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アイシンAW、2020年までにEV駆動ユニット商品化

来年1月には組織改正も
アイシンAW、2020年までにEV駆動ユニット商品化

新型プリウスに採用されたアイシングループの電気式4WDユニット

 アイシン・エィ・ダブリュは9日、電気自動車(EV)の駆動ユニットを2020年までに商品化して本格展開すると発表した。ハイブリッド車(HV)向け駆動ユニットの開発を担うHV技術部を、17年1月に「EHV技術部」と「EHV先行開発部」に組織改正して電動化技術全般を開発する体制を整える。自動車メーカーがEVの開発を積極化しているため、将来を見据えて需要を取り込む。

 自動変速機(AT)で世界首位のアイシン・エィ・ダブリュは、保有技術を活用してEV向けにモーターやインバーター、ギア、ケースで構成する駆動ユニットを開発する。現在のHV技術部には200―300人程度の人員が関わるが、新組織では「20年には2倍以上には増える」(山口幸蔵副社長)と人員も拡充しながら開発を進める。

 ATでは新たに自社ブランドも展開する。「シンクロマチック」というブランド名で、トヨタ自動車と共同開発した3機種の新ATから導入していく。ATの世界販売台数は16年度に850万台を見込んでおり、20年度に計画する同1000万台については「今のペースでいくと19年度くらいに前倒しできるのではないか」(川本睦社長)としている。

日刊工業新聞2016年12月10日



アイシン、グループ連携に動く


 アイシン精機がグループ連携に本腰を入れ始めた。その第1弾の成果が、ハイブリッド車(HV)向けの4輪駆動(4WD)ユニット。トヨタ自動車が2015年12月に発売した新型HV「プリウス」に採用された。プリウスに4WDが設定されたのは4代目にして初めてだ。アイシンは歴史的に自動変速機(AT)などそれぞれの事業に特化した子会社に責任や権限を強く持たせて成長してきたが、その半面、連携が後手に回っていた。置き去りとなっていたアイシングループの連携がゆっくりと動きだす。

 北海道十勝地方の東南で太平洋を臨む豊頃町。ここに4WD車を実証するアイシン精機の豊頃試験場がある。4WDは降雪地域の必需品だ。雪道での発進、カーブや坂道の走行時に力を発揮する。実際、新旧のプリウスを雪の上で乗り比べるとカーブの出口付近などで安定した走りを体感できる。

 新型プリウスに採用された電気式4WDユニットは「量産品で3社が共同開発した初めての成果」(藤江直文アイシン副社長)。3社とはアイシン、ATを担うアイシン・エィ・ダブリュ(アイシンAW)、手動変速機(MT)を手がけるアイシン・エーアイ(アイシンAI)。ハウジングやモーター、ギアなどを分担した。

 モーターで後輪を駆動させる同ユニットを小型化し、設置スペースの限られるHVでも搭載可能にした。世界初の量産HVとして97年に登場し、トヨタを代表するHVのプリウスに搭載されたことで、グループ連携の成功事例として弾みをつける。

強すぎた独自色


 アイシンは子会社の独立色を強めて成長してきた。アイシンAWの連結売上高が1兆円を超えるなど業界内で存在感の大きい子会社を多数かかえるが、グループ連携は途に就いたばかり。

 「個別でがんばってきたが、グループで結集してシステム提案をしていく」(藤江副社長)と、現在は転換点にある。クルマの高度化が進み「システムが複雑化してきている」(尾崎和久取締役専務役員)状況下ではグループの有機的な連携が欠かせないためだ。開発のロードマップもグループ会社ごとから、一つに統一した。

 同試験場でも先行開発の段階から自動車メーカーを招き、提案活動を積極化しているという。人工氷結路や日米欧の特徴的な路面を再現した総合周回路などを生かし、顧客目線の開発を進める。

 また運転手の運転不能状態を検知するとクルマが安全を確保して路肩に停止する「緊急路肩退避」や、スマートフォンで駐車を操作する「リモコン駐車」などの自動運転技術も開発中だ。これらの技術もグループ3社やブレーキを担当するアドヴィックスが共同で実用化を目指している。25年に車両全体で12年に比べ30%の燃費改善を狙うなど掲げる目標は高い。
(文=名古屋・今村博之)

日刊工業新聞2016年12月10日



明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
EVユニットはトヨタの計画と連動したもの。一方でEVへの流れが加速すると、アイシングループ内での連携強化に影響を与えるかもしれない。トヨタの意向もあるが、クルマの機能を再定義したトヨタのグループ会社再編も注視したい。

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