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ニッポンの強さの象徴!電子部品32社の平均利益率10・6%まで高まる

15年度(業績予想)は「稼ぐ力」一段と。スマホ向け高機能部品がけん引し売上高は10兆円に近づく
 電子部品メーカー主要32社の2016年3月期連結決算の営業利益は全社合計で前期比24%増の1兆500億円と1兆円を超える見通しだ。営業利益率は同1・4ポイント増の10・6%に伸びる。スマートフォン向けの高機能部品がけん引役となり、各社の“稼ぐ力”は一層高まる。今後は自動車や産業機器のほか、部品が多用されるモノのインターネット(IoT)など成長分野で攻勢をしかける企業が増えそうだ。

 主要32社の16年3月期売上高合計は9兆8773億円に達する見通しで10兆円超えが射程圏内に入った。村田製作所の藤田能孝副社長は15年3月期の決算説明会で業績見通しについて「大きなリスクはない」と明言し好調ぶりを強調した。

 今期もスマホ向けが稼ぎ頭という構図は変わらず、特に中国スマホ向けが収益をけん引しそうだ。中国市場で高速無線通信「LTE」サービスに対応した端末の普及が一段と進むためで、中でも表面弾性波フィルターなど通信デバイスの需要が足元で逼迫(ひっぱく)している。

 太陽誘電は昨年新設した青梅事業所(東京都青梅市)を活用するほか所沢工場(埼玉県三芳町)を増強し受注を着実に取り込む。通信デバイスを含む複合デバイス事業の売上高は前期比11・7%増の590億円を計画。

 安定成長へ戦略投資活発化

 中国スマホは通信デバイスだけでなく1台当たりに搭載される積層セラミックコンデンサーやコイルといった部品の数も増える。スマホ部品の売り上げを16年3月期に、前期比3割増を計画する京セラの山口悟郎社長も「今期も中国スマホの勢いは衰えない」と指摘。アルプス電気の米谷信彦専務も「(中国スマホ向け)は前期比で3割伸びる」とし、各社の首脳はそろって中国向け売り上げの大幅アップを見通す。

 電子部品業界各社の業績が「安定成長期」に入った。2016年3月期の主要32社の平均営業利益率は2ケタ台に突入した。高い収益力を武器に、継続的な成長に向け大手から中堅企業までM&A(合併・買収)といった戦略的投資が重要になりそうだ。

 主要35社のうち、決算期が同一で比較できる32社の16年3月期の平均営業利益率は10・6%(15年3月期は9・2%)となり、10%を超える見通しだ。スマホを軸に安定して収益を上げるようになった今、電子部品各社は中長期的に競争力を維持するため、電装化が進む自動車や産業分野の開拓に向け攻勢をかける。

 TDKは車載事業の売上高比率を現状の17%から18年3月期までに30%に引き上げる目標を掲げており、磁気センサーやバッテリーといった有力商材の採用拡大を狙うため自動車電装品メーカーへの売り込みを本格化する。
 
 村田製作所も子会社の東光と共同で製品開発を進めるなどし、車向けコイルの採用拡大につなげる。日本航空電子工業は産業機器向けのコネクターの品ぞろえを充実させる。また各社はモノのインターネット(IoT)関連のビジネスを注視する。車や産業機器はもちろん、あらゆるモノにセンサーや通信機能が搭載され部品が多用されるからだ。
 
 ただ、幅広い業界に向けて部品を効率よく提案したり、顧客の要求に応えたりしていくためには1社単独では難しい側面もある。特に「検知データを高精度に制御する半導体やソフトの開発技術も必要」(部品メーカー首脳)となる。このため同業はもちろん、異業種との戦略的提携やM&A(合併・買収)に手持ち資金を充てる企業も出てきそうだ。
日刊工業新聞2015年05月22日 1面&電機・電子部品・情報・通信面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
35社(決算期が同一で比較できるのは32社)の部品メーカーまとめをしっかりやっているのは、日刊工業新聞だけ。上位だけでなく、中位以下でも利益率が2ケタ近い企業もあるので要チェック。

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