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“ポストスマホ”で勝負に出る。TDK、センサー事業に700億円投資

M&A加速、5年以内に売上高を約3倍の2000億円に
“ポストスマホ”で勝負に出る。TDK、センサー事業に700億円投資

石黒社長

 TDKは車載向け磁気センサーなどセンサー事業に約700億円の成長投資を実施する。2017年以降にM&A(合併・買収)で、ガスセンサーなどのセンサー技術を取得して品目を拡充。各種センサーを組み合わせた「複合センサー」も開発し、生産体制を構築する。今後、5年以内にセンサー関連の売上高を現状の約3倍の2000億円まで引き上げる。米クアルコムに事実上売却する高周波部品事業の次の柱として、センサー事業を育成する。

 成長投資の原資は、17年1月に米クアルコムと設立するスマートフォン向け高周波部品の合弁会社の持ち株を、会社設立後に売却して調達する。TDKは持ち株をクアルコムに売却できるオプションを保有しており、オプションを行使することで最大約30億ドル(約3600億円)の資金を調達できることから、使途が注目されていた。

 持ち株の売却で得る資金の第1弾は1300億円を見込む。全てを今後の成長戦略製品として位置付けるセンサー事業やアクチュエーター事業に充てる。第2弾として得られる残りの売却資金については株主還元などを検討しているが、基本的には成長戦略製品に投じるもようだ。

 TDKは成長の核となる領域として、車載、ICT、産業機器・エネルギーを設定している。車載事業などの強化にはセンサー類の拡充は不可欠だ。

 16年までに先行投資として、スイス・ミクロナスセミコンダクタホールディングや仏トロニクスマイクロシステムズ、米ハッチンソンテクノロジーなどへの買収資金に約600億円を投じた。ミクロナスのホール素子センサーとTDKのトンネル磁気抵抗素子(TMR)センサーを融合させた「磁気複合センサー(仮称)」をすでに開発し、19年までにTMRセンサーで納入実績のある車載向けで供給を始める予定だ。
              
日刊工業新聞2016年12月7日
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
IoT時代のキーデバイスがセンサーであることは間違いない。あらゆるところに、あらゆる種類のセンサーが搭載されていくはずだ。ポストスマホ時代に一頭地を抜くことができるのか、TDKが勝負に出ている。

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