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【連載】知っておきたい太陽電池のこと(第2回)「シャープが住宅にこだわる理由」

(中)変換効率に厳しい住宅市場だからこそ、プレミアム化できれば価格競争を回避できる
【連載】知っておきたい太陽電池のこと(第2回)「シャープが住宅にこだわる理由」

プレミアム化を狙うシャープ

 連載の第1回を「シャープが住宅にこだわる理由」というタイトルで始めました(中)の今回は太陽電池事業からの撤退話まで出たシャープが、それでも住宅用太陽光パネルにこだわる二つの目の理由を解説しようと思います。

 パナソニックは18日に開いた太陽電池事業戦略説明会で、住宅用太陽光パネルに集中した結果として事業が好調と説明していました。メガソーラー向けの販売比率が高いシャープは海外メーカーとの価格競争に巻き込まれ、赤字と思われます。シャープは起死回生のために住宅用にこだわります。住宅用はなぜ、シャープにもパナソニックにも魅力的なのか。それでは二つの理由です。
 
 (理由2) 性能がモノのいうから

 青森県六ケ所村で日本最大のメガソーラーが完成間近です。出力(発電能力)は14万8000キロワット(148メガワット)、使われた太陽光パネルは51万枚です。どれだけ大量か、縦に並べてみるとわかります。長さは800キロメートルを超え、青森から大阪までの直線距離に匹敵します。1000キロワット(1メガワット)のメガソーラーでもパネルは4000枚(1枚250ワットとして)使われます。

 住宅用太陽光発電システムの平均出力は4・5キロワット。パネル枚数は18枚です(1枚250ワット)。

 メガソーラーは設置枚数が多いだけにパネルにはコストパフォーマンスが求められます(ただし六ケ所村の巨大メガソーラーのパネルは高価なパネルが使われており、コスト重視は当てはまりません)。

 屋根はパネルを取り付けるスペースが限られため、枚数は増やせません。変換効率がポイントとなります。

 変換効率とは、太陽光からどれだけの電力を生み出せるかを示す指標です。効率が高ければ高いほど同じパネルサイズでも発電量が多くなります。発電量が増えるとそれだけ余剰電力の売電量も増大し、家庭の収入が増えます。設置面積当たりでしっかり稼ぎたいなら変換効率重視です。

 太陽電池はコモディティー化したといわれています。確かに日本製も中国製も、変換効率に大差はありません。ただし、長い目でみるとわずかな差が大きな差となります。前回説明しましたが余剰電力の買い取り期間は10年です。数%の差、わずかな発電量の差でもいずれ大きさ差となります。長期で稼ぎたいと思う場合も効率重視です。

 変換効率を決めるは技術力です。太陽光を受けて発生した電子をシリコン内で消滅させないために目に見えない障害物を取り除くなど、ナノテクロジーの領域での改良の積み重ねで効率が高まります。
 
 住宅用がコスト重視ではない証拠にメガソーラーを中心とする産業用と住宅用のそれぞれの導入コストの比較があります。1キロワットのシステム構築に必要なコストは産業用が29万円、住宅用が同36万-37万円と明らかな差があります(※1)。

 また住宅用パネルには「プレミアム商品」が存在します。変換効率が他社製よりも高く、その価値が認められ価格も高いパネルです。しかもプレミアムの称号を与えられたのはパナソニックと東芝(米サンパワーから調達)の2社だけです。
 2社ともセル変換効率は24%台です(※3)。他社は20%前後に横一列に並んでいる状況なので、わずか4%の差でも2社が頭一つ飛び抜けています。
 パナソニックはその差が市場から認められ、価格競争を避けて利益を出しています。引き合いも多いので生産能力を引き上げると18日発表しました。投資額は95億円です。
 シャープが狙うのはプレミアムゾーンです。変換効率、つまり技術力で差別化でき、価格競争にも巻き込まれないからです。
 (「下」は5月31日公開予定)

※1 経済産業省の調達価格等算定委員会の資料から。設置費用から出力1キロワット当たりのコストを試算した数値。住宅用太陽光発電システムは1キロワット36・4万円(東京、中部、関西の各電力管内)が試算値なので、4キロワットのシステムを屋根に設置しようと思うと36・4×4=145・6万円。
 太陽光発電システムを設置しようと検討する方には145万円が目安となります。この価格が投資回収できるかどうかの基準と考えることができます。

 ※2 セル変換効率とモジュール変換効率があります。セルとは一辺16センチメートルほどの四角い板です。モジュールとはセルを組み合わせたパネルのことをいいます。屋根に設置するのはパネルの状態ですので消費者にとって重要なのはモジュール変換効率の数値です。
 しかし太陽電池業界は標準サイズがあってないようなものです。パナソニックと米サンパワーが同じセルサイズ、他の大半のメーカーは一回り大きいセルサイズを採用しています。パナソニック、サンパワーは同じサイズのパネルを発売していないのでモジュール変換効率では比較ができません。パネルサイズは日本メーカーか小さめ、海外メーカーは大きめです。パネル、セルともサイズが小さいほど変換効率が高く出ます。
 セルをたくさん並べるとパネルとしての出力(発電能力)は大きくなりますが、セルがたくさん使われた分、サイズも大きくなって省スペース化ができません。
ニュースイッチオリジナル
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
計算してみて驚きました。1つのメガソーラーに使われたパネルを並べると800キロメートル以上。

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