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三菱モルガンが投資銀行として存在感を高めている理由

野村が対抗できない海外の情報力、グループ連携かみ合う
三菱モルガンが投資銀行として存在感を高めている理由

大型IPO株の4割を銀行経由で販売した

株式や債券の引き受け、M&A(合併・買収)のアドバイザリー(助言)業務など、投資銀行としての三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)の存在感が高まっている。日本企業が関連するM&Aのアドバイザリー業務では、3年連続でリーグテーブル1位。日本郵政グループ3社やJR九州など大型IPO(新規株式公開)でグローバルコーディネーター(GC)を相次ぎ担当した。大型案件を受注する秘訣(ひけつ)を探った。

M&Aアドバイザー、海外案件で1位


 投資銀行の重要な業務がM&Aアドバイザー。MUMSSは日本関連M&Aで、2013年から15年まで3年連続リーグテーブル1位だった。同社の特徴は海外案件の強さ。例えばリーグテーブル2位の野村証券は国内案件は強いものの、海外案件では6位や7位。MUMSSは海外案件が1位であり、リーグテーブルトップの要因となっている。アドバイザーとして成長する原動力について、MUMSSの中村春雄副社長は「海外の情報力」を挙げる。

 MUMSSは米大手投資銀行、モルガン・スタンレーと三菱UFJ証券ホールディングスの合弁会社で、特に投資銀行部門はモルガン・スタンレー出身者が多い。

 最近では他の外資系証券が日本部門を縮小していることもあり「世界中のCEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)と深いネットワークを持つ証券会社は我々しかない」(中村副社長)状況という。

 もうひとつの強みは「情報管理の徹底」(同)だ。日本企業は上司や関連部署との情報共有を推奨する文化があるが、同社は「直接関与する数人の社員しか知らないこともある」という。大型M&Aは事前に報道が流れるのも珍しくないが、同社がアドバイザリーを手がけたサントリーホールディングスによる米ビームの買収は、公式発表まで情報が漏れなかった。情報管理が徹底された証左だ。

 ただ、大型以外のIPOや債券引き受けなども含めて考えれば、投資銀行の国内トップは野村証券だ。MUMSSは野村に比べ人員が少なく、現在は大型案件に的を絞り活動している。

 野村を追随する戦略について中村副社長は「規模で迫ろうとは考えておらず、人員の増加を急ぐ考えもない」と語る。今後はブランド浸透を進め、対象案件の幅を広げていく方針だ。
       


「証券仲介」で大型IPO受注


 投資銀行として躍進するMUMSS。大口案件を受注する背景にあるのが、同じグループである三菱東京UFJ銀行(BTMU)との連携だ。日本郵政グループ3社やJR九州などの大型IPO(新規株式公開)では「証券仲介」というスキームを使い銀行窓口での株式販売を実施。MUMSSの引受額の約4割を銀行で販売し、大きな実績を上げた。

 証券仲介とは、銀行が株式や投資信託、外国債券、仕組み債などの注文を顧客から預かり、証券会社に媒介するやり方だ。単に系列の証券会社を案内する「紹介」に比べ「銀行員にも金融商品の知識が必要だが、主体的に提案が行える」(BTMUの冨田敏広調査役)メリットがある。

 株式について銀行窓口で販売するケースは少ないが、政府保有株の売却案件など一部のIPO株に限り販売している。官製IPO株は大きく値崩れする可能性が少なく、安定経営の企業が多いため長期保有に適しているためだ。2015年の日本郵政グループ3社のIPOではMUMSSの引受額2870億円のうち1200億円を、16年のJR九州では936億円のうち370億円を銀行経由で販売した。

 証券業界では「銀行の証券販売は、顧客フォローの点で証券会社に劣る」と考える人が多い。確かに多種大量な金融商品の内容を把握し、相場の変動に合わせアドバイスするのは証券会社でないと難しい。ただ、MUMSSとBTMUはこの問題もグループ連携で解決した。現在MUMSSから約600人がBTMUに出向、リテールマネーデスク(RMD)という運用商品販売のエキスパートの中核となり証券販売をリードしている。

 MUMSSの店舗数は62店で、日本の大手証券のうち最も少ない。ただ株式や投資信託の売買手数料などを表す「受入手数料」は、野村ホールディングス(HD)、大和証券グループ本社に次ぐ3位だ。銀行・証券会社の連携の成果と言える。

 MUMSSの臼井均常務執行役員も「グループ連携で顧客の要望に応え、成長していきたい」と展望している。グループ内外の力をフル活用し、投資銀行として成長するMUMSS。次はどんな大型案件を受注するのか、同業他社は固唾(かたず)を飲んで見守っている。
(文=鳥羽田継之)
日刊工業新聞2016年12月20日/21日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
三菱UFJモルガン・スタンレー証券がJR九州のグローバル・コーディネーターを務め、みずほ証券が日本関連M&Aアドバイザー1位となるなど、2016年は銀行系証券の躍進が目立ちました。2017年は旧四大証券である野村証券や大和証券など独立系大手の巻き返しが起こりそう。旧四大証券であり銀行系でもあるSMBC日興証券の動向にも注目です。 (日刊工業新聞経済部・鳥羽田継之)

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