【突破せよ日立#01】求める人財は商社にあり
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後藤信之
後藤信之 Goto Nobuyuki ニュースセンター
アーバンソリューションBUの発足当初は、「何をやる部隊?」と社内でいぶかる声もあったが、半年以上が経過し、今ではいろいろなBUから声が掛かるようになったという。今後、アーバンソリューションBUを起点にどんな新ソリューションが生まれるか、期待したい。

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