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日本は高速炉開発の新しいチャレンジに踏み出すのか

存続厳しい「もんじゅ」、仏・米との協力も視野に
日本は高速炉開発の新しいチャレンジに踏み出すのか

年内に存廃が決まるもんじゅ(11月16日=福井県敦賀市)

 高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の存廃がまもなく決まる。今後の日本の高速炉開発を議論する政府の「高速炉開発会議」はもんじゅを再稼働しなくても実証炉の開発が可能との見方を示しており、存続は厳しい状況だ。政府には、30年以上に渡り国策へ協力した地元に報いる結論が求められる。

 11月25日の「もんじゅ関連協議会」では、松野博一文部科学相、世耕弘成経済産業相と、福井県の西川一誠知事が意見交換した。もんじゅを含む周辺地域について、両相は「引き続き高速炉研究開発の中核で、原子力人材育成の拠点としての役割を果たしてほしい」などと説明。

 一方、西川知事は「廃炉を含め抜本的な見直しは極めて遺憾だ。県民や市民は大きな不信感を抱いている」と表明した。その上で「日本原子力研究開発機構による運営の不手際がこうした事態を招いた。もんじゅそのものに問題があるわけではない」と批判した。

 西川知事と同じく、原子力機構敦賀事業本部の向和夫フェロー(元もんじゅ所長)も、「もんじゅのプラントは問題なく、まだまだ使える」と主張する。もんじゅが停止した原因として、相次いだ保守管理などの不備を防げなかった原子力機構の責任を問う声が多い。

 ただ、原子力機構に代わる新たな運営主体を見つけ出すのは現実的ではない。文科省の有識者会議では15年末から16年5月まで9回もの会合を重ね、もんじゅの運営主体が備えるべき要件などをまとめた報告書を作成した。

 ただ、電力業界は運営への関与に難色を示し、運営主体選びは迷走。さらに再稼働には数千億円もの追加費用が必要との試算もあり、政府は「廃炉を含めた抜本的な見直し」へとかじを切った。

 廃炉が決まれば地元の反発は必至。長年協力した地元がこれまでの貢献に見合う補償を求めるのも当然の流れと言える。県は「見返り」として小型の研究炉の新設を求めており、政府も前向きに対応するとみられる。
(文=福沢尚季)

日刊工業新聞2016年12月6日



政府会議、再稼働の必要性示さず


 今後の日本の高速炉開発を議論する政府の「高速炉開発会議」は30日の会合で、高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を再稼働させなくても実証炉の開発が可能との見方を示した。「もんじゅの知見を実証炉の開発に生かす」といった形で「もんじゅ」の成果を強調し、廃炉を決めるかどうかが今後の焦点になる。

 会議では、高速増殖実験炉「常陽」(茨城県大洗町)、日本とフランスの企業・政府機関が共同開発している第四世代ナトリウム冷却高速炉「ASTRID(アストリッド)」、国内外の大型ナトリウム試験施設の活用で、「もんじゅ」が再稼働した場合と同様の知見を得られると確認。同日まとめた「高速炉開発方針」の骨子案には、「もんじゅの再開で得られる知見は、新たな方策で入手可能」との内容が盛り込まれ、「もんじゅ」の再稼働の必要性を示さなかった。

 「もんじゅ」は1兆円もの国費が投じられてきたものの不祥事が相次ぎ、2010年から運転を停止している。

 地元からは再稼働への期待が寄せられている一方で、新規制基準への対応も課題。文部科学省の試算によると、新規制基準対応工事費は1300億円プラスアルファとしている。

日刊工業新聞2016年12月1日



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永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
今回、政府の「高速炉開発会議」が、「もんじゅ」を再稼働させないとの判断を下しつつ、核燃料サイクルを堅持し、高速炉開発を継続する方針を確認した。経済産業省は、要素技術の開発から炉型・出力を確定するプラントデザインまでを2国間・多国間で協力する案を示し、フランス、米国との共同研究を視野に今後の研究開発を進める方向性を示している。筆者が、10月11日の日刊工業新聞の記事でコメントしたとおりの展開になってきた。フランス等との共同研究が成功する保証はないが、地元対策のための「もんじゅ」の再稼働よりも、新しい試みに挑戦する方に舵を切ることが重要ではないか。

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