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後発薬メーカー、普及進まず戦略転換?成長求め米国へ

各社、業績を下方修正。「従来の政府の施策に頼る設備投資ではいけない」
 ジェネリック医薬品(後発薬)大手3社は、後発薬への切り替えが想定より伸び悩み、2017年3月期連結決算業績予想を下方修正した。今の後発薬使用促進策では政府が掲げる20年度までの数量シェア80%の目標達成は困難となり、薬価の一層の引き下げも見込まれる。これまで右肩上がりで成長を続けてきた各社の戦略も転換期を迎えている。

 後発薬各社は16年度に販売数量で20―25%の伸びを期待し年度計画を立てたが、実際は予想を大幅に下回り、この差が業績に如実に表れた。

 「ここまで大幅な業績見直しは過去にない」と、東和薬品の吉田逸郎社長は16年度業績予想の下方修正を説明する。各社とも4月の薬価改定の影響を受けたが、特に東和薬は他社に比べ自社製品の引き下げ幅が大きかった。

 日医工も10年度以降に発売する後発薬が軒並み20%を超える改定の影響を受けた。一方、沢井製薬はコスト管理によって営業利益の下方修正を小幅にとどめた。


「達成を諦めたり、取り組みに消極的な薬局もある」


 後発薬を利用促進するはずの診療報酬改定の効果は、インパクトが少なく限定的だった見方が強い。売り上げの大半が保険薬局の沢井薬は「後発薬に置き換えるインセンティブのハードルが高く、達成を諦めるところや取り組みに消極的な薬局もある」(澤井光郎社長)と分析する。

 後発薬の成長鈍化は今後の生産計画にも影響を及ぼしている。東和薬は16年度から2カ年の設備投資計画を168億円減額の468億円に修正した。

 山形工場(山形県上山市)の新棟2棟のうち1棟の建設を先送り、18年度までに年間140億錠としていた生産計画を110億錠に引き下げた。「従来の政府の施策に頼る設備投資ではいけない」(吉田社長)と、今後のビジネスモデルを模索する。

(決算発表で説明する東和薬品の吉田逸郎社長)

 沢井薬は16年度販売計画を114億錠から104億錠に見直した。ただ「必ず80%時代は来る」(澤井社長)と、現時点では生産計画は変更しない方針。

 日本の後発薬市場で利益を上げ続けることが難しくなる中、後発薬大手各社は自社の成長のため相次ぎ米国に進出する。日医工は米国の後発薬企業を買収し、同国の販売網や開発品を入手。自社で開発を進めるバイオ後続品の拡大にもつなげる。沢井薬は米国で2品目の後発薬を申請した。東和薬も米国で18年度中に後発薬の発売を目指す。
(文=大阪・香西貴之)
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
長期的にみれば医療費抑制に貢献できる後発薬の成長期待は高い。また米国では薬価釣り上げに批判的だったヒラリー氏ではなくトランプ氏が大統領になることで、製薬会社への風当たりが弱まるとの期待もある。

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