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「NSX」の国内受注、早くも初年度目標の2倍に。人気の源泉は?

日米の文化の違いをプラスに変える
「NSX」の国内受注、早くも初年度目標の2倍に。人気の源泉は?

NSXとホンダの八郷社長

 ホンダは2ドアスポーツカー「NSX」の日本における受注台数が約200台に達した。初年度の国内販売目標台数の2倍となった。26年ぶりにフルモデルチェンジしたNSXは、8月25日に受注を開始。米オハイオ州の専用工場で生産し、2017年2月27日に発売する。

 NSXの価格は税込み2370万円。同社によると、2000万円以上の2ドアスポーツカーの年間販売台数は400台程度で、道下陽介日本本部営業企画部商品ブランド室主任は「(NSXは)かなりのシェアを占めている」と強調している。

開発責任者=ホンダR&Dアメリカズ・エグゼクティブエンジニア テッド・クラウス氏

 日米合同チームで開発した。問題の解決にどうアプローチするかで文化的な違いがあるから、いつかは衝突するのではという感じはあった。でもマイナスではない。違いがあるからこそ議論していてわくわくした。米国だけのチームだったらハイブリッド型のパワートレーンは思いつかなかったかもしれない。逆に日本だけでは、複合素材で構成する骨格は実現しなかったかもしれない。合同チームだからこそ総合的に性能を高められた。

 三つのモーターを搭載したハイブリッドシステムは、応答性が高く意のままのハンドリングを実現している。業界初となるアルミ接合部品などを採用した骨格は、コンパクトなサイズを維持したまま軽量で高い剛性と衝突安全性を持つボディーを実現した。

 開発中の2012年、エンジンを当初計画の横置きから縦置きにするという抜本的な変更をした。不況のあおりで消費者の嗜好(しこう)が変わった。性能への要求も変わった。偉大なものができなければプロジェクトは継続しないというのが当初からの決まりだった。馬力を計画より100以上上げつつ安定性を保ったり、外装も再デザインしたりした。発売は遅れたが、望みの性能を追求した。

 初代NSXとは1990年のデトロイトショーで出会い、機能的な美しさに魅了された。スポーツカーはこうあるべきだというホンダの主張を感じた。その9カ月後に米国のホンダに入社した。以降、動的性能とハンドリングの視点から車開発に携わり、ホンダのモノづくりの思想を学んだ。

 その学びは新型NSXの開発責任者に任命されて開発の方向性を定めるのに大いに役立った。「人を中心としたスーパースポーツ」という初代NSXのコンセプトを継承しつつ、最先端の技術を盛り込んで、新時代のスーパースポーツを体験できる仕上がりにできた。
日刊工業新聞2016年12月16日の記事に加筆
池田勝敏
池田勝敏 Ikeda Toshikatsu 編集局経済部 編集委員
日米合同チームで開発したが、開発責任者に米国ホンダのクラウス氏が任命されたことや、米国で生産を行うことからプロジェクトの主体は米国側にあった。初代NSXは日本生まれだった。初代NSXが生まれてからの四半世紀で、米国ホンダが最高峰の車づくりを担えるほど力をつけたことが分かる。

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