ノーベル賞授賞式。萎縮する基礎研究、このままでは日本から遠のく

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ノーベル賞の受賞記念講演を行う大隅氏(公式動画より)
 2016年のノーベル賞の授賞式が10日夕(日本時間11日未明)、ストックホルムのコンサートホールで行われ、生理学医学賞に輝いた大隅良典・東京工業大栄誉教授が、スウェーデンのカール16世グスタフ国王からメダルと賞状を授与された。

 2014年から3年連続で日本人がノーベル賞に選ばれ、物理学賞と化学賞を含む自然科学系3賞の日本の受賞は、21世紀に入ってから大隅氏が16人目(米国籍含む)。

 米国に次いで2番目に多く、日本の科学水準の高さを示した。一方で基礎研究を取り巻く環境は厳しく、大隅氏は「このままでは10―20年後には日本からノーベル賞が出なくなる」と警鐘を鳴らす。

 大隅氏の受賞テーマとなった「オートファジー(自食作用)」は、細胞が不要なたんぱく質などの構成成分を自ら分解し、再利用する現象を指す。大隅氏は88年に酵母の細胞でオートファジーを発見。その後、オートファジーに必須の遺伝子を特定するなど、研究の第一人者として道を切り開いてきた。

 近年は、がんなどの病気や老化との関連も次第に明らかになってきた。ただ、当の大隅氏は、「最初から病気や寿命に関わると確信していたわけではない」と話し、知的好奇心で研究に取り組んできたことを強調。「世間は、数年後すぐに実用化する研究を重視するようになっており、危惧している」と基礎科学分野の置かれた厳しい現状を吐露する。

 こうした主張は大隅氏だけではない。国立大学法人理学部長会議は10月発表の声明で、「『役に立つ』研究推進の大合唱が『好奇心』を基盤とした基礎研究を萎縮させ、基礎科学を目指す若手の急激な減少をもたらしている」と指摘。基礎研究推進の基となる運営費交付金と教員ポストの確保を求めた。

 文部科学省は、基礎研究の強化を検討する特別作業班を設置し、17年2月をめどに報告書をまとめる。研究成果の社会還元は重要だが、その土台となる基礎研究がままならないと技術革新も生まれない。
(文=斉藤陽一)

日刊工業新聞2016年12月9日付記事に加筆・修正

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斉藤陽一
編集局第一産業部
デスク

基礎と応用をどうバランスさせるか。3年連続のノーベル賞受賞に浮かれることなく、国全体で考える必要がある。

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大隅 ノーベル賞

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