ヒューマノイドの意義は、人を理解することにつながる
日本はこれから何をすべきか
ロボットというと、ドラえもん、鉄腕アトム等を真っ先に思い浮かべるだろう。アニメにも触発された研究者、開発者は数多い。そう、人型あるいは人に近いロボットであるヒューマノイドロボットはいわば、人間を目指した最高難易度の技術の集合体であるといえるだろう。
歴史をひもとくと、早稲田大学の故加藤一郎先生が人と同じ大きさの「WABOT―1」を73年に開発、発表し、84年に演奏するロボットの「WABOT―2」を開発、発表した。
現在の早稲田大学におけるロボット研究にも通じ、人型ロボットの先駆けとなった。当時、人型が難しかった理由は、二足歩行であった。人間では簡単な動作となるが、意外にも2足でそのバランスを取るということが難しかった。
また、発表当時は、歩くということだけですごいことであり、歩行の仕方はややゆっくりとしたものでもあった。その後、ホンダのP2(96年)、ASIMO(00年)と本格的な二足歩行のヒューマノイドロボットが登場したことにより、ヒューマノイドロボットの開発が産学において活発になっていった。
ヒューマノイドロボットの意義は、人を理解することにもつながる。人と同じような作業環境で意図を汲(く)み、協調して作業するには、人型が理想であることは理解できる。
一方で、技術的難易度がかなり高いという点も指摘できる。二足歩行だけでも相当大変であった。人であれば走ることもスキップもジャンプもできる。さまざまな動作が意図したとおりにできる。ロボットの制御では困難を極める。単純なものを積み重ねて、一つひとつの機能を実現していく必要があるためだ。
また、人と同じ環境で動くためには、目、手、そして、それらの信号、情報を統合して処理していくための頭脳が必要となる。それぞれの機能が人並みになること、あるいは人並み以上になって初めて実現できるという点が指摘できる。
そのため、どのような場所で利用できるかといった議論がヒューマノイドではなかなかできないでいた。しかし、産業技術総合研究所のHRP―4というように、開発を重ねることでできることが格段に増えていくことも事実である。
さらに言えば、日本がロボットで世界一の評価を得ているという証は、これらの先駆的な研究開発が世界をリードしていたからでもある。人と同じ環境を移動できるようにはなってきた。今後は動作、判断をより現実的なものとしたり、インタラクションをしたりするためのAI技術の搭載であろう。人とのインタラクションは、ロボットの永遠の課題である。
(文=三治信一朗・NTTデータ経営研究所事業戦略コンサルティングユニット産業戦略グループ長アソシエイトパートナー)
ロボットが研究のステージにあった時代、ヒューマノイド研究は多くの人を惹きつけました。アニメを見て憧れた子どもも、若手の技術者も、ヒューマノイドという一つの目標を共有できました。ヒューマノイドが活躍している社会は想像しやすく、また極めて高度な技術が必要なため研究開発すべきテーマが膨大にありました。
ヒューマノイド研究の予算から、たくさんの要素技術が生まれ、家電や産業用機械にも貢献しました。機械だけでなく電気や情報、人間科学など、いろんな人材が参入して、一つの学問領域ができたと思います。日本は研究の先端を走っていると思います。
昨今のAIの社会的影響の議論も、ヒューマノイド研究の時に技術側に足を踏み入れた文系の先生の知見が貢献しています。現在、汎用AIの素晴らしさを語る人は、汎用AIと特化型プログラムの比較に、ヒューマノイド(汎用ロボット)と用途特化型機械の比較と同じストーリーを使っていて、AIはハードの制約がないので、よりインパクトが大きいと付け加えます。
歴史をひもとくと、早稲田大学の故加藤一郎先生が人と同じ大きさの「WABOT―1」を73年に開発、発表し、84年に演奏するロボットの「WABOT―2」を開発、発表した。
現在の早稲田大学におけるロボット研究にも通じ、人型ロボットの先駆けとなった。当時、人型が難しかった理由は、二足歩行であった。人間では簡単な動作となるが、意外にも2足でそのバランスを取るということが難しかった。
また、発表当時は、歩くということだけですごいことであり、歩行の仕方はややゆっくりとしたものでもあった。その後、ホンダのP2(96年)、ASIMO(00年)と本格的な二足歩行のヒューマノイドロボットが登場したことにより、ヒューマノイドロボットの開発が産学において活発になっていった。
ヒューマノイドロボットの意義は、人を理解することにもつながる。人と同じような作業環境で意図を汲(く)み、協調して作業するには、人型が理想であることは理解できる。
一方で、技術的難易度がかなり高いという点も指摘できる。二足歩行だけでも相当大変であった。人であれば走ることもスキップもジャンプもできる。さまざまな動作が意図したとおりにできる。ロボットの制御では困難を極める。単純なものを積み重ねて、一つひとつの機能を実現していく必要があるためだ。
また、人と同じ環境で動くためには、目、手、そして、それらの信号、情報を統合して処理していくための頭脳が必要となる。それぞれの機能が人並みになること、あるいは人並み以上になって初めて実現できるという点が指摘できる。
そのため、どのような場所で利用できるかといった議論がヒューマノイドではなかなかできないでいた。しかし、産業技術総合研究所のHRP―4というように、開発を重ねることでできることが格段に増えていくことも事実である。
さらに言えば、日本がロボットで世界一の評価を得ているという証は、これらの先駆的な研究開発が世界をリードしていたからでもある。人と同じ環境を移動できるようにはなってきた。今後は動作、判断をより現実的なものとしたり、インタラクションをしたりするためのAI技術の搭載であろう。人とのインタラクションは、ロボットの永遠の課題である。
(文=三治信一朗・NTTデータ経営研究所事業戦略コンサルティングユニット産業戦略グループ長アソシエイトパートナー)
ファシリテーターの見方
ロボットが研究のステージにあった時代、ヒューマノイド研究は多くの人を惹きつけました。アニメを見て憧れた子どもも、若手の技術者も、ヒューマノイドという一つの目標を共有できました。ヒューマノイドが活躍している社会は想像しやすく、また極めて高度な技術が必要なため研究開発すべきテーマが膨大にありました。
ヒューマノイド研究の予算から、たくさんの要素技術が生まれ、家電や産業用機械にも貢献しました。機械だけでなく電気や情報、人間科学など、いろんな人材が参入して、一つの学問領域ができたと思います。日本は研究の先端を走っていると思います。
昨今のAIの社会的影響の議論も、ヒューマノイド研究の時に技術側に足を踏み入れた文系の先生の知見が貢献しています。現在、汎用AIの素晴らしさを語る人は、汎用AIと特化型プログラムの比較に、ヒューマノイド(汎用ロボット)と用途特化型機械の比較と同じストーリーを使っていて、AIはハードの制約がないので、よりインパクトが大きいと付け加えます。
日刊工業新聞2016年12月16日