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イネが栄養素のリンを種子に優先輸送する仕組み解明

茎と葉の接点の「節」の部分にリンの行き先を制御するたんぱく質が存在
 岡山大学資源植物科学研究所の山地直樹准教授と馬建鋒教授らは、イネの種子に栄養素のリンが蓄積する仕組みを解明した。茎と葉の接点である「節」の部分にリンの輸送を制御するたんぱく質が存在。このたんぱく質の働きにより、根で吸収したリンが葉ではなく種子へ優先的に送られることが分かった。イネの品種改良により、リン酸肥料の使用量を減らせる可能性がある。東京大学などとの共同研究。成果は22日、英科学誌ネイチャー電子版に掲載される。

 研究グループはこのたんぱく質を「SPDT」と命名した。SPDTを作る遺伝子を破壊したイネを水田で栽培すると、コメに蓄積するリンの濃度が通常よりも約20%減り、稲わらに残留するリンの量が約20%増えた。コメの収穫量や種子の発芽、生育には、ほとんど影響しなかった。

 馬教授は、「品種改良で稲わらに残るリンの量を多くできれば、その稲わらを水田に還元することで、リン酸肥料を減らせる」と期待する。

 植物の種子に蓄積するリンの大部分は、「フィチン酸」と呼ばれる化合物として存在する。ヒトを含めてほとんどの動物はフィチン酸を消化・吸収できない。そのため、下水などを通じてリンが環境中に放出され、河川や湖沼の富栄養化の一因となっている。

 研究チームは今後、他のイネ科作物も検証。「家畜の飼料となるトウモロコシやオオムギなどでSPDTと同様の仕組みが見つかれば、ヒトだけでなく動物由来のリンの放出も抑えられる」と馬教授は指摘する。
日刊工業新聞2016年12月22日
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 リンは動物の骨の形成などにも関わっており、全ての生物に必須の元素です。ただ、過剰に摂取すると、逆に骨密度の低下を招くこともあるようです。岡山の話からは外れますが、三重県の農業研究所はリンを抑えた食材の開発に取り組んでおり、地元の精米会社などと組んで「低リン米」を商品化しています。 【三重県による「低リン米」商品化のお知らせ】 http://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/2014050196.htm

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