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ふるさと納税の寄付額がランク圏外から全国6位に。佐世保市がとった秘策とは?

2015年度は前年度の約2000倍に
 ふるさと納税の寄付獲得に長崎県佐世保市が拍車をかけている。返礼品の数を大幅に増やしてカタログを改めたほか、利便性向上にも取り組む。同市は2015年度の寄付額が約26億円を記録、前年度の約2000倍となり、14年度のトップ50圏外から全国6位の自治体に躍進した。15年4月に始めた全国初のサービスなどが効果を発揮した。その成果に気を抜くことなく、市への移住にもつなげようとしている。(西部・増重直樹)

 佐世保市は長崎県北部にあり、ハウステンボスなどの観光をはじめ、佐世保バーガーなどご当地グルメ、軍港があることなどでも知られる。

 15年度の寄付急増に貢献したのが返礼品のカタログ。百貨店のカタログのような作りとし特産品を強調した。掲載したのは“和牛のオリンピック”と呼ばれる「全国和牛能力共進会」で内閣総理大臣賞を受賞した「長崎和牛」を筆頭に海の幸など。返礼品の申し込みの9割が食関係となっている。

 市は寄付急増の理由を「元々の認知度に加え肉や魚など豊富な特産品の存在をあらためて知った人も多かったからではないか」(ふるさと納税推進課)と分析する。10月には16―17年秋冬版のカタログを一新、品数を100点ほど増やし、全国でも多いという約450点にした。ハウステンボスなど観光がセットの返礼品もある。

 15年4月に始め、全国初という取り組みが「キラっ都させぼ感謝券」だ。ふるさと納税では寄付金額に応じたポイントはインターネット上に貯まるのが一般的。佐世保市はポイントを紙製の券にして利用できるようにした。製作や配送に手間がかかるが「ネットに不慣れな利用者もいる。アナログ対応が必要」(同)と導入に踏み切った。

 今年10月に市は、ふるさと納税専用のインターネットサイトを開設した。同サイトを経由すればコンビニ決済が可能で利便性を高めた。

 カタログには幅広い市の情報も掲載している。そこには市に来てもらい、移住にもつなげたいという思いが込められている。
日刊工業新聞2016年11月29日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
返礼品の数を増やしただけでなく、カタログを一新したことも功を奏したようです。ただ、ふるさと納税について、民間の事業者からは「グルメサイトを自治体がやっているようなものだ。このままでいいのか」と疑問の声も出ています。寄付額だけに目を向けるのではなく、長い目で見て地域活性化につながる施策を講じてほしいものです。

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