【突破せよ日立#01】求める人財は商社にあり
キーマンに聞く。「顧客と協創してソリューションを作り上げる人を集める」
日立製作所が創業以来最大のビジネスモデル変革に挑んでいる。目指すのは、IoT(モノのインターネット)技術を使って顧客の課題解決に当たるソリューション企業。人、組織、技術プラットフォーム(基盤)まで変化の波は日立全体に広がる。製品に加え関連サービスまで提供し、高収益を上げる次世代製造業への脱皮は日本の電機メーカーに突きつけられた共通課題だ。先陣を切る日立は壁を突破できるか。キーマンに聞く。第1回は人財戦略を担当する中畑英信執行役常務。
-今後、求める人材像は。
「顧客やパートナーと一緒に課題を発掘し、解決策を提供できるソリューション力に長けた人材が必要になる。これまでの日立は良い製品を提供することに全力を注いできた。しかし国内市場の成熟化や、新興国メーカーの台頭などを背景に、製品の力だけでは勝てなくなった。(電力会社や鉄道会社といった)顧客も新たなビジネスモデルを探している」
「顧客と日立が上下の縦の関係ではなく、併走する形で社会に製品・サービスを提供していくことが必要。そういったビジネスを展開する上で人材は一番のカギだ」
-人材のソリューション力とは。
「大きく2つある。国内外の顧客との対話を通じて経営や社会の課題を把握しソリューションの骨格とつくる『顧客協創構築』、そしてその骨格をビジネスとしてデザインし顧客への提案からデリバリーまで一貫して行う『ソリューション構築』だ。これらの能力を持ちグローバルで活躍できる人材を求める」
-顧客と協創する「フロント人材」を海外を中心に増やし、18年度までに13万人(15年度は11万人)に増やす計画です。
「地域としては米、欧州を中心に増やす。フロント人材の中でも前線で顧客と協創してソリューションを作り上げる『コア人材』を確保する。営業、コンサルティング、ビジネスモデル設計、契約、プロジェクトファイナンスといった役割と地域ごとに必要人数を算出し、ヘッドハンティングしたり、会社ごと買収したりする」
-どういった業界からヘッドハンティングしますか。
「商社やコンサル会社が対象になる。自社で製品を持たずにソリューションづくりをやってきた人材が集まっているからだ」
-日本でのフロントコア人材の確保は。
「日本でもヘッドハンティングしているが、そもそも転職市場が小さい。そこで日立社内での研修を充実させる。フロントコア人材を育てるために『フロント強化特別研修』と呼ぶプログラムを実施した」
「商社やコンサルから日立に転職してきた社員を講師役にして、実際のビジネス現場を舞台に行った。40人の生徒を対象に始め、これまでに計約150人に実施した。研修途中の報告会には東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)、北山隆一副社長、西野壽一副社長らも参加し議論に加わった」
-手応えは。
「従来と同じ調子で製品主導の営業を展開してしまう人が出るなど難しさも感じた。しかし全体としては『顧客課題から考える』意識への転換は進んだと感じる。また攻める相手が重要だという気づきもあった。例えば日立が電力会社や鉄道会社と一緒に街づくり事業の展開を目指す場合、(土地などの)オーナーである自治体を攻めて巻き込む形で課題を探るといったことが必要になる」
-意識変革を日立全体に広げる必要があります。
「重要テーマだ。東原社長を始め各事業部門トップが各拠点でミーティングを開いている。ただ1回30分ぐらい話したぐらいでは伝えきれない。私も40人程度を対象としたミーティングを重ね、計約1100人に説明した」
「しかし日立が目指す『社会イノベーション』を自分の言葉で説明できる人は、正直まだ少ない。とはいえ意識は必ず変えられる。1回2時間ぐらいたっぷり時間をとって、しつこく伝える」
-日立は08年度に国内製造業で過去最大の7873億円の当期純損失に転落しました。その時は全社員が危機感を共有し、乗り切りました。今は業績堅調で、変わろうという意識は薄いのでは。
「日立の稼ぐ力は全然大したことない。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスと比べキャッシュも足りない。相応の投資ができないとインフラビジネスでは競争力を維持できない。社会イノベーション事業のグローバル展開により稼ぐ力を高め、投資を継続して〝上がる〟か、今のままの状態で〝下がる〟か-。日立は大転換点にいる」
