富士重、工業高卒者の採用本格化。整備士不足の解消狙う
全国の整備学校の生徒数が減少。販売に直結する重要課題に
富士重工業は全国販売店の自動車整備士の新卒採用について、工業高校からの採用を本格的に始める。全国的に整備士のなり手が減少傾向にある中、専門学校だけでなく、工業高校に採用対象を広げて人材を確保する。富士重は自動車販売台数が堅調に推移しており顧客満足度を高めるために車購入後のアフターサービスを強化している。若手人材確保と技能教育を徹底し、サービスの質向上につなげる。
東京スバル(東京都渋谷区)など一部の販売店が工業高校を対象にした新卒採用を始めており、富士重は他の販売店にも同様の取り組みを始めてもらうように促す。
工業高校の中には自動車を専門に学ぶ自動車学科を設置する学校もあり、富士重が主催する整備技術を競う技能コンクールや関連イベントに来てもらう機会を積極的につくり、採用につなげる。
富士重はトヨタ自動車や日産自動車のように自社で自動車整備学校を持たないため、各販売店は全国にある外部の自動車整備学校から整備士を採用してきた。
ただ、近年は全国的に整備学校の生徒数が減少傾向にある。新規顧客の増加で、車の定期点検や修理といったアフターサービスの重要性が高まる中、いかに新卒人材を安定的に確保し、育てていくかが課題だった。
富士重は整備士を対象にした教育制度を設定し、若手の育成を強化している。販売店各社も同様の制度を用意。整備士の技能はもちろん、接客担当者を含めたサービスの向上に向けた若手の育成に力を入れている。
自動車整備士の不足が深刻化している。少子化や”車離れ“で、整備士を目指す若者が激減する一方で、保有台数は高止まりし車検ニーズは増える。約5割の整備事業所で整備士が不足しており、自動車メーカー系列の販売店も頭を悩ます。アフターサービスの巧拙がブランドにも影響を及ぼすだけにメーカーにとって死活問題だ。日産自動車の整備士の育成や確保に向けた取り組みを追った。
「たとえ不具合が起きても一発で直すとお客さんは許してくれる。でも2回目以降はそうはいかない。他のメーカーに流れてしまう」。日産が運営する日産京都自動車大学校(京都府久御山町)の全校生徒を前に、中村公泰副社長はこう話しかけた。卒業生の8割が日産系の販売会社に整備士として就職する。顧客とじかに接することになる整備士の卵たちに、サービス品質の重要性を説いた。
品質を担当する中村副社長は最近全国にある日産系の整備士学校を巡回している。「学生時代から、日産の一員であって質の高い仕事こそがサービスの品質につながる。そういう自覚を持ってほしい」。そんな思いから現場を訪問し生徒と直接対話を心がけている。
整備士の定着率の改善も狙いにある。今でこそ自動車の電動化が進んで仕事の仕方は変わりつつあるが、整備士は3K(汚い、きつい、危険)とのイメージはぬぐえない。実際、日産系列販売店の整備士の退職率も低くなく、しかも悪化傾向にあるという。特に勤続10年未満の退職者が10%と高い。中村副社長が直接生徒らに整備業務の重要性を説くのはこうした背景がある。
(日産京都自動車学校を視察する中村副社長=右)
副社長の叱咤(しった)激励を待つだけではなく、学校側も教育プログラムに工夫を凝らす。日産社内の資格制度を取り入れ、実際に整備で使う日産車向けの故障診断機器を活用した授業もしている。就職後に日産の一員として即戦力にするためだ。整備士業界で人材の取り合いが常態化する中で、担い手を囲い込む側面がある。
車好きでないと整備士は長く務まりにくい。「特に車は好きではないが資格が取れるからという動機で入学する人が最近増えている」(日産・自動車大学校の今西朗夫学長)のも実態だ。耐久レースに参戦するプログラムを用意して、レースを通してまずは車を好きになってもらうというアプローチもとっている。
