<矢島里佳の新聞clip>二足のわらじを履いて働く人が増える時代に

「私も大学時代に起業し、実学として学ぶことで相乗効果があり、より効率よく進むことが出来た」

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 今日から毎週木曜日、「和える」の矢島里佳代表の新聞clipがスタートします。
1週間の日刊工業新聞の記事の中から3本程度、気になった記事をセレクト。新聞ならではのセレンディピティー(何かを発見する能力、偶然をきっかけにしたひらめき)の楽しさを伝えて頂きます。

 みなさん、こんにちは。矢島里佳です。
ウェブニュースは1つずつ興味のあるニュースを読める閲覧性の高さは魅力的です。
けれども、偶然に出会う記事たちが、自分の興味や人生に強く影響をあたえる面白さは、紙新聞ならでは。デジタルの時代だからこそ、アナログの面白さにも気がつく。双方の魅力を和えながらニュースと向き合っていければと思います。

 今回の選んだ3本は「働き方」がテーマです。
 
  ●時差ボケ解消に糸口(岡山大が回復する仕組み解明=5月14日付)
  ●顧客サポート(そんぽ24損害保険の永野寿幸社長=5月14日付)
  ●二足のわらじ(秋山ゆかりレオネッサ社長の卓見異見=5月18日付)

 秋山さんのオペラ歌手とビジネス。そんな二足のわらじで、収入を安定させながら、夢を諦めるわけでもなく、現実的に自分の夢を仕事に変える。とても素敵な自立した働き方です。

 私も大学時代に和えるを起業し、大学院へ進学したため、二足のわらじを履いてきました。
二足のわらじを履いたことにより、実学として学ぶことが出来、相乗効果があり、より効率よく進むことが出来たと感じています。これからは、二足のわらじを履いて働くという人が、増える時代に突入しているのかもしれないですね。

 
 <オペラ歌手とビジネス>
 オペラ歌手とビジネスという二つの領域で仕事をして20年以上になる。私が二足のわらじを履くようになったのは、大学のアーティスト・プログラムがきっかけだ。

 幼少からピアノ・声楽をしてきたが、10代の頃から「音楽だけでは食べていけない」ことに気づいていた。ジュリアードをはじめとする全米トップの音楽院を首席で卒業した人たちが、食うに困り、毎日ピザ屋でバイトしていると聞いていた。そこまでの才能がない自分はどうしたらいいのだろうと大学進学のときに悩んだ。

 その頃、ホテルのピアノ弾きのバイトをやっていたのだが、自動演奏機に仕事を奪われたことがある。「ミスタッチはしないし、お客さまのリクエストに何でも応えてくれるから」と支配人からクビを言い渡された。その時に、仕事とは誰かに取って代わられるだけでなく、機械やロボットに奪われることもあるのだと気付いた。

 そんな悩んでいる時に、イリノイ大学がアーティスト活動と学業を両立させるプログラムを提供していることを知った。アーティスト活動を支えるインフラだけでなく、芸術と学業を両立させるためのタイムマネジメントなどのスキルを教える場を提供していた。

 そのプログラムで、二足のわらじを履いている先輩方と出会い、二つのキャリアを同時に作ることを学んだ。特に、アーティストとは作品を作ったり演奏したりするだけでなく、自分でスポンサーを探したり、チケットを売ってお金を集める大変さを習った。また、もう一つの仕事である勉強をいかに効率よくやるのか真剣に問われた。

 【ピークずらすコツも】
 プログラムに参加していた半数以上の学生は、過酷な現実に挫折し、ドロップアウトしていったが、私はなんとか卒業まで残れた。いい先生と友人に恵まれ、細く長く続けることの重要性や、二つのキャリアのピークをずらす方法などを教えてもらったからだ。

 社会人となり、20代はビジネスキャリアを作ることに重きをおいた。理由は、声楽は30歳でやっと声が出来上がり、新人としてデビューするようになる。若い頃に重い曲を歌い過ぎると、声楽家としてのキャリアが短くなるので、20代は歌い過ぎない方がいいと先生方に注意されていた。声楽家として舞台やコンサートにたくさん出るのは30代に入ってからでも遅くないのだ。

 20代は声楽のレッスンを続け、コンクールに出場しながら、インターネットエンジニアとして、世界初のミュージックダウンロードサービスや映画広告配信サービスなどの新規事業を次々と立ち上げていった。

 20代後半でエンジニアのスキルだけでは新規事業が立ち上がらないと悩み、BCGに転職して、ビジネススキルを身につけていった。20代はビジネスのキャリアを作ろうと必死だった。それは、ビジネスで食べていけるスキルを身につけたかっただけでなく、音楽も捨てたくなかったからだ。
 30歳の時に国際コンクールにエントリーしたことがきっかけで、イタリア留学の話があり、31歳でBCGを辞めて留学した。その時もネットベンチャーの海外事業開発案件の契約をして、声楽の勉強をしながら仕事をした。

 【勤務の合間に舞台出演】
 帰国後は、メーカーで事業開発を専門に、新規事業の立ち上げやM&A(合併・買収)などを担当しながら、コンサート活動を精力的に行った。

 舞台のある日は、朝7時に出勤し、夕方4時半ごろまで働き、ホールにタクシーで乗り付け、リハーサルに出て、7時からのコンサートで歌い、9時過ぎに舞台がはねた後、会社に戻って仕事の続きを夜中近くまでやるという生活を送ってきた。土日のどちらかは必ずレッスンや舞台でつぶれるが、家族の理解があり、続けられてきた。

 二つの仕事をしているから、人よりも多い時間働くことと、集中して働き結果を出すことを求められてきた。しかし、自分がやりたいと思うことをやっているから、続いている。そして、細くてもいいから、途切れないように続ける方法を常に探しているから続いているのだと思う。諦めなければ二足のわらじは可能だと言った先輩を思い出す。

 <プロフィール>
 秋山ゆかり(あきやま・ゆかり)米イリノイ大理卒、奈良先端大情報工学修士。インテル日本法人、BCGを経てGEインターナショナル戦略・事業開発本部長、日本IBM事業開発部長などを歴任。12年経営コンサルティング会社のレオネッサ設立。声楽家。42歳。

COMMENT

矢島里佳
和える
代表

ほかの2本の記事について。永野さんは「顧客にとって身近な存在としてサポートするのが重要」とおっしゃってます。仕事は元々、誰かのためであり、身近な存在であったはずなのに、いつからそんなにも遠い存在になってしまったのでしょうか…。 時差ボケ解消は、これはグローバル化の社会で、働き方が大きく変わる予感。キャビンアテンダントさん等、時差ボケで悩む職業に就いている人の健康改善にも期待します。

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