1秒間を1000コマで撮影する高速ビジョンに熱視線

産学連携組織に100社超集結、産ロボ、自動運転など応用加速

 1秒間を1000コマで撮影する高速画像処理技術を使い、これまでにない製品やシステムの開発を目指す産学連携組織「WINDSネットワーク」。今年2月に設立したばかりながら、参画する企業や大学、研究機関が100を超えた。革新技術を求める企業の“高速ビジョン”への期待は大きい。このほど開かれた第2回セミナーも多くの技術者が詰めかけ、産業界の関心の高さを示した。

 高速ビジョンは東京大学の石川正俊教授らの研究が核となる。一般的な動画は1秒間30コマ。仮に「時速150キロメートルの速球を撮影すると、1コマで140センチメートル動いてしまう」(石川教授)。これでは仮に自動運転車の危険検知に応用したとき、物陰か ら飛び出してきた人を捉えても対応に残された時間が少ない。一方、高速ビジョンは速球を1コマ4センチメートルずつの動きで撮影できる。人の飛び出しを一瞬で検知でき、ブレーキをかけるなど次の対応への時間的な余裕を持てる。

 高速ビジョンは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)や情報の並列分散処理、制御など必要な要素技術の高度化によって実現した技術だ。光学装置や半導体、各種ソリューションなどの分野で市場創出に役立つとされている。応用分野も自動車・交通や計測、セキュリティーなど幅広い。組織化で一つの分野への応用展開の時間を短縮するのがWINDSネットワークの狙いの一つだ。

 セミナーでは最新の成果として、産業用ロボットへの応用が紹介された。多軸ロボットの先端部分に高速カメラと小さな直動の駆動機構を取り付け、ロボットの動きのズレを補正する。

 例えば、ロボットが線をなぞる動作をするとき、通常だと動きを教える教示作業が難しくなり、時間がかかる。高速ビジョンの機構なら1ミリ秒ごとに動きを補正し、大まかな教示、もしくは教示なしでも0・01ミリメートルの動きの精度を出すことが可能だ。無人搬送車(AGV)にロボットを据え付け、持ち場を移動するロボットシステムの効率化にも有効だという。

 飛び跳ねるボールやTシャツ、たなびく旗に自由な画像を投影できる3次元プロジェクターも応用例として示された。東京エレクトロンデバイスが小型プロジェクターとして開発したもので、高速カメラで投影する対象物を把握し、ミラーの組み合わせで高速に映像を出力する。

 最近よく見かけるプロジェクションマッピングは建物など静止物が対象だが、同プロジェクターは高速移動の物体や、布のしわやたわみなどの質感に沿って、まるでプリントされているような映像を投写できる。コンサートなどのイベントや拡張現実(AR)技術への応用が見込める。
(文=石橋弘彰)

日刊工業新聞2016年12月2日

石橋 弘彰

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12月04日
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2017年2月には東京大学が中心となり学会で新たな技術も発表する予定だ。応用分野がどこまで広がるか、今後の動きに目が離せない。

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