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中国で苦戦する日系小売り。撤退か我慢か

総合スーパーの売り場が硬直化、消費の成熟化にどう対応する?
中国で苦戦する日系小売り。撤退か我慢か

ユニー・ファミマHDは中国の総合スーパー事業から2016年内に撤退する(アピタ上海金虹橋店)

 中国で日系の総合スーパーマーケット(GMS)が、苦戦を強いられている。ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)は2016年内の撤退を決め、セブン&アイ・ホールディングス(HD)も北京のGMSについて「撤退も含め、事業の清算を考えている」(井阪隆一社長)としている。一方、セブン&アイHDは内陸部の四川省にある成都では、7店目となるGMSを17年に出店するなど好調だ。成長途上の中国市場を取り込むため、日系各社の試行錯誤が続く。

 「友人が閉店といううわさで大騒ぎしています。本当ですか」。5月上旬、スーパー「アピタ上海金虹橋店」の掲示板には、店舗存続を心配する来店者からの質問がいくつも貼られていた。同店はユニーグループ・ホールディングス(現ユニー・ファミマHD)傘下でGMSを運営するユニー(愛知県稲沢市)が上海に現地法人を設立し、14年に開いた。

 しかし、赤字が続いており、15年12月期の当期損益は13億円の赤字(14年同期は11億円の赤字)だった。佐古則男ユニー社長は「スーパーは好調だがテナントが入らず、収益モデルがぐらついた」としていた。

 ユニー・ファミマHDは香港の投資会社に、現地法人の株を売却する。ライセンス契約を結んで「アピタ」の屋号を残し、営業は継続される見込みだ。

 セブン&アイ・HDは14年3月末時点で、北京でGMSのイトーヨーカドー9店舗を展開していた。だが、今月1店舗を閉鎖し、現在は2店舗のみだ。多様化する消費者ニーズをつかめず、赤字が続いていた。成都では、高級感を持たせた接客や品ぞろえが好評で、利益が出ている。

 百貨店も中国への展開を進めている。三越伊勢丹ホールディングス(HD)は天津、成都、上海で計5店舗を運営している。J・フロントリテイリングは現地企業と事業提携し、品ぞろえなどを支援した「上海新世界大丸百貨」が15年に開業した。高島屋は12年に上海に進出。赤字が続いているものの、木本茂社長は「マーケットのポテンシャルはある」と先を見据える。

 ニトリホールディングス(HD)は中国で、22年に100店舗を設けるという目標を掲げ、展開スピードを加速する方針だ。良品計画も16年9月―17年2月期に、30店舗の純増を見込む。

 中国の消費財販売額を示す社会消費品小売総額は、毎年1割超の伸びを示しており、消費意欲は旺盛だ。一方で、電子商取引(EC)との競争も厳しくなっており、消費者ニーズの把握がより重要になっている。
(文=江上佑美子)
日刊工業新聞2016年12月26日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
中国では総合スーパーでも、百貨店と同じようないわゆる場所貸し的な特定のメーカーが売り場を押さえる売り方が一般的だったような気がします。今は改革されたのかはどうかはわかりませんが、そうした商慣習が改革されない限り、総合スーパーなどは売り場が硬直化して、総合スーパーの思惑通りに売り場構築ができません。成都など競争が激しくない地区ではそれでも売れるからいいかもしれませんが、北京のように消費が成熟、競争が激化しているところは難しいかもしれません。

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