東レ、自動車向け炭素繊維の本格採用は17年から!いよいよポテンシャル開花へ

社長が見通し示す。まず価格帯が約700万―800万円の高級車への普及視野に

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東レの先端素材をふんだんに使ったコンセプトEV「TEEWAVE AR1」
 東レの日覚昭広社長は21日、自動車向け炭素繊維の採用が「2017年ごろから本格的に広がる」との見通しを示した。価格帯が約700万―800万円の高級車への普及を視野に入れる。価格競争力に優れたラージトウ炭素繊維の本格採用をにらみ、米子会社ゾルテックの生産設備増強などで対応する。
(日刊工業新聞社2015年05月22日 素材・ヘルスケア・環境面)

 炭素繊維事業の収益化で先行する東レ

 炭素繊維ビジネスで収益性が光るのが東レだ。炭素繊維複合材料事業の15年3月期の売上高は前期比517億円増の1650億円、営業利益は同111億円増の280億円と、大幅な伸びを見込む。早くから航空機の1次構造材認定を受けるなど、高付加価値分野を磨き、炭素繊維を稼げる事業へと育て上げた。次の展開について、大西盛行専務は「一番ポテンシャルがあると期待しているのが産業用途で、中でも自動車用途だ」と期待を込める。

 14年末にはイタリアの織物メーカーであるサーティから、同社の欧州における炭素繊維織物・プリプレグ(炭素繊維樹脂含浸シート)事業を買収することで基本合意したほか、国内では東レ・カーボンマジック(滋賀県米原市)の本社工場に工場棟と自動倉庫を増築した。作業スペースを広げ、CFRP部品の試作・少量生産品機能を充実させるなど、加工分野でも足元を固める。

 東レでは、これまでにも炭素繊維など先端素材をふんだんに使った電気自動車(EV)のコンセプトカー「TEEWAVE AR1」を作製。ルーフやハッチ部分に熱可塑性CFRPを用いるなど可能性を追求してきた。

 トヨタ自動車の燃料電池車(FCV)「MIRAI(ミライ)」には、共同開発した熱可塑性CFRPが自動車のフロア部分に相当する「スタックフレーム」部品として用いられた。量産車の構造部材としては世界初の熱可塑性CFRPといい、先駆性をアピールした。

 炭素繊維の供給においては、買収した米ゾルテックの材料を中心に拡販を狙う。「ラージトウ」と呼ばれる炭素繊維を扱うメーカーで、東レが航空機や超高級車などに使っている「レギュラートウ」と比べて安価なのが特徴だ。日覚昭広社長は「500万―1000万円程度の高級自動車向けをターゲットにしたい」と構想を練る。現在、ゾルテックの年産能力は1万2000―1万3000トン程度とされるが、20年に向けて倍増を視野に強化を検討している。
(日刊工業新聞2015年02月24日深層断面の一部を抜粋)

 炭素繊維市場テイクオフ、各社の動きは?

 炭素繊維業界にとって、2015年は飛躍の年になりそうだ。鉄に比べて4分の1の重さで10倍の強さを誇り、硬くてさびない特徴を持つ炭素繊維。軽量化や環境負荷低減といったニーズを背景に、航空機や自動車での採用は勢いを増している。ただ、高い価格や製造方法、量産性などの面で課題を抱えているのも事実だ。アルミニウムをはじめ、ライバル素材との競争も激化している。炭素繊維業界の今を検証する。

 【PAN系が9割】
 炭素繊維にはポリアクリロニトリル(PAN)を原料としたPAN系炭素繊維と、石油や石炭からとれる有機物を改質するなどして作るピッチ系炭素繊維がある。
 需要の約9割はPAN系炭素繊維とされ、東レ、帝人(東邦テナックス)、三菱レイヨンの日系3社で世界シェアの6―7割を占める。

 「航空機の大型受注や自動車での本格的な採用で、炭素繊維の注目度が跳ね上がった」。業界関係者の見方はこう一致する。例えば、14年11月には東レが米ボーイングから航空機向け炭素繊維で総額1兆円分を受注。独BMWが炭素繊維を使った電気自動車(EV)「i3」は、500万円程度という価格帯で話題となった。

 【巻き返し】
 ただ、各社の炭素繊維事業の業績には大きな開きがある。最大手の東レは航空機向けがけん引し、15年3月期連結の炭素繊維複合材料事業の売上高見通しが前期比45・6%増の1650億円、営業利益は同65・7%増の280億円と、大幅な伸びを見込む。 一方、帝人、三菱レイヨンは炭素繊維の業績を公表していない。単純比較は難しいが、売り上げや利益面で東レとの差は倍以上あるとみられる。

 こうした中、巻き返しへ攻めの動きも出ている。帝人は4月に複合材料開発センターで進めていた熱可塑性炭素繊維強化プラスチック(CFRP)のマーケティング機能と、グループ会社・東邦テナックスの熱硬化性CFRPのマーケティング機能を統合した。

 三菱レイヨンは三菱樹脂のピッチ系炭素繊維事業を統合し、現状の炭素繊維事業の売上高約600億円からの積み上げを目指す。帝人、三菱レイヨンとも扱う製品の幅を広げ、自動車用途などに提案を強化することが狙いだ。
 
 【変わる勢力図】
 各社とも「炭素繊維を供給するだけのビジネスで収益を得るのは難しい」との声が強まっている。このため、今後は加工や製品といった「川中」、「川下」にあたる領域の強化が不可欠だ。
 
 炭素繊維は既存材料からの置き換えにより、市場を創出してきた。量産性や加工性といった課題を解決し、用途開拓がさらに進めば、炭素繊維メーカーの勢力図が一気に塗り変わる可能性も秘めている。

日刊工業新聞2015年04月30日 素材・ヘルスケア・環境面

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

日系メーカーが世界シェアの6―7割を占めるPAN系炭素繊維。これまで高機能品ほど販売先が先進国が中心で、景気変動による影響を受けやすいのが課題だった。量産車へと適用が進めば、数量と収益性が見込めるようになり事業基盤が安定性するだろう。とにかくこの分野で日本は絶対に勝たなければいけない。

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