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建築コスト増でマンション価格高止まり。今後は物件選別進む

首都圏の新規発売戸数は7年ぶりの低水準に
 マンション販売が低調だ。不動産経済研究所によると首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の1―10月のマンション新規発売戸数は前年同期比15・3%減の2万6064戸。年末にかけて物件供給の増加が見込まれているものの、12月までの累計で4万戸を下回る可能性も出てきた。もし下回ればリーマン・ショック直後の2009年以来、7年ぶりの低水準となる。建築コストの上昇などを反映したマンション価格の高騰が、発売戸数の低迷をもたらしている。

 1戸当たり平均価格は高止まりが続き、10月は5406万円だった。高騰が定着した直近2年間を除くと、価格が5000万円を上回ったのはバブル経済末期の1992年までさかのぼる。同年の1戸当たり平均価格は5066万円。ピークの90年は平均6123万円で2割近く価格が下がったが、まだ割高感があったようだ。年間発売戸数は、2万6248戸にとどまった。

 1戸当たりの専有面積が異なるため、バブル期と現在の価格を単純には比べられない。とはいえ、現在のマンション価格が歴史的に見ても高水準であることは間違いない。

 17年もマンション価格の高止まりは続く見通し。20年の東京五輪・パラリンピック開催を控え関連工事が本格化するほか、東京都心部などの再開発も加速。価格高騰の要因である建築コストが下がる材料は見当たらない。土地価格も上昇し、マンション用地取得も難しくなっている。三井不動産レジデンシャルの藤林清隆社長は「今後は物件の選別が進むだろう」と指摘する。
        

日刊工業新聞2016年12月6日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
大手不動産各社の16年4―9月期連結決算は、分譲マンションの売り上げ計上戸数が前年同期に比べて少なかったり、期初計画に比べて減らしたりする傾向も目立った。市況の変調に対して、いち早く手を打った格好だ。ただし、供給を絞り込めば収益に響く。高騰する価格に見合った付加価値をどのように上乗せするか、各社の手腕が問われそうだ。 (日刊工業新聞第ニ産業部・斎藤正人)

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