中村副社長によれば、車の技術的なことは営業スタッフではなく、整備士から直接説明を受けると顧客満足度は格段に上がるという。整備士不足が進む中で、アフターサービスを支える整備士の確保と育成はメーカーの競争力を左右する重要な課題となっている。
東京スバル(東京都渋谷区)など一部の販売店が工業高校を対象にした新卒採用を始めており、富士重は他の販売店にも同様の取り組みを始めてもらうように促す。
工業高校の中には自動車を専門に学ぶ自動車学科を設置する学校もあり、富士重が主催する整備技術を競う技能コンクールや関連イベントに来てもらう機会を積極的につくり、採用につなげる。
富士重はトヨタ自動車や日産自動車のように自社で自動車整備学校を持たないため、各販売店は全国にある外部の自動車整備学校から整備士を採用してきた。
ただ、近年は全国的に整備学校の生徒数が減少傾向にある。新規顧客の増加で、車の定期点検や修理といったアフターサービスの重要性が高まる中、いかに新卒人材を安定的に確保し、育てていくかが課題だった。
富士重は整備士を対象にした教育制度を設定し、若手の育成を強化している。販売店各社も同様の制度を用意。整備士の技能はもちろん、接客担当者を含めたサービスの向上に向けた若手の育成に力を入れている。
日刊工業新聞2016年11月16日
日産はどう対応しているのか
自動車整備士の不足が深刻化している。少子化や”車離れ“で、整備士を目指す若者が激減する一方で、保有台数は高止まりし車検ニーズは増える。約5割の整備事業所で整備士が不足しており、自動車メーカー系列の販売店も頭を悩ます。アフターサービスの巧拙がブランドにも影響を及ぼすだけにメーカーにとって死活問題だ。日産自動車の整備士の育成や確保に向けた取り組みを追った。
整備士の苦悩
「たとえ不具合が起きても一発で直すとお客さんは許してくれる。でも2回目以降はそうはいかない。他のメーカーに流れてしまう」。日産が運営する日産京都自動車大学校(京都府久御山町)の全校生徒を前に、中村公泰副社長はこう話しかけた。卒業生の8割が日産系の販売会社に整備士として就職する。顧客とじかに接することになる整備士の卵たちに、サービス品質の重要性を説いた。
品質を担当する中村副社長は最近全国にある日産系の整備士学校を巡回している。「学生時代から、日産の一員であって質の高い仕事こそがサービスの品質につながる。そういう自覚を持ってほしい」。そんな思いから現場を訪問し生徒と直接対話を心がけている。
整備士の定着率の改善も狙いにある。今でこそ自動車の電動化が進んで仕事の仕方は変わりつつあるが、整備士は3K(汚い、きつい、危険)とのイメージはぬぐえない。実際、日産系列販売店の整備士の退職率も低くなく、しかも悪化傾向にあるという。特に勤続10年未満の退職者が10%と高い。中村副社長が直接生徒らに整備業務の重要性を説くのはこうした背景がある。
(日産京都自動車学校を視察する中村副社長=右)
指導方法を工夫、そして車を好きに
副社長の叱咤(しった)激励を待つだけではなく、学校側も教育プログラムに工夫を凝らす。日産社内の資格制度を取り入れ、実際に整備で使う日産車向けの故障診断機器を活用した授業もしている。就職後に日産の一員として即戦力にするためだ。整備士業界で人材の取り合いが常態化する中で、担い手を囲い込む側面がある。
車好きでないと整備士は長く務まりにくい。「特に車は好きではないが資格が取れるからという動機で入学する人が最近増えている」(日産・自動車大学校の今西朗夫学長)のも実態だ。耐久レースに参戦するプログラムを用意して、レースを通してまずは車を好きになってもらうというアプローチもとっている。
中村副社長によれば、車の技術的なことは営業スタッフではなく、整備士から直接説明を受けると顧客満足度は格段に上がるという。整備士不足が進む中で、アフターサービスを支える整備士の確保と育成はメーカーの競争力を左右する重要な課題となっている。
日刊工業新聞2015年12月18日
日刊工業新聞2016年11月16日