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スズキ初の本格HV「ソリオ」、コンパクト背高ワゴン市場で頭一つ抜け出せるか

随所にみえるこだわりと割り切り。「らしく」仕上がる
**4輪商品第1部アシスタントCE・名古屋義直氏
 電気自動車(EV)走行もできる本格的なハイブリッド車(HV)はスズキ初で、技術陣の大きな目標だった。ソリオはコンパクトなボディーながら広い室内空間を備えたパッケージが人気。現行車と同等の室内空間を残すことが絶対条件で、いかにHVシステムを小型化するかに知恵を絞った。

 HVシステムは排気量1200ccエンジンに手動変速機(MT)ベースの「オートギヤシフト」(AGS)と駆動用モーター(MGU)を組み合わせたパラレル方式。AGSは無段変速機(CVT)より小型で伝達効率がいい。システムの小型化だけでなく、変速時にMGUの駆動力で補うことで滑らかな変速とキビキビとした加速を実現できた。

 スズキ独自のHVシステムだが、産みの苦しみを味わった。MGUが新たに加わったことでエンジン、AGSとの協調制御が格段に難しくなった。違和感のないフィーリングに仕上げるのに約2年を要した。相良工場(静岡県牧之原市)にあるテストコースで何度も走行を繰り返し、「もう遅いから帰ってこい」というまで開発者が帰って来なかった。

 室内空間を確保するため、100ボルトの高電圧リチウムイオン電池は荷室下に格納した。MGUはデンソー製、高電圧リチウムイオン電池とインバーターを内蔵したパワーパックは日立オートモティブシステムズ製を採用。燃費は当社小型車で最高の1リットル当たり32キロメートルを達成した。

 ソリオは先行発売した、モーターをエンジンの補助に使うマイルドHVと合わせ2種類のHVを設定し、ユーザーの選択肢を広げた。専門の研修を受けた整備士「ハイブリッドアドバイザー」を全国の店舗に置くなどサービス体制も整えた。
名古屋氏

【ソリオ ハイブリッドSZ】
全長×全幅×全高=3710×1625×1745㎜
車両重量=990㎏
乗車定員=5人
エンジン=水冷直列4気筒「K12C」型
総排気量=1.242ℓ
モーター=交流同期電動機「PB05A」
最高出力=エンジン91馬力 モーター13.6馬力
変速機=5速オートギヤシフト
JC08モード燃費=1ℓ当たり32.0㎞
価格=206万2800円(消費税込み)
日刊工業新聞2016年12月13日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
本格HVは後発だが、小さい車にHVシステムを搭載した、スズキらしいこだわりと割り切りのHVに仕上がった。CVTでなくAGSを選択し、システムの小型化と加速感を両立した制御技術は技術陣の汗の結晶だ。トヨタ自動車グループが販売力を結集する「ルーミー/タンク」などの攻勢を食い止められるか。ソリオの独壇場だったコンパクト背高ワゴンの市場争いは一気に激しさを増しそうだ。 (日刊工業新聞浜松支局・田中弥生)

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