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GEが在庫・人事管理のソフトベンチャー買収で狙う「現場作業2.0」

Predixプラットフォームに全ての技術を集積
GEが在庫・人事管理のソフトベンチャー買収で狙う「現場作業2.0」

下水処理データの活用を目指すGEグローバルリサーチ・センターのスタッフ

 米ゼネラル・エレクトリック(GE)の子会社、GEデジタルは、新たにサービスマックス社の買収を決めた。同社が持つの強みとGEが運営するPredixプラットフォームとの組み合わせる。顧客企業の機器資産を最適運用するための円滑な保守・メンテナンスを実現する“キラー・アプリ”の開発が、よりスピードアップさせる狙い。

 この買収によって、ジェット・エンジンや発電プラント、医療用スキャナーのような、日常的に頼りにしているテクノロジーの保守やメンテナンスを担う現場技術者たちの仕事は、今後もっと楽になるという。

機器の最適運用にクラウド分析


 サービスマックス社は、カリフォルニア州プレザントンを本拠地とするソフトウェア企業。機械設備のユーザーやプラントのオーナーがその資産をもっと効果的に運用できるよう、機器設備のフィールド・サービス管理のためのクラウド・アプリケーションを開発している。現場で作業にあたるフィールド・サービス技術者たちにデジタル・ツールを提供し、適切なタイミングに作業を行えるようにしている。

 Predixプラットフォーム上でこの技術を展開、インダストリアル・インターネットの可能性を最大限に引き出し、顧客企業の生産性向上を支援していく。

 ここ数年、GEはこれまでのインダストリアル領域の伝統を超えて時代の趨勢でもあるデジタル化に向けて事業拡張を行い、「デジタル・インダストリアル・カンパニー」となるべく舵を切ってきた。

 GEデジタルを設立してインダストリアル・インターネットのOSでもある「Predix」を構築し、何百万台もの機器がつながるようにした。Predixプラットフォーム上では今や世界中で19,000人を超えるソフトウェア開発者たちが機器を“スマート化”するアプリを開発している。

 その結果、ジェット・エンジンは「着陸したら部品交換が必要だ」というメッセージを飛行中に送信できるようになり、発電プラントは「重要なパーツの現地保守サービスが必要な状況だ」というアラートを自ら発することができるようになった。

 それでも多くの企業では、いまだに技術者たちが紙ベースのマニュアル、クリップボード、鉛筆を使って作業をしている。どんな部品が必要なのかは、故障した機器の蓋を開け、中をのぞき込むまで分からないような状況。

 この状況を変えるのがサービスマックスのデジタル・ツールになる。今回、どの部品が必要なのか、機械のどこに注意すればよいのかを技術者が予め把握したうえで現場に向かうことを可能にする。

 また、その場で顧客に請求書を発行することもでき、世界に2,000万人以上も存在するフィールド・サービス技術者の仕事をもっと楽なものにすることを目指す。

 サービスマックスのフィールド・サービス管理ソフトウェアは、物的資産についての情報を現場の技術者にリアルタイムで提供するのが特徴。機器に取り付けたセンサーが収集した情報を、クラウドを介してモバイル端末に送信。技術者は、過去の修理履歴からいま起きている問題点に対するインサイトまで確認することができる。

 最良のパターンでは、機械が故障する前段階でアラートを受け、予期せぬダウンタイムに伴うコストが発生する前に先回りしてメンテナンスを行う。

作業指示書の管理も可能に


 GEベンチャーズは2015年の段階ですでに、膨大な台数の輸送トラックや技術者を大勢管理する企業のあいだで支持されていたサービスマックス社へ投資し、8,200万ドルの資金調達ラウンドに参加しいた。今回の新たな買収におけるサービスマックス社の評価額は9億4,500万ドル。

 サービスマックスのアプリケーションでは、在庫や部品の手配、技術者のスケジュール調整、修理作業の管理に加え、作業指示書の管理も可能で、今後そのすべてがGEの「Predix」プラットフォーム上の一部となる。

 同社とGEはすでに業務上の強固な関係を築いており、過去2年間にもGEの事業全体で約5,000万ドルに相当する生産性向上をもたらすプロジェクトで連携してきた。

 GEデジタルの最高責任者ビル・ルー氏は「今回の買収は、Predixプラットフォームに全ての技術を集積し、インダストリアル・インターネットのビジョンを推し進めようという継続的な努力の結実」と話す。

 サービスマックス社の最高責任者デイビッド・ヤーノルド氏は「新たな市場へと拡大しつつ、顧客企業の生産性と効率を最大限に高められるよう、引き続き最高のツールを届ける」と抱負を語った。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
GEは打つ手が的確。工場内で閉じがちなドイツや日本の「インダストリー4.0」を横目に業務系へのアプローチが着実に進んでいる。

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