トヨタが「80%木でできた車」を作った理由とは?
「ウッドデザイン賞2016」の農林水産大臣賞(最優秀賞)
木材利用を推進させる製品や取組みについて消費者目線から表彰する「ウッドデザイン賞2016」の農林水産大臣賞(最優秀賞)に、トヨタ自動車のコンセプトカー「SETSUNA」が選ばれた。外装、内装の80%に木材を用い、日本古来の伝統技法を取り入れ組み上げた。優れたデザインと内部構造とともに、普段木材を使わない業界で木材を積極的に取り入れたことが評価された。今後同様に異業界の木材利用が広がる好例になることが期待される。
第2回目となる同賞は、451点の応募があり、251点が「ウッドデザイン賞」を受賞。その中より農林水産大臣賞(最優秀賞)1点、林野庁長官賞(優秀賞)9点、審査委員長賞(奨励賞)14点が選出された。
SETSUNAは「変わることを愛でる」というコンセプトのもとに企画された。「車は経年劣化するもの。それを“経年美化”として世代を超えて愛され続ける車を作れないだろうか、と考えました」(楠田久MS製品企画部新コンセプト企画室長)。さまざまな材料を検討した結果、たどり着いたのが木だった。内装に木を取り入れることはあるが、車の外装も含めてここまで木を使ったのは今回が初めてだという。
木は手入れをすれば100年でも使い続けることができる。一番の魅力は、時を経て変化することだと、中心となって開発した同室の辻賢治氏は話す。「使う人によって味の出方も違う。傷がついても思い出に変わる材料は木くらいしかないのでは」(辻氏)。
愛着を持って長年使い続けてもらうためのこだわりを、モノづくりに落とし込んだ。コンセプトを表現するため、距離計の代わりに年月を刻む時計を配置。木材は外装に使われたスギのほか、材質の特性に合わせて計5種類を使用した。一部が破損しても交換がしやすいよう、木の接合には釘を使わず、日本古来の「送り蟻」「くさび」などの技法を用いた。木材の扱いに関しては住友林業に協力を仰いだという。
電気自動車なので、時速45キロメートル程度での走行が可能。公道を走ることはできないが、すでに私道では何度か走行している。「低速でも木ならではのしなりを感じ、いままでと違った走る楽しみがある」(楠田氏)。
今回のプロジェクトを統括した小西工己常務はSETSUNAに乗車し、「木造の家に包まれているようなあたたかさを感じた」と話す。車を木で作ったことで、単なる工業製品にとどまらず、より身近なパートナーのような感覚が得られることが発見できた。SETSUNAで得られた“あたたかさ”などの要素は今後車づくりに広く活用されていく可能性がある。
とはいえSETSUNAに一般販売の予定はなく、今回の技術がすぐに新しい車に取り入れられるわけではない。それでも同社ではSETSUNAのように、新コンセプトを自由に発想することが推奨されている。
「今の延長線上でなく、まったく新しいものを発想する。そこで得た驚きが30年後には常識になっているかもしれない。現在からかけ離れたデザインも逆算すれば、近い未来につながっていく可能性がある」(小西常務)。
第2回目となる同賞は、451点の応募があり、251点が「ウッドデザイン賞」を受賞。その中より農林水産大臣賞(最優秀賞)1点、林野庁長官賞(優秀賞)9点、審査委員長賞(奨励賞)14点が選出された。
ありそうでなかった、「木で車を作る」こと
SETSUNAは「変わることを愛でる」というコンセプトのもとに企画された。「車は経年劣化するもの。それを“経年美化”として世代を超えて愛され続ける車を作れないだろうか、と考えました」(楠田久MS製品企画部新コンセプト企画室長)。さまざまな材料を検討した結果、たどり着いたのが木だった。内装に木を取り入れることはあるが、車の外装も含めてここまで木を使ったのは今回が初めてだという。
木は手入れをすれば100年でも使い続けることができる。一番の魅力は、時を経て変化することだと、中心となって開発した同室の辻賢治氏は話す。「使う人によって味の出方も違う。傷がついても思い出に変わる材料は木くらいしかないのでは」(辻氏)。
愛着を持って長年使い続けてもらうためのこだわりを、モノづくりに落とし込んだ。コンセプトを表現するため、距離計の代わりに年月を刻む時計を配置。木材は外装に使われたスギのほか、材質の特性に合わせて計5種類を使用した。一部が破損しても交換がしやすいよう、木の接合には釘を使わず、日本古来の「送り蟻」「くさび」などの技法を用いた。木材の扱いに関しては住友林業に協力を仰いだという。
電気自動車なので、時速45キロメートル程度での走行が可能。公道を走ることはできないが、すでに私道では何度か走行している。「低速でも木ならではのしなりを感じ、いままでと違った走る楽しみがある」(楠田氏)。
現在からかけ離れたデザインが未来をつくる
今回のプロジェクトを統括した小西工己常務はSETSUNAに乗車し、「木造の家に包まれているようなあたたかさを感じた」と話す。車を木で作ったことで、単なる工業製品にとどまらず、より身近なパートナーのような感覚が得られることが発見できた。SETSUNAで得られた“あたたかさ”などの要素は今後車づくりに広く活用されていく可能性がある。
とはいえSETSUNAに一般販売の予定はなく、今回の技術がすぐに新しい車に取り入れられるわけではない。それでも同社ではSETSUNAのように、新コンセプトを自由に発想することが推奨されている。
「今の延長線上でなく、まったく新しいものを発想する。そこで得た驚きが30年後には常識になっているかもしれない。現在からかけ離れたデザインも逆算すれば、近い未来につながっていく可能性がある」(小西常務)。
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