医療機器事業はキヤノンの成長を後押しするのか

東芝メディカル子会社化。映像技術と画像診断融合へ

 買収手続き中だった東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)の海外競争法規制当局の承認手続きが完了し、19日に子会社化したキヤノン。同日の会見でキヤノンの御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者(CEO)は「子会社化で巨大な橋頭堡(ほ)を築ける。今後の成長に大きく前進できる」と語った。

 キヤノンは2016年から始めた新5カ年計画「グローバル優良企業グループ構想」フェーズVで、重要戦略とする「新規事業の強化拡大と将来事業の創出」に向け、ヘルスケア事業を次世代の柱の一つに位置づけている。御手洗会長は「(既存事業の)成長力が鈍ってきた。成長力のある事業に転換していきたい」という。

 買収額は約6655億円。キヤノンの医療機器事業の売上高は1000億円未満と国内では中堅規模だったが、買収により一躍上位メーカーに肩を並べることになる。

 キヤノンは眼底カメラや網膜疾患の診断に使う光干渉断層計(OCT)といった眼科向け診断機器、X線デジタル撮影装置(DR)などが医療機器事業の主力製品。

 先進国で加齢黄斑変性や緑内障など加齢に伴って増加する疾病の患者が増えており、眼底カメラやOCTの需要は伸びている。また眼底は体の中で直接血管を唯一見られるため、眼科以外の疾患の発見・診断にも用途が広がっている。

 一方、東芝メディカルはコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)、超音波画像診断装置が主力。CTは国内首位で、瀧口登志夫社長は「2018年度までに世界シェアも首位を目指す」と宣言する。疾病の早期発見に有用な画像診断機器は世界需要が高まっており、売上高は18年度に5000億円にまで高める計画だ。

 瀧口社長はキヤノンによる買収が決まった後に開かれた新製品発表会の場で「キヤノングループの一員となり、両者の強みを生かしてシナジー(相乗効果)を創出していきたい」と強調。

 現状ではキヤノンと東芝メディカルは事業領域が異なるため相乗効果は未知数だが、医療現場のニーズ探索やマーケティング、医療機関とのネットワーク構築は両社で共同展開できるほか、販路の拡大とラインアップ拡充による提案力の強化も早期に利益をもたらすはずだ。

 将来、両社は技術を融合し、日本発の医療機器の創出を目指す。キヤノンにとってヘルスケア領域は画像の撮影、処理、出力といった得意のイメージング技術を応用展開できる「期待の市場」といえる。

 1941年に国産初のX線間接撮影カメラを投入して以来、カメラ事業で培ったイメージング技術を活用し医療機器を生み出してきた。イメージング技術は画像診断技術と相性が良く、東芝メディカルのCTの進化にとっても欠かせない技術だ。

 「CTは医療被ばく低減が今後も大きなテーマ」(瀧口社長)であり、X線量を減らしながら診断に使える高画質な画像を撮像する技術が求められる。現在は低線量で撮影したデータのノイズを除去して画像を再構成する機能などが実用化されているが、キヤノンのイメージング技術を応用することでさらなる進化が期待できる。

 MRIや超音波画像診断装置でも造影剤を使わない撮影など診断技術を高度化する余地は大きく、一層の事業拡大を追求する。

日刊工業新聞2016年12月20日の記事を加筆・修正

明 豊

明 豊
12月20日
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重複する製品・部門を効率化してコストメリットを出すというものはほとんど無いだろう。「新たな価値を生むということについては多様なことができる」と両者は話すが、そこは一番難しいところ。東芝メディカル側はプライドと自信もあるだろう。キヤノンの御手洗会長がどこまでコミットしていくかが注目点。

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