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中国ストリーミング大手、LeEcoはテレビ市場の台風の目になるか

米Vizio買収、テレビ本体の価格をゼロで強み発揮
中国ストリーミング大手、LeEcoはテレビ市場の台風の目になるか

LeEco(楽視網)の公式ページより

 テレビ市場は2020年に向け、緩やかな成長を続ける見通しだ。10年前後に先進国を中心に薄型テレビへの買い替えが起きたが、その買い替え時期が再び到来するほか、新興国の低所得者層でも薄型への買い替え需要が起きることが主な要因だ。

 市場のトピックはいくつかある。まず低価格化に伴う4Kテレビの浸透だ。16年1―9月期の4Kテレビの価格は、前年同期比で28%下落した。45型以上での4K比率は日本が75%、中国が73%。普及の速度が遅かった欧米でも本体価格の大幅な下落と、ネットフリックスなどのインターネットサービスがけん引役となり、約60%に上昇した。50型以上では18年までに浸透率がほぼ100%となるだろう。

 次に大型化。特に中国では55型以上が占める割合は30%以上となり、米国を抜いた。背景には地場のパネルメーカーが55型に最適な8・5世代のパネル工場を相次いで立ち上げていることや、韓国・台湾のパネルメーカーが大型パネルの価格を引き下げたことがある。

 中国の動向は注目ポイントの一つだ。大きな変化は、コンテンツメーカーがテレビ市場に参入している点。例えばストリーミングサービスを手がけるLeEco(楽視網)は、視聴契約とテレビをセット販売する手法でシェアを伸ばしている。

 同社は、米テレビ大手のVizioの買収も発表した。テレビ本体の価格をゼロにするなど、大胆な価格設定で強みを発揮している。

 同様にシャオミなど5―6社がストリーミングテレビを出しており、競争が激しくなっている。中国ではテレビ放送よりもネットのストリーミングサービスがどんどん普及していることも、その動きを加速している。

 こうなると厳しいのが、TCLやハイセンスなどのテレビメーカーだ。中国市場での成長が見込めず、北米やアジアを中心にグローバル展開を図っている。だがブランド力やマーケティング力が弱く、苦戦している。今後は中国テレビブランドの中でも勝ち負けが出始め、かつての日本や韓国と同様に淘汰(とうた)される状況が起きてくるだろう。

 テレビ市場で勝ち残るには規模を拡大するか、高価格層を確保することが必要になる。プレミアム層の選択肢の一つが、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)テレビだ。2000ドル以上の価格帯で売上高に占める有機ELテレビの比率は40%。現状は韓国LGディスプレイのみが展開しているが、まだ歩留まりは低い。

 そのため日本を含めて他のブランドを囲い込もうとする動きを強めており、高価格帯を維持したいテレビメーカーとも思惑が一致。17年にかけて中国スカイワースやパナソニック、独レーベ、オランダ・フィリップスが参入する。

 有機ELや8K、臨場感の高い「HDR」など次世代のテレビ技術を通じ、付加価値を高める取り組みは今後も続くだろう。
(文=鳥居寿一IHSテクノロジーシニアディレクター)
               
日刊工業新聞2016年12月15日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
日本の各テレビメーカーが質への転換を鮮明にする中、シャープは規模の勝負に舵を切った。出荷台数で海外ブランドと伍する日本ブランドが再び生まれるのか、注目される。また中国メーカーが技術力を蓄えグローバル展開が成功すれば、競争環境はさらに激しくなりそうだ。

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