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日本の使い捨てカイロが海外で売れる理由

小林製薬グループ、現地で新しい習慣を掘り起こす
日本の使い捨てカイロが海外で売れる理由

小林製薬が米国の店頭で販売するカイロとブース

 小林製薬グループの桐灰化学(大阪市淀川区、中村聖一郎社長、06・6392・0333)は、1915年の創業と同時にカイロ灰の生産を開始。2001年に小林製薬の子会社となり、桐灰化学の技術力と小林製薬のマーケティング力で、使い捨てカイロを日本や世界でトップブランドに成長させてきた。世界の顧客に日本の創造価値を提供し、新しい生活習慣を創る思いで、各国のニーズに合わせたマーケティングや販売戦略を打ち出している。

 カイロはグループの海外売上高の約40%を占め、海外戦略品と位置付けている。日本発のカイロ文化の普及を目指し、現在は小林製薬ブランドで欧米やアジアなど世界十数カ国で販売している。

 カイロの海外販売が一番多い米国には02年に進出。痛みが気になる腰などを温める用途として発売した。また同国では主にスポーツ観戦やアウトドアで使用されていたカイロを日常の防寒具として使用する新しい生活習慣をつくった。合わせてカイロメーカーを相次ぎ買収して販売網を広げ、米国の防寒用カイロ市場でシェア70%を獲得した。

 03年に進出した中国では当時、使い捨てカイロはほとんど普及していなかったが、寒冷地が多く、手軽に暖をとりたいニーズがあると判断した。

 当初は認知度が低く高級輸入品として扱われ、クリスマスツリーにカイロを掲げて販売していた。テレビCMや店頭の企画ブースによる販促キャンペーンを展開。また分かりやすい「暖宝宝(ヌアンバオバオ)」というネーミングや中国の人々が好む高級感のあるパッケージの採用で、上海の暖宝宝の認知度は90%(同社調べ)までに達し、“温かさを携帯”する新習慣の定着化に成功した。

 小林製薬の小林章浩社長は「暖宝宝は順調に伸び、中国内でポピュラーになりつつあるが、まだ潜在需要はある」と内陸部などへの普及拡大を目指す。

(中国では当初、認知度がほとんどなかった)

暖かい地域にも需要あり


 一方、台湾やタイ、シンガポール、UAEなど、カイロが一見不要に思われる暖かい地域にも進出した。こうした地域では暖房器具のない住宅も多く、気温が下がった時、すぐに暖がとれる便利さから、カイロの需要があることを実証した。

 日本など各国でカイロの新しい生活習慣を提案してきた小林製薬と桐灰化学は、さらにカイロの新技術を追求し「低体温の研究など“温かさの進化”に挑戦する」(中村社長)という。

 防寒用カイロにとどまらない新しい温熱技術開発を目指し、低体温からくる病気の原因解明や温熱療法で、大学や医師らと共同研究に着手。その成果である、血流改善の一般医療機器「アンメルツ温熱」などを9月に発売した。

 同社は暖冬などによる売り上げの変動を考慮、一般医療機器としてのカイロ関連製品で国内外の新たな需要を喚起する考えだ。
(文=大阪・香西貴之)
日刊工業新聞2016年11月18日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ここまで日本製が普及しているとは正直知らなかった。人の生活にサイクルに入った時、日本メーカーの品質の高さは圧倒的な強みになる。

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