「政治や物事は技術やサイエンスベースで判断される時代だ」

経済同友会が打ちした「Japan2・0」とは。小林代表幹事に聞く

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「似通った経済人が心地よく議論するのはもう許されない」と小林氏
 経済同友会は、創立70周年を迎えたのを機に、将来ビジョンを取りまとめた。戦後100年にあたる2045年を見据え、社会保障や財政健全化、環境エネルギーなど6分野について日本のあるべき姿を示したもので、今後の提言活動の前提となる。当初は2045年を起点にバックキャスティングの手法で税や社会保障について具体的数値を盛り込む予定だったが、議論がまとまらず、まずは目指す社会像を示すにとどめた。

 小林喜光代表幹事が20日までに日刊工業新聞などとのインタビューに応じた。今後の活動方針について経営者の意識改革を訴え続けるとともに若い世代や国内外の多様な関係者と積極交流。「行動する同友会」として存在感を発揮したい意向を示した。

 「Japan2・0 最適化社会に向けて」と題するビジョンでは、国内総生産(GDP)の成長が豊かさの実感に結びついていない現状や、グローバル化の流れが一転して分散の危機にある世界情勢を踏まえ、従来とは異なる評価軸で経済社会を捉える意義を強調している。

 小林代表幹事は、世界は「イデオロギーによる対立を超越し、政治や物事は技術やサイエンスベースで判断される時代」と指摘。経営者はこうした事実を直視し、「(外的環境や政治に依存する)他力本願でない発想」で企業競争力向上や技術革新に挑むよう求めた。

 また、同質の人材が集う経済団体から脱却する姿勢も示した。「似通った経済人が心地よく議論する時代が続いてきたが、もう許されない」として、世代や立場を超えた多様な人材が自由闊達(かったつ)に議論する「開かれた経済団体」「行動する同友会」を目指すと述べた。

同友会の問いかけで、経営者が自分の頭を整理する


 創立70周年を迎えた経済同友会が、新ビジョン「Japan2・0 最適化社会に向けて」を策定した。現代の経済・社会システムを根本から考え直そうという前向きな姿勢には、学ぶべきものがある。

 新ビジョンでは、第二次大戦後の成功体験を基盤とした現在の社会を「Japan1・0」と定義。より本質を見つめ直し、戦後100年となる2045年に向けて目指すべき社会像としての「Japan2・0」構築に動きだすという。

 具体的には、成熟社会では必ずしも国内総生産(GDP)の成長が豊かさに結びつかないことを指摘。またグローバリズムによる各国の「統合」が進んできた中で、その反作用として英国の欧州連合離脱や米国のトランプ次期大統領に代表される国家利益重視の世論など「分散」の動きが台頭していることに着目した。これらの矛盾を最適化することで、将来の社会の方向性を見つけようとしている。

 壮大な問いかけであり、理論派経営者として知られる小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)が自らの問題意識を同友会の仲間にぶつけたものだ。むろん、簡単に答えの出る問題ばかりではない。場合によっては空理空論に過ぎると批判されることもあろう。

 しかし欧米企業の後を追い、事業規模と利益の拡大を目的にすればよかった過去と異なり、現代の企業経営者は、時には正反対の複数の目標を同時に達成することを求められる。

 その過程で目標を見失い、守旧的な「生き残り」だけを考えるようになってしまう懸念もある。日本企業の一部に、かつてのようなダイナミズムがなくなったことが「失われた20年」の大きな要因ではないか。

 世界の経済や社会の姿が急速に変わりつつある中で、同友会の問いかけは、経営者が自分の頭を整理し、将来の方向性を考えるきっかけとなるものだ。現状に甘んじて変化をやり過ごすのではなく、社会のありようを根本から問い直すことは、企業が生き抜いていく意思に通じる。その意欲に学びたい。

日刊工業新聞2016年11月21日

COMMENT

安東泰志
ニューホライズンキャピタル
会長

同友会に集う方々は、明らかに経団連の方々と違う。従来秩序を守ることは大事かも知れないが、世界の環境変化に敏感に反応し、横並びではなく、個々にチャレンジしていく経営者が育たないと日本の将来は暗い。同友会の更なる発展を祈念したい。

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