「10-20年後を考えてビジネスを変えていかないと日立という会社はなくなるかもしれない。危機感をバネにしないといけない。『7873億円の赤字を思い出して』と言うと皆、ビクッとする」
(聞き手=後藤信之)
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-今後、求める人材像は。
「顧客やパートナーと一緒に課題を発掘し、解決策を提供できるソリューション力に長けた人材が必要になる。これまでの日立は良い製品を提供することに全力を注いできた。しかし国内市場の成熟化や、新興国メーカーの台頭などを背景に、製品の力だけでは勝てなくなった。(電力会社や鉄道会社といった)顧客も新たなビジネスモデルを探している」
「顧客と日立が上下の縦の関係ではなく、併走する形で社会に製品・サービスを提供していくことが必要。そういったビジネスを展開する上で人材は一番のカギだ」
-人材のソリューション力とは。
「大きく2つある。国内外の顧客との対話を通じて経営や社会の課題を把握しソリューションの骨格とつくる『顧客協創構築』、そしてその骨格をビジネスとしてデザインし顧客への提案からデリバリーまで一貫して行う『ソリューション構築』だ。これらの能力を持ちグローバルで活躍できる人材を求める」
フロント強化特別研修に150人
-顧客と協創する「フロント人材」を海外を中心に増やし、18年度までに13万人(15年度は11万人)に増やす計画です。
「地域としては米、欧州を中心に増やす。フロント人材の中でも前線で顧客と協創してソリューションを作り上げる『コア人材』を確保する。営業、コンサルティング、ビジネスモデル設計、契約、プロジェクトファイナンスといった役割と地域ごとに必要人数を算出し、ヘッドハンティングしたり、会社ごと買収したりする」
-どういった業界からヘッドハンティングしますか。
「商社やコンサル会社が対象になる。自社で製品を持たずにソリューションづくりをやってきた人材が集まっているからだ」
-日本でのフロントコア人材の確保は。
「日本でもヘッドハンティングしているが、そもそも転職市場が小さい。そこで日立社内での研修を充実させる。フロントコア人材を育てるために『フロント強化特別研修』と呼ぶプログラムを実施した」
「商社やコンサルから日立に転職してきた社員を講師役にして、実際のビジネス現場を舞台に行った。40人の生徒を対象に始め、これまでに計約150人に実施した。研修途中の報告会には東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)、北山隆一副社長、西野壽一副社長らも参加し議論に加わった」
-手応えは。
「従来と同じ調子で製品主導の営業を展開してしまう人が出るなど難しさも感じた。しかし全体としては『顧客課題から考える』意識への転換は進んだと感じる。また攻める相手が重要だという気づきもあった。例えば日立が電力会社や鉄道会社と一緒に街づくり事業の展開を目指す場合、(土地などの)オーナーである自治体を攻めて巻き込む形で課題を探るといったことが必要になる」
日立という会社はなくなるかもしれない
-意識変革を日立全体に広げる必要があります。
「重要テーマだ。東原社長を始め各事業部門トップが各拠点でミーティングを開いている。ただ1回30分ぐらい話したぐらいでは伝えきれない。私も40人程度を対象としたミーティングを重ね、計約1100人に説明した」
「しかし日立が目指す『社会イノベーション』を自分の言葉で説明できる人は、正直まだ少ない。とはいえ意識は必ず変えられる。1回2時間ぐらいたっぷり時間をとって、しつこく伝える」
-日立は08年度に国内製造業で過去最大の7873億円の当期純損失に転落しました。その時は全社員が危機感を共有し、乗り切りました。今は業績堅調で、変わろうという意識は薄いのでは。
「日立の稼ぐ力は全然大したことない。米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスと比べキャッシュも足りない。相応の投資ができないとインフラビジネスでは競争力を維持できない。社会イノベーション事業のグローバル展開により稼ぐ力を高め、投資を継続して〝上がる〟か、今のままの状態で〝下がる〟か-。日立は大転換点にいる」
「10-20年後を考えてビジネスを変えていかないと日立という会社はなくなるかもしれない。危機感をバネにしないといけない。『7873億円の赤字を思い出して』と言うと皆、ビクッとする」
(聞き手=後藤信之)
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