農機メーカーが提案する持続可能な営農モデル

自ら参画し地元産業の活性化を後押し

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ブドウを栽培するクボタの農場(山形県上山市)
 農業機械メーカー大手各社が国内で地域の特性や実情に応じた営農技術の実証を進めている。農機や資材、情報通信技術(ICT)を用いて作物の栽培を実践し、収益や品質を高められる手法を追求する。農業従事者の高齢化と減少が深刻化し、抜本的な農政改革も迫られている。農業の競争力強化に向け、農機メーカーの視点で各地に合った持続可能な営農モデルを提案していく。

 農機最大手のクボタは販売会社を通じて農場「クボタファーム」を運営。2013年1月に熊本県で設立して以降、新潟、兵庫、山形、香川、沖縄と展開してきた。8カ所目を群馬県前橋市に17年2月に完成し、トマトやタマネギ、ソバを栽培する計画だ。

 耕作放棄地の再生にも協力し、地元の生産者や行政とも連携する。生産にとどまらず加工や販売にも取り組み、地元の農業や経済の活性化につなげる。

 山形県上山市ではワインの産地化を目指す行政の要望を受け栽培したブドウ約2トンをすでに収穫。17年初めにはワイン1500本を出荷する。香川県三豊市では廃校後の運動場でイチゴの施設栽培を行い12月下旬から収穫を始める予定。観光農園としても活用する。

 兵庫県養父市で挑むのは中山間地の農業モデル確立だ。コメ生産に省力化が可能な鉄コーティング直播(ちょくは)栽培や収量・品質向上に寄与するICTを用いた営農・サービス支援システムを導入し、収益性を実証する。周年栽培で雇用を維持するには「コメの栽培だけでは事業が成り立たない」(石橋善光執行役員農機国内営業本部長)ためフィルムシートを使った高糖度トマトの生産など施設栽培との複合経営モデルも試行する。

 新潟市では輸出用米栽培の実証実験を実施。「海外で増やすには価格競争力を高めないといけない」(冠康夫アグリソリューション推進部長)として低コストの稲作を成功させ、輸出量の増加に結びつけたい考えだ。
ヤンマーがイチゴの周年栽培に取り組む研究開発拠点(岡山県倉敷市)

 ヤンマーは8月に岡山県倉敷市に開設した研究開発拠点「バイオイノベーションセンター倉敷ラボ」を利用し、地元の特産品であるブドウやスイートピーを栽培する計画だ。

 自社グループのガスヒートポンプを用いた空調でエネルギーコストを抑えられる技術を開発・実証して地元の農家に還元していく方針。イチゴの周年栽培にも取り組むほか、種や苗、遺伝・育種といったレベルにさかのぼって研究を行い、農業生産の効率化や高付加価値作物の生産を目指す。

 また、井関農機は15年に茨城県つくばみらい市に設立した「夢ある農業総合研究所」に続いて、16年に熊本県益城町に圃(ほ)場も備えた提案型の展示・研修施設を開設。九州全域を対象に、地域特性に適した栽培技術の実証を進める。
(文=大阪・窪田美沙)

日刊工業新聞2016年12月15日

COMMENT

農機メーカー自らが農業に参画して地元産業を活性化し、農作物にとどまらない“収穫”を得ようとする試みが本格化している。地方創生といった観点からも、各社の活動が重要性を増しそうだ。 (日刊工業新聞大阪支社・窪田美沙)

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