武田薬品、ウェバー体制でどこまで「選択と集中」を進めるのか

3領域に集中も、現在の改革路線への共感は?

昨年、京大とiPS創薬で提携を発表。山中伸弥所長(左)とウェバー社長
 富士フイルムが15日、武田薬品工業の子会社で試薬大手の和光純薬工業(大阪市中央区)を買収すると発表。一方、武田薬品が子会社の和光純薬を売却したのは、「選択と集中」を徹底して創薬研究や新薬開発に経営資源を集中する狙いがある。武田薬品は14年6月のクリストフ・ウェバー社長就任以降、医学書出版や医薬品分析などの子会社を次々と譲渡。16年4月には呼吸器系疾患領域の事業を英製薬大手アストラゼネカに5億7500万ドル(約700億円)で売却した。

 研究開発体制の抜本的な見直し策も7月に打ち出した。重点疾患領域の選択に一定の区切りが付いたと判断し、約750億円を投じて全世界で拠点や組織を再編するとした。これにより年間約180億円のコスト削減効果を見込み、その分を開発品の品ぞろえ強化に再投資する考えだ。

 「この数年間、かなりの努力をしてパイプライン(開発品一覧)を3領域に集中させてきた」。武田薬品で研究開発の最高責任者を務めるアンドリュー・プランプ取締役はこう振り返る。

 3領域とは、がん、消化器、中枢神経系を指す。アストラゼネカへ売却した呼吸器領域は非中核事業という扱いだった。

 武田薬品が得意としてきた循環器疾患の創薬からも実質的に手を引く。5月時点では、3領域に次ぐ存在として循環器とワクチンを位置づけていた。循環器領域では過去に高血圧薬「ブロプレス」などのヒット製品を生んでいる。

 蓄積した知見を生かし、糖尿病性腎症のような未充足の医療ニーズが大きく専門的な疾患の薬に取り組む考えだった。だが7月末に発表された研究開発体制見直しの説明資料では、循環器の記述がなくなった。

 こうした絞り込みを進めるには、自社の強み・弱みの正確な分析が不可欠。学術機関における研究動向の把握や、市場性の予測も各領域ごとに行う必要がある。プランプ取締役は米メルクや仏サノフィで研究開発幹部を歴任し、15年6月に現職に就いた。

 ウェバー社長は「強いリーダーがいるので変革に立ち向かえる」と、プランプ取締役の存在が選択と集中を加速させたとの見解を示している。

 ただ、決定事項の和光純薬売却にせよ研究開発体制再編にせよ、従業員から共感を得ることは必ずしも容易でないと予想される。ウェバー社長が掲げる改革の第2章は地道な取り組みが必要だ。
     

日刊工業新聞2016年12月16日「深層断面」から抜粋

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

富士フイルムの買収を武田薬品から視点で書かれたもの。記事にも触れられているが、ウェバー体制後の武田薬品の改革にあまり良い声はあがってこない。先日もカナダの製薬会社バリアントの買収が破談に終わった。創業家との関係も深い和光純薬の売却は、バリアントのセット感があってこそという側面もあるだけに、成長の軌道が見えなければ一層風当たりが強くなる。

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