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サーモスタットという成熟技術に3000億円の価値がつくのはなぜ?
神田昌典氏に聞く、「あなたの会社が最速で変わる戦略」
―企業が二つの強みを組み合わせて一つのコンセプトを練り上げる“BABYMETAL戦略”を提唱しています。
「ネストサーモスタットというメーカーがグーグルに3000億円で買収され、IoT(モノのインターネット)の走りと言われている。サーモスタットなどという成熟技術にどうして3000億円の価値が付くのかといったら、単純にそれは組み合わせ。何と何を組み合わせたらニーズがあるのかを突き詰め、初めて価値が宿る。単体の技術については、必ずしも最先端技術が要るわけではない」
「受注型の企業はオリジナルの商品を作りたがるが、自社の強みを生かして商品化するのは難しい。その一番多い理由は調査研究に行く前の段階で、自社内に部署間の壁があり、技術シーズ(種)があるにもかかわらず、市場ニーズにまで昇華できないことだ」
―社内の壁を乗り越えるには。
「結論から言えば、40代が活躍できる場を作れるかどうか。現に40代の人たちは社外に出て、同じような価値観を持つ人同士でつながり始めている。例としてパナソニックから始まったプロジェクトがあり、若手のマネージャクラスによる横串を刺そうという取り組みが外に展開し始めている。さらには川崎市でのイノベーションの勉強会にも発展した」
「社内で本当に新しい変革を起こせる人というのは30―40代後半まで。50代以降は彼らと(経営層との)橋渡し役であるべきだ。僕は今52歳で、高度成長期を見てきたわけだが、これからのデジタル時代とは全く様相が異なる。IoTや3Dプリンターといった新しい技術が出てくる中で、50代が邪魔になってはいけない。変革を起こせる人たちが会社の資金や経営資源を活用できれば、日本の会社は再生していけるのではないか」
―二つ目の強みを見つけるには。
「基本的には社内に残ったものをやるしかない。残ったシーズのうち、顧客が自社に何を求めているのかを調べてみた時に、水と油のようなものでも『アイドル×ヘビーメタル』のように、ユニークな市場を生むことができる。本書で紹介したビジネス・ライフデザインという会社はインテリアデザインの会社だったが、障がい者の就労支援を始めたことで、障がい者がデジタルを活用するという社会性が評価されるようになった」
―米国やドイツなどで起きた産業変革のうねりに日本企業はどう対峙(たいじ)すればよいでしょうか。
「例えば『マーケティングオートメーション』という仕組みを考えついたのは米国人だが、それを現実にきめ細かく、顧客ニーズに沿った形で運営できる教育を施せるのは日本人だけかも知れない」
「(米国型の)完璧なモデルは社会的な環境が変わった時が、一番もろい。おそらくIoTの分野もそうで、全ての環境に慣らされた時に想定外の問題が起こってくる。そういう時に本当に顧客優先視点に立って現場で物事を判断し、『お客さまにとって価値とは何か』を考えられる感性を持った人間を教育できるのが、日本の強みではないだろうか」
(聞き手=宮里秀司)
【略歴】
神田昌典(かんだ・まさのり)ALMACREATIONS代表取締役。87年(昭62)上智大外国語卒。同大4年次から外務省に勤務。ニューヨーク大経済学修士、ペンシルべニア大ウォートンスクール経営学修士。戦略コンサルティング会社、米国家電メーカーの日本代表を経て独立。経営コンサルタント、作家。埼玉県出身、52歳。>
※『あなたの会社が最速で変わる7つの戦略』(フォレスト出版)
「ネストサーモスタットというメーカーがグーグルに3000億円で買収され、IoT(モノのインターネット)の走りと言われている。サーモスタットなどという成熟技術にどうして3000億円の価値が付くのかといったら、単純にそれは組み合わせ。何と何を組み合わせたらニーズがあるのかを突き詰め、初めて価値が宿る。単体の技術については、必ずしも最先端技術が要るわけではない」
「受注型の企業はオリジナルの商品を作りたがるが、自社の強みを生かして商品化するのは難しい。その一番多い理由は調査研究に行く前の段階で、自社内に部署間の壁があり、技術シーズ(種)があるにもかかわらず、市場ニーズにまで昇華できないことだ」
―社内の壁を乗り越えるには。
「結論から言えば、40代が活躍できる場を作れるかどうか。現に40代の人たちは社外に出て、同じような価値観を持つ人同士でつながり始めている。例としてパナソニックから始まったプロジェクトがあり、若手のマネージャクラスによる横串を刺そうという取り組みが外に展開し始めている。さらには川崎市でのイノベーションの勉強会にも発展した」
「社内で本当に新しい変革を起こせる人というのは30―40代後半まで。50代以降は彼らと(経営層との)橋渡し役であるべきだ。僕は今52歳で、高度成長期を見てきたわけだが、これからのデジタル時代とは全く様相が異なる。IoTや3Dプリンターといった新しい技術が出てくる中で、50代が邪魔になってはいけない。変革を起こせる人たちが会社の資金や経営資源を活用できれば、日本の会社は再生していけるのではないか」
―二つ目の強みを見つけるには。
「基本的には社内に残ったものをやるしかない。残ったシーズのうち、顧客が自社に何を求めているのかを調べてみた時に、水と油のようなものでも『アイドル×ヘビーメタル』のように、ユニークな市場を生むことができる。本書で紹介したビジネス・ライフデザインという会社はインテリアデザインの会社だったが、障がい者の就労支援を始めたことで、障がい者がデジタルを活用するという社会性が評価されるようになった」
―米国やドイツなどで起きた産業変革のうねりに日本企業はどう対峙(たいじ)すればよいでしょうか。
「例えば『マーケティングオートメーション』という仕組みを考えついたのは米国人だが、それを現実にきめ細かく、顧客ニーズに沿った形で運営できる教育を施せるのは日本人だけかも知れない」
「(米国型の)完璧なモデルは社会的な環境が変わった時が、一番もろい。おそらくIoTの分野もそうで、全ての環境に慣らされた時に想定外の問題が起こってくる。そういう時に本当に顧客優先視点に立って現場で物事を判断し、『お客さまにとって価値とは何か』を考えられる感性を持った人間を教育できるのが、日本の強みではないだろうか」
(聞き手=宮里秀司)
神田昌典(かんだ・まさのり)ALMACREATIONS代表取締役。87年(昭62)上智大外国語卒。同大4年次から外務省に勤務。ニューヨーク大経済学修士、ペンシルべニア大ウォートンスクール経営学修士。戦略コンサルティング会社、米国家電メーカーの日本代表を経て独立。経営コンサルタント、作家。埼玉県出身、52歳。>
※『あなたの会社が最速で変わる7つの戦略』(フォレスト出版)
日刊工業新聞2016年12月19日「著者登場」