富士フイルムは写真をもう一度カメラの外にひっぱり出すことができるか

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写真プリントを身近にするため、さまざま提案を続ける(東京・原宿の直営店「ワンダーフォトショップ」)
 かつて写真は節目節目に写真館などで撮影する特別なものだった。だが、今や画像はデータのままカメラの外に出る機会は少ない。この状況に、イメージング事業部長の武冨博信は「形にすれば感動は大きくなる」と、写真の根本的な価値は変わらないと訴える。社名の通り、富士フイルムの祖業は写真用フィルム。写真文化を守ることは同社の使命でもある。

 写真プリントが減る一方、スマートフォンの普及は個人が保有する画像を爆発的に増加させた。特に若者は1000枚以上を保有する人が少なくない。目下、同社はあの手この手を打ち、画像をスマホやインターネットの外に出す効果的な施策を探している。

ヒット支えるAIとチェキ


 「イヤーアルバム」や「シャッフルプリント」のヒットは、最新技術が支えている。人の代わりに、人工知能(AI)が膨大な画像から目的の写真を選び自動で組み合わせるため、気軽に作成できるようになった。人の顔や画質で選ぶだけでなく、結婚式や海など象徴的な風景も選ぶため、顔だらけで単調になる心配もない。

 厚手のパネルに印刷されたシャッフルプリントは、贈り物にも利用されているという。

 インスタントカメラ「チェキ」の再流行も、形にする可能性を示している。撮影したその場で写真を共有したり、インテリアやギフトボックスの一部に使ったり、使い方はアイデアとセンス次第。「写真をギフトやデコレーションと考えると、もっといろいろな提案ができる」と武冨は期待する。

直営店で顧客とつながる


 同社は流行が発信される東京・原宿や米ニューヨークに直営店「ワンダーフォトショップ」を設置し、ユーザーと直接つながろうと試みる。店舗内にはフォトブックやチェキとともに、写真をプリントしたマグカップやクッション、時計のサンプルも並ぶ。物へのプリントは海外で人気があるという。

 会員制交流サイト(SNS)「インスタグラム」を中心に、写真は身近な自己表現の手段となった。昔からある写真を、どんな役割にできるのか。富士フイルムは絶えず提案し続ける。(敬称略)

日刊工業新聞2016年11月23日

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

デジタル音源が流通する中、形のあるレコードやカセットテープの“アナログ感”が脚光を浴びるようになっています。同じように写真プリントが脚光を浴びるようになるには何が必要なのでしょうか。

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