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「銀座は常に変化している。でも常に銀座であり続けている」

実店舗の苦戦続くも、したたかに「買い物の楽しさ」を提案
「銀座は常に変化している。でも常に銀座であり続けている」

「ギンザ シックス」の動画サイトより

 「百貨店はやらないと決断しました」。10月下旬、大丸松坂屋百貨店を傘下に持つJ・フロントリテイリングの山本良一社長は、松坂屋銀座店跡地で2017年4月に開業する複合施設「ギンザ シックス」について、こう宣言した。同施設に大丸松坂屋百貨店が出すセレクトショップにも、大丸や松坂屋の屋号は用いない。

 銀座にある百貨店の一つ、プランタン銀座は12月末で営業を終え、17年から隣接する商業施設のマロニエゲートにブランドを統合する。同社の売上高は10年前と比べ4割減少した。笹岡寛プランタン銀座社長は「敷居の低い店にする」として、会員制交流サイト(SNS)の投稿スペースなどを設ける予定だ。

 脱“爆買い”も顕在化した。1月、三越伊勢丹ホールディングス(HD)などの共同出資会社は三越銀座店内に、たばこ税や酒税などが免税となる空港型免税店を開き、初年度売上高目標150億円を掲げた。

 ロッテ免税店も3月開業のショッピングセンター(SC)「東急プラザ銀座」に出店した。しかし、為替の円高などで、訪日客の消費は4月頃から急激にしぼんだ。三越銀座店内の免税店は4―9月の売上高が22億円と、計画を大きく下回っている。

 「銀座は常に変化しています。でも常に銀座であり続けているのです」―。銀座に旗艦店を持つ松屋が4月、社員向けに発行した冊子の一文だ。

 この1年、地方や郊外で百貨店やSC閉店の話題が相次いだのを尻目に、銀座では9月にサッポロ不動産開発(東京都渋谷区)とつゞれ屋(同中央区)が「銀座プレイス」を開くなど、競争は激しくなっている。

 「銀座で必要なのは誰も見たことのない商業施設を作ること」と、山本J・フロントリテイリング社長は言い切る。消費マインドの冷え込みや電子商取引(EC)の台頭で、実店舗が苦戦を強いられる状況は17年も変わらないだろう。

 銀座のブランド力を生かした「買い物の楽しさ」の提案が生き残りのカギを握る。

(江上佑美子)

日刊工業新聞2016年12月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
銀座は常に変化している。それが日本一の繁華街を維持しているゆえんだ。爆買いが去ろうとも、銀座はしたたかに、次の変化に向かって突き進んでいく。​

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