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750億円の追加融資を受けたジャパンディスプレイの運命

本間会長、他社との連携の可能性も否定せず。革新機構の思惑は?
750億円の追加融資を受けたジャパンディスプレイの運命

会見するJDIの本間会長

 ジャパンディスプレイ(JDI)は21日、筆頭株主の産業革新機構から750億円を調達し有機ELパネルの開発を加速すると発表した。JOLED(東京都千代田区)の株式を追加取得し51%に引き上げて連結子会社化し、中大型パネルに適した「印刷方式」と呼ぶ技術を確立する。またスマートフォンなど小型パネル向けの「蒸着方式」の量産化も目指す。

 同日会見した本間充会長兼最高経営責任者(CEO)は「顧客ニーズが多様化しており、有機ELにもしっかり対応できるようにする」と説明した。調達する750億円のうち450億円は印刷方式、残る300億円を蒸着方式の研究開発に投じる。引き続き液晶パネル事業も強化する。

 今後、スマホ分野で有機ELが広がる可能性がある。JDIは18年度に蒸着方式の量産技術を確立したい考え。ただリスク低減のため顧客と提携して事業化を進める。本間会長は「失敗は許されない。慎重に計画立案する」と話した。

 JDIはスマホ向け液晶パネルへの依存度の高さが経営課題の一つ。ノートパソコン向けや車載向けなどを伸ばし、スマホ以外の分野の売上高比率を21年度に54%まで引き上げる計画も示した。

 産業革新機構の谷山浩一郎常務執行役員は「JOLEDが実ビジネスのタイミングに入っており、戦いの素地が整ってきた」と説明。浜辺哲也専務は「勝ち戦をするために追加投資した」と述べる一方、「この追加投資でJDIやディスプレー産業を押し上げたい」とし、最後の資金支援であることを示唆した。
日刊工業新聞2016年12月22日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
会見では追加投資の妥当性や、1社で複数のパネル技術を抱えることによるリソース分散の恐れなどに対する質問が相次いだ。JOLEDや有機ELを軸にした成長戦略は、資金を得るための苦肉の策だったと見られる。今後はそれぞれのバランスをどう取っていくのか、より慎重かつ大胆な投資判断が求められることになる。機構側は規模の戦いとは別の軸の新たなビジネスモデルの創出を強調し、市場環境や事業化の進展度合いによっては、他社との連携の可能性も否定しなかった。今回の成長戦略が画餅になれば、再び再編の議論も巻き起こるかもしれない。

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