あなたの記憶力データを認知症治療に役立てませんか
健常者4000人以上が登録するITシステムの可能性
認知症の早期対処へ向けては、治療薬や診断技術の開発以外にも多様な取り組みが進みつつある。一例が、ITの活用だ。健常者のデータを分析して将来の臨床研究に役立てようとする試みや、認知症になってしまった患者の情報を医療関係者間で共有して的確な治療や介護を模索する仕組みが出てきている。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、認知症予防の研究を目的とした情報システム「IROOP(アイループ)」を運用している。利用者は自身の記憶力の状態を確認できる認知機能検査を無料で定期的に受けられ、経時的な変化も把握可能だ。
参加登録できるのは日本在住の40歳以上の健常者で、半年ごとに生活様式や病歴などについてのアンケートに回答する。これに加えて、電話で簡易な記憶力チェックを受ける。
認知症の発症予防に関する臨床研究や新薬の治験についての案内を得られるといった利点もある。NCNPは記憶力の経過に関連する因子をアンケート情報から解き明かし、認知症の発症予防に役立てることを目指す。
7月に登録受け付けを開始し、11月中旬時点で登録者は約4400人に達した。初年度目標は8000人で、悪い進捗(しんちょく)ではない。
だがNCNP脳病態統合イメージングセンターの松田博史センター長は、「6カ月ごとに定期的なチェックをするので、どれだけリピーターが出るかが重要」と気を引き締める。
松田センター長によると、登録者4000―5000人当たりで軽度認知障害(MCI)相当の人は100人程度という。研究の進展には母数を増やす必要があり、各地の国立病院や自治体経由で地道に周知していく考え。
電話での簡易記憶検査についても受検者数の増加に向け、2017年1月からは従来の平日以外に土曜日もコールセンターを稼働する計画だ。
企業も認知症の課題解決に向けたIT活用を進める。エーザイは16年7月、NTT東日本やNTTアイティ(横浜市中区)と提携し、多職種連携サービス「ひかりワンチームSP」の提供を始めた。
医師や訪問看護師、ケアマネジャーといった関係者が、患者の介護や服薬などの状態を携帯端末を使って共有できる仕組みだ。これにより、患者のフォローを的確に行える効果が期待でき、試験運用では要介護度が改善した例も出ている。
現在は比較的症状が重い患者のケアで使われている事例が多いもようで、軽症患者やMCIの人に同様の枠組みがどれほど有効かは不透明な面もある。
だがエーザイはこうした人の病態進行を抑える新薬の研究開発も進めてきており、今のうちに情報インフラを確立しておけば将来は相乗効果を発揮できる可能性もありそうだ。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、認知症予防の研究を目的とした情報システム「IROOP(アイループ)」を運用している。利用者は自身の記憶力の状態を確認できる認知機能検査を無料で定期的に受けられ、経時的な変化も把握可能だ。
参加登録できるのは日本在住の40歳以上の健常者で、半年ごとに生活様式や病歴などについてのアンケートに回答する。これに加えて、電話で簡易な記憶力チェックを受ける。
認知症の発症予防に関する臨床研究や新薬の治験についての案内を得られるといった利点もある。NCNPは記憶力の経過に関連する因子をアンケート情報から解き明かし、認知症の発症予防に役立てることを目指す。
7月に登録受け付けを開始し、11月中旬時点で登録者は約4400人に達した。初年度目標は8000人で、悪い進捗(しんちょく)ではない。
だがNCNP脳病態統合イメージングセンターの松田博史センター長は、「6カ月ごとに定期的なチェックをするので、どれだけリピーターが出るかが重要」と気を引き締める。
松田センター長によると、登録者4000―5000人当たりで軽度認知障害(MCI)相当の人は100人程度という。研究の進展には母数を増やす必要があり、各地の国立病院や自治体経由で地道に周知していく考え。
電話での簡易記憶検査についても受検者数の増加に向け、2017年1月からは従来の平日以外に土曜日もコールセンターを稼働する計画だ。
企業も認知症の課題解決に向けたIT活用を進める。エーザイは16年7月、NTT東日本やNTTアイティ(横浜市中区)と提携し、多職種連携サービス「ひかりワンチームSP」の提供を始めた。
医師や訪問看護師、ケアマネジャーといった関係者が、患者の介護や服薬などの状態を携帯端末を使って共有できる仕組みだ。これにより、患者のフォローを的確に行える効果が期待でき、試験運用では要介護度が改善した例も出ている。
現在は比較的症状が重い患者のケアで使われている事例が多いもようで、軽症患者やMCIの人に同様の枠組みがどれほど有効かは不透明な面もある。
だがエーザイはこうした人の病態進行を抑える新薬の研究開発も進めてきており、今のうちに情報インフラを確立しておけば将来は相乗効果を発揮できる可能性もありそうだ。
日刊工業新聞2016年12月22日