ニュースイッチ

20年間揺るがぬ“高級路線”『コットンフィール』の戦略

日清紡ペーパープロダクツ社長・吉野明宏氏に聞く
20年間揺るがぬ“高級路線”『コットンフィール』の戦略

全面的に改良した「コットンフィール」シリーズ

 日清紡ホールディングス傘下で家庭紙や洋紙製品を製造・販売する日清紡ペーパープロダクツ(東京都中央区、吉野明宏社長、03・5695・8915)。主力のティッシュペーパーとトイレットペーパー市場は安価な海外製品の流入が止まらず、価格競争が激しさを増す。そうした中、“高級品路線”にいち早く舵(かじ)を切り、低価格品との差別化を鮮明にしている。吉野社長にその事業戦略を聞いた。

 ―現在の家庭紙の事業環境は。
 「ティッシュペーパーやトイレットペーパーは、中国やインドネシアなどから低価格な輸入品が増えている。日本製品もコスト優位性を持つ海外製品に大きく引っ張られており、低価格品を中心に厳しい競争が続いている」

 ―高価格品への傾注を鮮明にしています。
 「低価格品はコモディティー(市況商品)化が進んでおり、海外勢にかなわない。このような状況を見越し、高級品路線の事業戦略を進めてきた。トイレットペーパーなどはとにかく安いものが売れる時代もあったが、購買動向は変化している。品質や使い勝手などを重視し、高値感のあるものでも積極的に買う消費者が増えていると感じる。低価格品の生産は極力絞っていく方針だ」

 ―高級品の購買層を狙った商品構成は。
 「木材パルプ原料に綿花由来のパルプを配合し、柔らかな肌触りを実現した『コットンフィール』シリーズと独自のエンボス加工で高い吸収性を持たせたシャワートイレ用ペーパーが主力。この両ブランドを軸に高価格品市場の拡大をリードすると同時に当社シェアを高めていくのが戦略となる」

 ―生産体制の再構築も必要では。
 「家庭紙を生産する島田事業所(静岡県島田市)を高価格品の専用工場とすることを検討している。島田事業所には低価格品の生産が残っているが、商品を絞ることで生産効率と品質を高め、競争力を上げることが狙い。17年1月には1億円を投じ、トイレットペーパー生産設備の改修も計画しており、3%程度の能力増となる」

 ―日清紡グループにあって、紙製品事業もスケールアップが課題です。
 「グループ全体で25年度に売上高1兆円(15年度5339億円)という構想があるが、当然、紙事業としても貢献を考えている。紙製品事業では25年度に売上高600億円(同325億円)規模に乗せたい。基本路線の『差別化』は堅持しつつ、商材を広げ『量』を追う側面も必要になるだろう」

吉野明宏社長


【チェックポイント/主力商品の伸長カギに】
 コットンフィールは1996年の発売以来、ボックスティッシュで5億個を売り上げた人気商品。高価格品市場をつくったパイオニアだ。9月には全面改良に踏み切り、木材パルプの配合率や生産工程を変更。肌触りをよりソフトにした。吉野社長は日清紡績(現日清紡ホールディングス)入社後、洋紙関連の生産管理に長く携わり、経験豊富。購買層への効率的なマーケティングを実施し、テコ入れした主力商品をいかに伸ばせるか。トップの手腕が試される。
(文=小野里裕一)
日刊工業新聞2016年12月27日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
安売り目玉商品としてドラックストアの店頭を賑わせていたティッシュ、トイレットペーパー。しかし近年では高級志向製品が増加しています。テコ入れで再度存在感を示せるでしょうか。

編集部のおすすめ