シャープが若手管理職に特別賞与。戴社長「信賞必罰」
士気向上で構造改革推進
シャープは22日、若手の管理職を中心に成果を挙げた従業員に「社長特別賞与」を支給すると発表した。冬季賞与に上乗せする。戴正呉社長が社内向けメッセージで明らかにした。支給対象者の年齢や人数は公表しないが支給額は成果や年齢に応じて決める。冬季賞与は前回と同じ平均1カ月分を支給する。成果を上げた従業員を評価する姿勢を明確にし、「信賞必罰」の方針を浸透させる狙い。
戴社長は、新体制発足後3カ月間の従業員の頑張りに「感謝を示す」ため、特別賞与支給とシャープ製品の特別価格販売を実施すると社内に伝えた。
構造改革をこれまでの戴社長主導から、事業を熟知する事業部門が自ら課題を出す形に転換。今後、戴社長が毎月、各事業本部を訪問するほか、部長級以上の責任者約750人による「構造改革進捗(しんちょく)・収益確認会」を定期開催して改革を継続する。
シャープの戴正呉社長は1日、東京都内で会見し、「(国内拠点を)必ずしも閉鎖するわけではないが規模の縮小を検討する」と、旧経営陣が先送りしてきた工場や営業拠点の再編を進める考えを示した。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り約2カ月半。コスト削減で効率化する分野と、投資して事業拡大を進める分野がはっきり分かれてきた。初めて公式の場に登場した戴社長。見えてきた実像とは。
「繊細にして、大胆」―。取引銀行幹部の戴社長に対する人物評だ。鴻海グループ副総裁でもある戴社長の経営管理面の細かさや厳しさは、誰もが認めるところだ。シャープ幹部も「戴社長がいるときの緊張感は生半可なものじゃない」と明かす。繊細さは社員に向けられる人心掌握術にも表れている。
鴻海による買収の完了と前後して、経営企画本部の福井博之執行役員、太陽電池や複写機事業を率いた向井和司常務執行役員、家電事業の小谷健一執行役員ら「男(おとこ)気がある」と社内で慕われた幹部が次々と会社を去った。人材流出は鴻海の買収が決まる以前から続く深刻な問題。日本電産、クボタなど関西企業の受け皿もあり、歯止めがきかない状況だ。
戴社長はこの状況に機敏に反応。人望は厚かったがすでに電子部品メーカーに転職していた中山藤一専務に復職を呼びかけ、複写機事業のトップに復帰させる配慮をみせた。
また、シャープは14年以降、2回に渡って中期経営計画が破綻。旧経営陣の発言に重みがなくなり、社内外で企業としての信用を失いつつあった。戴社長はその空気を感じ取り、創業の地に建つ旧本社地区ビルの買い戻しを有言実行。その上で、18年度テレビ販売1000万台という高い目標を示し、「必ず成し遂げよう」と呼びかけ、自らのリーダーシップを明快に示した。
一方、「繊細さ」とともに兼ね備えるという「大胆さ」は、その行動力に表れている。戴社長は大阪市内の社員寮に入居し、社員と一つ屋根の下で生活を始めた。役員報酬も受け取らず、早朝に出社して経営危機に立ち向かう姿をみせた。
戴社長の大胆さがさらに発揮されそうなのは、今後に本格化するリストラ局面だ。社員向けメッセージでも「資産の有効活用や過剰設備の撤廃などさまざまな観点から費用対効果を追求する」と明言している。16年度下期以降の黒字化の足かせになる拠点や事業は思い切って改革するとみられる。人員については「削減でなく適正化する」と発言を抑え気味だが、管理職手当の廃止やインセンティブ制度の検討も始まり「信賞必罰」の徹底を着々と進めている。
戴社長による鴻海流シャープ再生劇の幕は上がった。自ら掲げた「ワン・シャープ」の言葉通り、全社をまとめ上げ、復活を果たせるか。戴社長の手腕が社内外から注目される。
戴社長は、新体制発足後3カ月間の従業員の頑張りに「感謝を示す」ため、特別賞与支給とシャープ製品の特別価格販売を実施すると社内に伝えた。
構造改革をこれまでの戴社長主導から、事業を熟知する事業部門が自ら課題を出す形に転換。今後、戴社長が毎月、各事業本部を訪問するほか、部長級以上の責任者約750人による「構造改革進捗(しんちょく)・収益確認会」を定期開催して改革を継続する。
日刊工業新聞2016年11月23日
見えてきた「戴経営」の実像
シャープの戴正呉社長は1日、東京都内で会見し、「(国内拠点を)必ずしも閉鎖するわけではないが規模の縮小を検討する」と、旧経営陣が先送りしてきた工場や営業拠点の再編を進める考えを示した。台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り約2カ月半。コスト削減で効率化する分野と、投資して事業拡大を進める分野がはっきり分かれてきた。初めて公式の場に登場した戴社長。見えてきた実像とは。
「繊細にして、大胆」―。取引銀行幹部の戴社長に対する人物評だ。鴻海グループ副総裁でもある戴社長の経営管理面の細かさや厳しさは、誰もが認めるところだ。シャープ幹部も「戴社長がいるときの緊張感は生半可なものじゃない」と明かす。繊細さは社員に向けられる人心掌握術にも表れている。
鴻海による買収の完了と前後して、経営企画本部の福井博之執行役員、太陽電池や複写機事業を率いた向井和司常務執行役員、家電事業の小谷健一執行役員ら「男(おとこ)気がある」と社内で慕われた幹部が次々と会社を去った。人材流出は鴻海の買収が決まる以前から続く深刻な問題。日本電産、クボタなど関西企業の受け皿もあり、歯止めがきかない状況だ。
戴社長はこの状況に機敏に反応。人望は厚かったがすでに電子部品メーカーに転職していた中山藤一専務に復職を呼びかけ、複写機事業のトップに復帰させる配慮をみせた。
また、シャープは14年以降、2回に渡って中期経営計画が破綻。旧経営陣の発言に重みがなくなり、社内外で企業としての信用を失いつつあった。戴社長はその空気を感じ取り、創業の地に建つ旧本社地区ビルの買い戻しを有言実行。その上で、18年度テレビ販売1000万台という高い目標を示し、「必ず成し遂げよう」と呼びかけ、自らのリーダーシップを明快に示した。
一方、「繊細さ」とともに兼ね備えるという「大胆さ」は、その行動力に表れている。戴社長は大阪市内の社員寮に入居し、社員と一つ屋根の下で生活を始めた。役員報酬も受け取らず、早朝に出社して経営危機に立ち向かう姿をみせた。
戴社長の大胆さがさらに発揮されそうなのは、今後に本格化するリストラ局面だ。社員向けメッセージでも「資産の有効活用や過剰設備の撤廃などさまざまな観点から費用対効果を追求する」と明言している。16年度下期以降の黒字化の足かせになる拠点や事業は思い切って改革するとみられる。人員については「削減でなく適正化する」と発言を抑え気味だが、管理職手当の廃止やインセンティブ制度の検討も始まり「信賞必罰」の徹底を着々と進めている。
戴社長による鴻海流シャープ再生劇の幕は上がった。自ら掲げた「ワン・シャープ」の言葉通り、全社をまとめ上げ、復活を果たせるか。戴社長の手腕が社内外から注目される。
日刊工業新聞2016年11月2日